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第344話 やるならとことん。(ざまあラッシュ)

 4000000hit突破!

 みなさん、ありがとうございます


「さあて、まずは最初の商業ギルドとの軽い肩慣らしが終わったところで…」


 マオンさんが話を切り出し始めた。


「みんなもお腹が空いてきたろ?」


 観衆のあちこちから『腹減った』だの『昨日から何も食べないで今日に備えて来たんだ!』などと声がかかった。


「あれあれ、みんなお待ちかねだよ。どうするねゲンタ?」


 マオンさんがこちらに話の主導権(イニシアチブ)を渡してきた。


「では早速!皆さん、後ろをご覧下さい!」


 観客たちが一斉に後ろを振り向いた。


「あちこちに旗竿が立っているでしょう?あれはそれぞれ屋台で物を買う事が出来る場所となっています。そしてこの広場のあちこちには皆さまおなじみの焼酎の自動販売機が設置されています。お酒が飲みたい方はそこで買って下さいね」


 分かったァ!そんな声が聞こえてくる。


「さて、まずは最初に発表する催し物は二つ!食べ物だよォ!もちろんアレだあ!」


 マオンさんが声を張り上げる。


「これは日没までずっとやってるから皆さん、心ゆくまで楽しんでね。では、親分!長老さん!お願いします!」


 するとゴロナーゴさんは旗竿をスルスルと登っていき、長老さんはその鉄で出来た剛弓(ごうきゅう)に矢をつがえた。


「今です!」


 長老さんの準備が出来た事を確認すると僕は声を張り上げた。ゴロナーゴさんは既に旗竿のてっぺんに辿りついていて幟旗(のぼりばた)(ゆわ)えている紐を引き(ほど)く。同時に長老さんがもう一本の旗竿に矢を放って幟旗を結えていた紐を見事に射抜くと二つの旗からバサッ、バサッと縦長の布が落ちてくる。そこには『かれー』、そして『たいやき』と大書された布が翻った。


「さあ、開幕です!!みなさん、お楽しみ下さい!」


 観客たちは先を争って駆け出した!それを見届けると僕はさらに呼びかける。


「親分さん、長老さん、お疲れ様でした。それでは、かねてからの打ち合わせ通り事前申し込みをされたみなさん、広場中央よりのスペースへどうぞ!」


「な、何を始めるつもりなんだ…」


 商人ギルドの連中が不安そうに呟くのをよそに、ぞろぞろとゴロナーゴさんや長老さんなど各獣人族のリーダー的存在を先頭にその種族のみなさんが集まってくる。そこに僕は声をかけた。


「みなさん、本日はお集まりいただきありがとうございます。当初は猫獣人族(キャトレ)犬獣人族(ドギーマ)のみなさんの依頼でしたが、今年はその二つの種族が和解し手を取り合って百年目!もちろん、他の種族のみなさんも互いに協力しこの町を築いて来られたのだと思います」


 すう〜っ。ここで僕は大きく息を吸い込み、集まった人々を見回した。見知った顔もいくつかあった。


「そこで今回は皆さんが一致団結して百年目という節目でもあり、広く祝おうと他の種族の皆様方にも参加を呼びかけたところ沢山の賛同をいただき感謝の念に絶えません。そこで僕は一つの鍋に皆さんの好みの具が入っているであろう鍋料理をご用意いたしました!おでんというお料理です、それに合う酒もふんだんにあります!さあどうぞ料理と酒を楽しみながらご歓談下さい!」


 その言葉と同時に光精霊と闇精霊の力によって見えていなかった鍋や酒樽が歓談スペースのあちこちに現れた。


「ひょう〜!やってくれるぜ、坊や!なァ、犬獣人族(ドギーマ)の?俺たちの百年目の固めの(さかずき)と行こうじゃねえか!」


 ゴロナーゴさんが長老さんに呼びかける声を聞いて僕は安心してゴクキョウさんに向き直った。


「お待たせいたしました、ゴクキョウさん」


「やれやれ、かなわんな。ワイら上手いことダシにされてもうた」


「申し訳ありません、まさかここまで上手くいくとは…」


 僕は頭をかいた。


「かまへんで。それよりゲンタはん、後ろのどないすんねや?」


 振り返るとハンガスを初めとした商業ギルドの連中が居心地悪そうにたたずんでいる。


「そうですね、その辺にでもいてもらいましょうか。ヒマそうですし構いませんよね?」


 僕はハンガスたちに向かって声をかけた。


「この火除地(ひよけち)の広場の中央あたりがあなたたちの出店があるようですが…、どうやらそちらは調子が悪いようですね」


 視線を左右に…、商業ギルドの連中を見回して僕は続けた。


「 こちらと違って、お客さん全くいませんよ」


 おそらく人生史上もっとも悪い笑顔で僕は商人たちに声をかけていた。



「卵…、卵が優しい味で煮込まれていて…」


 蛇獣人族(メタ・ギア)の人がおでんの卵に舌鼓を打っている。ヴァシュヌ神殿の巫女さんであるヴァティさんに贈ったおでん、その中にあった具の卵が彼らの心を掴み参加を決意してくれたのだろう。


「な、軟骨がウメーんだ!軟骨がよォォ!!」

「お、俺はこの四角くて白いフワフワのコレがたまらねえ!」


 こちらは犬獣人族(ドギーマ)猫獣人族(キャトレ)の人だ。誰もが喜んでくれている。そんな声を耳にしながら僕はゴクキョウさんと商談を開始した。


「こ、こら見事な箱や!それに中身も…」


 テーブルに紅茶と焼菓子(クッキー)を出し、楽しみながら商談を始めた。激安(ディスカウント)を売りにする店で発見した底面積はA4くらい、厚さは10センチ弱の缶に入ったクッキーのアソート…それをつまみながら商談をしていた。


