第26話 再会!ネコミミ少女とサンドイッチ試食。
第二章開始です。
宜しくお願いします。
冒険者ギルド内でのパンの販売初日、僕たちは見事に持って来た94個のパンを完売させ、四万七千円を儲けた。その後、僕はマオンさんとこれからの事を話し合い、まずは買い物に行く事を決め、少し遅い朝食をとろうという事になったのだが…。
「兄ちゃん…、頼むぜ。この通りだ!これを食えなきゃ俺は死んでも死に切れん!」
僕たちが食べようとした卵サンドとフルーツサンドを見て
ナジナさんが両手を擦り合わせながら俺も食べたいと懇願してきたのだ。
異世界でも人に頼み事をする時は手を擦り合わせるんだ…、万国共通どころか異世界にまで共通するとは…。手の擦り合わせ…、スケールの大きい共通事項だ。
「ゲンタさん、私も食べたいですぅ。その果物のを少し味見をさせてくれたら嬉しいですぅ」
ちょこちょこっと僕の横に来たフェミさんも可愛い声でおねだりをする。見れば口にこそ出していないがマニィさんや
シルフィさんも食べたそうな様子だ。
「な、な。嬢ちゃん達も食べたいだろ?頼むぜ、兄ちゃん。少しで良い、少しで良いんだ!あ、味見をさせてくれえぇぇ!!」
フェミさんをダシにして、サンドイッチを懇願するナジナさん、最早そこには『大剣』の二つ名を持つ凄腕冒険者の威厳はない。おかしいなあ、ナジナさんの第一印象『北◯の拳』に出て来そうな人生に何の悔いも残さないボスキャラっぽいイメージがあったんだが…。
仕方ない、1パックにサンドイッチは二つ入りだから、
その内の一つで手を打つか…。ナジナさんたちにはこれから買い物に同行してもらうんだし…。凄腕の剣士に護衛してもらえると考えたなら安いものかな?
「分かりました。それぞれ一つずつあげますから皆さんで分け合って下さい」
おお…、ナジナさんが思わずといった感じで声を漏らす。受付嬢の三人もやった!みたいな嬉しそうな表情をしている。僕は販売したパンを渡す時に使っていた包み紙を広げ、
自分が食べる分だった二つのサンドイッチを置いた。そのサンドイッチに彼らの視線が一斉に注がれる。誰のものかは分からないが『ゴクリ…』という生唾を飲み込む音がした。
「こ、この『ふるーつさんど』だったか…?い、色鮮やかで甘そうで…、もうここまで甘い香りがしてくるようだぜぇ」
「ホントだな、赤いのとか夕焼けみたいな色したのとかが白い泡みたいなモンに包まれて…」
ナジナさんとマニィさんが印象を語っている。
「ものすごく甘い香りがします。私達エルフは果実の香りには敏感です。十分に熟し甘くなった果実が入っています。この赤い果実…、おそらくこれが『じゃむパン』のジャムに
なる『トチオトメ』…、いや違う。似てはいるけど…」
僕は正直驚いた。フルーツサンドの包装パックには、佐賀県産苺使用と書いてあったから『とちおとめ』とは多分違う品種だ。エルフという種族は植物に関してきっと並々ならぬ感覚があるのだろう。だから香りだけで違うブランドの苺だと気づいたねだろう。
「凄いです…。シルフィさん。この赤いのは確かに苺ですが、ジャムに使っている『とちおとめ』とは違う種類の苺です」
やはり…、といった感じでシルフィさんが僕の説明を聞いている。
「それにしても凄いものだね。オレも相棒も色々な所を旅した事はあるが、いちごと言ったらせいぜい『へびいちご』ぐらいしか聞いた事がない。しかも食べたりするようなものじゃないはずだよ」
食用にするなんて聞いた事がないとウォズマさんが言っている。
「それがあんな『じゃむパン』の中身たる赤い鮮やかなジャムのざいになるなんて…。甘さや美味さを持つ苺があるなんて…。世界というのは広いものだね」
ウォズマさんがいかにも感服した、といった感じで話している。あの苺、実はこの世界どころか異世界のもので…、恐縮です。
