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第304話 魔法の使い方。〜広告〜


 七色の酒、そう題して売り出した酒の販売は好評を博した。町の人々はすっかり新しい酒に夢中になっている。折り畳み式の演台を手早く片付けて、僕たちはしばらく売れ行きを見守った。自分たちで普段使いの容器(コップ)に思い思いに好きな酒を買い口にしている。自動販売機の機巧(からくり)問題(トラブル)も無く、僕たちはギルド内に戻った。


 冒険者ギルド内に戻ると各自動販売機の残量計に目をやった。かなりの減りだ、補充しておかないと。注ぎ口に4リットルの焼酎ペットボトルを差し込む、ダボダボと音を立て中身が中のタンク部分に注がれていく。


 今回の酒の販売について量と価格は皆と相談して決めた。今日のところは一杯で白銅貨五枚(シロゴ)、量は酎ハイやサワーに関しては焼酎50ミリリットルと各種飲料150ミリリットルの合計200ミリリットルとした。一方、焼酎ストレートの人は100ミリリットルに決めた。


「ゲンタさんの所で飲んだら、もう他の酒場に行けない」


 エルフの五人がそんな事を言ってくれた、嬉しい限りだ。


「いくら葡萄酒を扱う所だとしてもねえ…」

「そうだよ。私、青林檎(グリーンアップル)にハマっちゃった!ゲンタさん、私の報酬は『しょうちゅう』と『青林檎(グリーンアップル)』が良いなあ…」

「葡萄も捨てがたいわよ、ロヒューメ。あれなら自分の好みの葡萄酒(ワイン)を作れるようなもの。『しょうちゅう』を多く入れれば酒精(アルコール)の強いワイン、少なくすれば果実の風味が強く出たものになるわ」

「でも、これをフィロス姉様が知ったら間違いなくさらに酒量が増えるわね…」


「「「「あ〜、この時期はね…」」」」


 なんだか何かを察したように他の四人が疲れた声を洩らした。


「あの、フィロスさんに何かあったんですか?」


「いえ、大丈夫ですよ。ゲンタさん」


「セフィラさん…」


「どうと言う事はありません。遭遇(あた)らなければ…」


「えっ?何そのフラグみたいなやつ?そして有名なセリフっぽい!」


「そう、遭遇(あた)なければどうという事はないのです」


 なんだろう、絶対に遭遇する未来に改変された気がするんですけど…。



「いや〜、見してもろたでえ!面白い辻売りの方法やな!」


「ゴクキョウさん、こんにちわ!」


「風の精霊たちが噂しとっての。なんか面白そうな事が始まりそう言うてな、せやから急いで見にきたんや!」


 冒険者ギルドに大商人ゴクキョウさんがやってきた。


「そして精霊魔法をあないに(あんな風に)使(つこ)商売(あきない)する言うんは初めて見たで!あんさん、やっぱおもろいなぁ!」


 ゴクキョウさんが言うにはエルフの五人や自動販売機の隠蔽と出現の魔法による演出も目を見張ったが、あれだけの観衆に全て声が聞こえるようにする為にシルフィさんの召喚した風の精霊が僕らの声が届くようにしてくれていた。いわゆる拡声器の役割を果たしてもらったのだけれどそれらにも気付いていた。


「それにマオンはんが着てる衣服(べべ)はエルフの服や!仰山…、いやそないな言葉や足りひんな。数え切れん精霊の加護を感じるで、それでマオンはんがあんなに(たこ)う跳べたんやな」


「ああ、これを着ていると体が軽くなってねえ…」


「それだけやない、いくら呼び込みが上手(うも)うても肝心の品物(しなモン)がアカンかったら台無しや。まずどっしりとした酒があり、様々な味を加えて色んな味になる。七色の酒…、名付けも()え。しかも安いで。これは間違いない、売れ続ける」


 笑みを浮かべてゴクキョウさんが太鼓判を押した。


「ゴクキョウさんにそう言っていただければ心強いです」


「ははは、それでなゲンタはん」

 


「はい、なんでしょうか?」


「今日の商売(あきない)を見させてもろてな、ワイやっぱり思いましたんや」


「どうしたんです?改まって」


「ワイな、よりあんさんが欲しゅうなりましたんや」


 ゴクキョウさんは真面目な顔で話し始めた。

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