「甘く味も()え焼菓子や。それに色々な味もあって…。どうやろ、バラカイはん?」

「うむ、これは砕いた堅果(ナッツ)…そしてこれはジャムと共に焼いたものか…ぬうう、こんな逸品があるとは…」

「バラカイはんがそこまで唸るとは…。それならこのくらいの値段でどうやろか?」


 ゴクキョウさんはザンユウさんの反応を見て飲食物の値段を決めているようだ。仕入れ値298円の缶入りクッキーに驚きの値段がつく。


「この値段で…」


「アカンやろか?この金属製の箱も含めての値をつけさせてもらったんやがな。この湖と森を背景に女性(おなご)が描かれたこの箱、味も良えし贈答用にピッタリや。この値でワイに売って欲しいんや」


「分かりました。ではこの値段で…」


「焼菓子一箱あたり銀貨八枚(ギンパチ)(日本円で八万円相当)と…。47箱ありますから金額37(キンサンナナ)銀貨六枚(ギンロク)になりますね(日本円で376万円相当)」


 ゴクキョウさんにザンユウさんがいるなら僕には補佐としてシルフィさんがついていてくれた。代わりにマオンさんがたい焼きの屋台に回ってくれている。


「では、次はこれ。砂糖です」


「なっ、なんや!?これが砂糖っちゅうんかい!しかもこんな真っ白な…」


「そうですね、白い砂糖です」


「し、白い砂糖ッ!?し、白…。ま、まさか、あいつが!?あいつが白い塩を売り出した奴だというのか!?」


 ブド・ライアーが喚いているが、構わず僕は次々と品物を出しゴクキョウさんも手早く値段を付けていく。砂糖は1キロで十六万円、胡椒(こしょう)などスパイス類は一瓶で十二万円万円。各種ジャムは小瓶で七万円、この世界では錬金術でしか作れないと言われるチョコレートは一枚十五万円である。その他にも用意した物に驚きの高額が付けられていく…。


「最後にこういうのはいかがでしょう?」


「こ、この黒光りするモンは…、ブラァタ!?ブ、ブラァタやないか!!」


 連峰(れんぽう)の白い悪魔と言われるミーンの町のはるか北に見える雪で覆われた山脈からやってくると言われる伝染病を媒介するというモンスターのブラァタ、見た目は巨大ゴキブリである。


 その脅威はブラァタの大行進とも言われ、山を下りてきたブラァタの通り道になってしまった町や村はブラァタが運んで来た病原菌の感染により人類は言うに及ばず家畜など生きとし生けるもの全てが死に絶えると言われる程だ。その為、ブラァタが大量にやってくる様はまさに死を運ぶ死神の列。それなら町に来る前にブラァタを倒してしまえば良いが話はそう簡単てはない。


 ブラァタは夜に紛れてやってくる、その為になかなか早期の発見が難しい。山脈を出る時は白く、成長するにしたがって赤、そして茶色、最後に黒色になる。黒色のブラァタは完全体とも言われ甲殻が硬質化し物理攻撃がなかなか通らない。動きも素早い為に魔法を命中させるのも難しく退治するのがとても困難なモンスターだ。


 しかしその外見が僕には巨大化したゴキブリにしか見えなかったので、ブラァタがねぐらにしていた洞窟にバル◯ンを大量投入し一網打尽、大量のブラァタの素材を得る事が出来たのだった。


「こ、これは…一体あたり金貨十九枚(キンイチキュウ)(日本円で190万円相当)でどうやろ?少し相場より安いかも知れへんけど、その代わり十五匹分ほどまとめて買わせてもらうよってに…」


「となると、ブラァタは合計で金貨二百八十五枚(キンニィハチゴ)ですね」


 サラサラと買取金額を紙に書き込んでいくシルフィさん。眼鏡をかけたその美貌はまさにデキる女性秘書(オンナ)そのもの。


「それからソレや!」


 ゴクキョウさんがシルフィさんの手元を指差した。


「えっ?」


「その白い紙や!い、いや白いだけやない。横線引いてあって…こら字ィが曲がらんと真っ直ぐ書ける。コレも売ってくれへんやろか?」


 ゴクキョウさんはシルフィさんが手際良く記入していくルーズリーフに目を付けたようだ。大学構内の生協で二百枚入り180円ほどだったはずだ。何枚かシルフィさんが記入の為に使っているから少し減っているけど…。


「差し上げますよ、ゴクキョウさん」


「な、なんやてッ?」

「「「ええっ!!?」」」


 僕の返答にゴクキョウさんは…、そして商業ギルドの連中が驚きの声を上げた。


「この紙…、記入にまだ少し使うでしょうから残るのは百九十枚ほどになると思いますが…。こちら全てゴクキョウさんに差し上げます。これだけお買い上げいただくのですから…お得意様は大切にしないといけません」


「む、むう…」


 すでに売り上げは金貨千枚(キンセン)(日本円で一億円相当)をゆうに超えている。


「その代わりと言ってはなんですが…、今後とも末長いお付き合いをお願いいたします」


勿論(もちろん)やっ!こっちからお願いしたいくらいや!」


 ガッチリと僕らは握手を交わした。


「では難しい商談(はなし)はこれで終わりですね。ここから先は派手に行きますよ。ではお二人ともこちらへ…」


 そう言って僕はゴクキョウさんとザンユウさんをステージから程良い位置に設置したいわゆる貴賓席に案内した。

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