第274話 次なる商材(後編)
「ほほう…。これは…、確認させていただきますぞ」
ヒョイさんは白い手袋を着け、僕が取り出した商品を手に取り確認し始めた。
「釦ですな…。しかし…、これは見事な…。この表面側は宝石を加工したものですかな?」
「あ、いえ…。それは硝子を加工したものです」
「なんと!?硝子を…。宝石と見紛うばかりの仕上がりですな。それを…この台座側に固着させて…」
ヒョイさんは片手を顎にやり感心したような声を上げている。雑貨屋さんでは買ってもらえなかった物だがここでは需要があるかも知れない。僕はとりあえず成り行きを見守る事にした。
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僕が取り出した商材、それは洋服のボタンだった。ヒョイさんが手にしているのはシャツの襟や袖にあるような小さいものではなく、大きさが百円玉くらいあるもので表面に宝石のようなカットをされた透明なガラスがあしらわれている。見栄えの良い、飾りボタンといったような感じだろうか。
他にも緑色と薄い青色のガラスをあしらったボタンも用意してある。それはさながらエメラルドとアクアマリンといった感じか、ヒョイさんはそちらも手に取り何やら色々な角度から確認している。
「ゲンタさん、これはどのくらい用意出来ますかな?」
「ええと…それは…」
このボタンは売り切りの物がほとんどだ。五個で198円とか、緑色のは7個で298円とか。おそらく廃盤となったボタンで売り切りセールにしたのだろう。似たようなデザインの物は一個いくらで売られており、五個とか十個まとめ買いすると少し値引きみたいなシステムになっていた。
僕はこのボタンはこれしかない事を伝えた。また、時間はかかるだろうが似たようなボタンなら数も用意が出来る事も。ヒョイさんは今ある三種類あるボタンを全て購入した上で、次の機会にも購入したいと言ってくれた。なんでも自身の服や、大きさや揃う数などによっては歌い手のメルジーナさんや兎獣人族の皆さんが身につけるドレスなどに利用してみたいらしい。
「なるほど…。より衣装の幅を…」
「ええ、より良くなるならば金と努力を惜しまない事は当然ですからね」
ヒョイさんは先程までボタンを検分する引き締まった表情を緩めにこやかに言った。
それは一つの小さなボタン。
しかし使う人や場面が変われば様々な反応があり、大きな大きな取引になる事も経験した。僕はヒョイさんと持って来たボタンの取引額や今後についても商談を始めた。それが丁度終わり、メルジーナさんやミミさんたちを交えての雑談になるまでそう時間はかからなかった。