「それにしても、兄ちゃん…。人が悪いぜ。こんな美味そうな物をまだ隠し持っていたなんて…。でも、どうしてコレを売らなかったんだ?俺もそうだが、きっとあのエルフの五人組だって言い値で買っちまうぜ」
い、言えない。単価が高くてあまり仕入れられなかったなんて…。
「い、いやあ…、まだこれは数が用意出来ない物で…」
「確かに…。保存がきくジャムはともかくとして、こんな新鮮な果実を用意するだけでも果樹園持ちの貴族の屋敷でもなければ不可能でしょう」
「うーむ。兄ちゃんほどの腕利きでもそうは手に入らないって事か…。いや、兄ちゃんだからこそ少数でも用意できたてあ言うべきか…」
シルフィさんが生で食せる果物がいかに希少性があるかを語り、その言葉を受けナジナさんが感慨深そうに顎に手をやっている。ナジナさんはそうした真面目な顔をしている時には急に威厳と迫力が出てくる。しかし食べ物が絡むとそれが一瞬でなくなる、色々とナジナさんは雰囲気が忙しい。
「すいませ〜ん。納品お願いしま〜す」
その時、受付カウンターの方から声がかかった。受付カウンターに誰もいなかったからそうしたのだろう。みんなが振り返ると、大きな背負い籠を背負った人がいた。
しかもそれは見覚えがある少女だった。
□
「ミアリスさん!」
「えっ?ゲンタさんに…、マオンさん」
こちらを見た籠を背負った彼女が小さな驚きの表情を見せる。僕は丸太の椅子から立ち上がり、彼女の元に向かう。
「ミアリスさんに教えてもらって、冒険者ギルドでパンを売り始める事が出来ました。おかげさまで完売です。ありがとうございました」
「それは良かったです!あのパンは今まで食べた事がないくらい甘くて美味しかったですから、きっと売れると思いました」
彼女を僕たちが座っていたテーブルに招く。そして彼女と別れた後の事を話した。冒険者ギルドを訪れ、試食をしてもらったり、ナジナさん達と出会った事。今朝の販売は大成功、冒険者登録もして晴れて冒険者ギルドの一員となった事、そして今のこの状況を…。
「それじゃ嬢ちゃんがいなかったら俺達は兄ちゃんのパンを食う事が出来なかったんだな」
「はい、僕達が商業ギルドを叩き出された所を助けてもらい、冒険者ギルドには納品する依頼もあるからその方法を使ってパンを売る事がてきないかと教えてくれたんです」
「なら嬢ちゃんは俺達の大恩人だぜ。こんな美味えパン、奇跡でも起きなきゃあ食えるモンじゃねえ」
「じゃあ、ミアリスさんも是非試食を!新しいパンなんです!ウォズマさん、また切り分けて頂いて良いですか?」
「ああ、任せてくれ。ゲンタ君」
とは言ったものの…、三角のを一個を六人で分け合って
もらうのは小さ過ぎるなあ…。一個半にするか…。
僕はもう一つ残っていたサンドイッチを出した、それを
半分に切ってもらった。さらにそれを半分に。
一つの四分の一、これを試食の一人分という事にした。
ウォズマさんのナイフ捌きはとても鮮やかで、柔らかい物を切るのは難しいと聞いた事があるけど綺麗に切り分けていた。僕は先程あんパンを購入してもらったお客さんに無料でサービスしていた緑茶を紙コップに注いでいく。
「ありゃ、これじゃゲンタの分が無くなっちまうね。儂のもらった分をお食べよ」
僕の手元に残った1/2になってしまったサンドイッチ。お言葉に甘え、僕はマオンさんと分け合って食べる事にした。
「じゃあ皆さん、試食といきましょう。まずはタマゴサンドを半分だけ食べてみてください。残り半分は僕の好きな食べ方を試して欲しいんです」
僕は皆にそう言って試食会を、僕とマオンさんにとっては、朝食を開始したのだった。
評価、ブクマ、コメント、いつもありがとうございます。
書いていていつも励みになります。
ありがとうございます。




