第314話 それは甘く、そしてほろ苦いもの。その3
「ああっと!?女性側2番、ブレンダさんの前だっ!」
「一寸、待ったァ!」
後ろから待ったの声がかかる。
「「ちょっと待ったコールだ!?」」
僕とマオンさんの声が響く。そこに走り寄る男性、4番ルオーシマンさんだった。
「ああっとォ!?恋のライバル登場だァァ!」
「恋の鞘当て開始だよォ!?みんな好きだろォ?横恋慕」
気遣い出来る美人、ブレンダさんの前に二人の男が屹立する。ちなみに既に他の男性三人は恋に破れこの場を退場している。
「さあ、残る男性陣はこの二人。他の男性三人と同じようにその恋の花を散らすのか?それとも大願成就、命をつなぐ花を咲かすか…今宵最後の決戦だァァ!!」
わああああっ!!
観衆が盛り上がる。イベント最前列、かぶりつきで見物しているフィロスさんは羊皮紙の手帳にメモをとっている。
「では、最初に名乗りを上げた男性陣3番!エングから告白を!」
「…ブ、ブレンダさんッ!きょ、今日はあまり話せなかったですけどッ!よ、良かったら、ぼ、ぼ、ぼ、僕と…け、けけ、結婚を前提にッ!!お願いしますッ!」
そう言ってエングさんは腰を折り、小判型チョコレートを持つ手をブレンダさんに差し出した。
「続いては4番、ルオーシマン!」
「トゥナイトのユーとの話はベリーエキサイティング!これからさらに仲を深める為にウィズミーしようぜ!?プリーズします!」
こちらも何やら怪しい言葉使いでチョコレートを持つ右手を差し出した。
「さあ、どうするブレンダさん!差し出された手をとってそのチョコレートを後で二人で食べるのかッ!?」
「それとも全員討ち死に、ごめんなさいか!?儂はくっついて欲しいところだねえ…」
ごくり…。
広場にいる全員が固唾を飲んで見守る…。
「…ごめんなさい」
「「告白失敗だ…」」
ああ〜…。ため息が洩れる会場。僕はブレンダさんに近付き質問する。
「ごめんなさいでしたね…。ちなみにどういった理由か聞いてみても…?」
「3番のエングさんは…長男だったんで…。4番のルオーシマンさんは…お仕事が命の危険と背中合わせですから…それで…」
「なるほどねえ…。恋愛の先の結婚も視野に入れての決断だったんだねえ…。真剣に考えてくれたんだね、ありがとうよ」
マオンさんが結論付ける。
「いやー、しかしこれでは記念すべき第一回『ゲンタん紅鮒団』のカップル成立が…まさかのゼロ組となってしまいました!」
「残念だねえ。しかし、しょうがない。フラれた男二人、サクッと退場しておくれ!!」
するとエングさんとルオーシマンさんは申し合わせたかのように喋り始める。
「「がっかりチャチャチャ、がっかりチャチャチャ!わぁ〜!!」」
そう言って会場を後にすべく駆け出した。しかし、その時!
「ま、待って下さいっ!!」
とある女性の声が響いた。