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第258話 仕事と私とどっちが…?


 広場でのエルフの皆さんを迎えての屋台と、ジャムなどの販売会は大成功に終わった。四時間ちょっとの営業で五十万円ほどの利益が上がった。


 早速日本に戻り行動を開始する。時間との勝負の為、カグヤはお留守番。原付フル稼働のピストン輸送ならぬピストン買い出しだ。スーパーに行きメモを頼りに仕入れを開始する。まずはリンゴを買えるだけ、軽い乾物コーナーでは干し椎茸をとにかく買っていく。このスーパーにはどんこ椎茸はなかったが、ここはスピード優先だ。普通の干し椎茸だが数を揃えたい。忘れないうちに梅酒も買う。


 リンゴは愛車スーバーカプの荷台の箱に、ハンドルには軽い干し椎茸を詰めたビニール袋をハンドルにかけた。リュックは背負わずに胸側に、梅酒はその前回しにしたリュックに入れた。原付でアパートに戻る。部屋に入り、まずは干し椎茸を玄関先に置いた。続いて胸のリュックから梅酒のボトルを床にどんどん置いていく。部屋で待っていたカグヤがそれらを部屋の奥に持って行った。


 僕は続いて原付の荷台からリンゴを部屋に持っていく、カグヤが部屋の中に置いていってくれるから靴を脱いで部屋の中に持ち込む手間がいらない。カグヤに部屋を任せ、ドアに鍵をかけて外に。次はグレープフルーツとバナナだ。


 そんな買い出しを五回程繰り返した。もうここまで来ると半額セールとかはどうでも良くなる、定価でも構わずリュックいっぱいにパンを買って自宅に戻った。


 クローゼットから異世界に戻りマオンさん宅に停車させている荷車(リヤカー)にリンゴや梅酒など重いものから積んでいく。やれる事はやれる時にやっていくのが大事、下手に後回しにしてやる事が増えたりしたらどうにもならない。


 そしてその果物や椎茸、梅酒を満載した荷車(リヤカー)を引いて冒険者ギルドへ向かう。護衛としてゴントンさんがついて来てくれた。ギルドの裏口から入り台車を置かせてもらう。立ち会ったシルフィさんが目を丸くして驚いていた。



 とりあえずギルドに果物を運び終わり自宅に戻るとカグヤの機嫌が悪い。どうやら僕が買い出しと運搬にかまけて彼女を構わなかった事が原因らしい。


 しかし、僕としても明け方から今の今まで働いたり走り回っていたので体力は限界。部屋に戻ると気が抜けてしまったのかフローリングの床に座り込む。隣に座ったカグヤは僕に強い視線を向けていたが、しばらくしてその視線を緩めると膝歩きして僕の前に回り込んだ。


「え…カグヤ?」


「………」


 ばふっ!僕の胸にカグヤは無言のまま飛び込んできた。そしてその手には毛布が握られていて、僕に手渡してきた。


 かけろって事か…?僕はカグヤの肩や背中を包むようにかけた。僕たちは一枚の毛布に(くる)まるように密着する。カグヤは僕の胸に顔を埋める。


「少しこうしていて…。軽く寝よ?」


 カグヤがそんな提案をしてくる。眠気と疲れを感じていた僕はその提案に乗った。


「うん…」


 僕はその言葉に甘え瞳を閉じた。



 目を覚ますと時計は午後八時半を回ったところだった。


 目を閉じた時と同じ体勢でカグヤは眠っていた。


「パンは買ってあるけど、まだ足りないな…。今日訪ねてきたエルフ族の人の中には冒険者もいるみたいだし、早朝のパン販売の列に加わる人もいるだろうし…。そうなると多めに買っておいた方が良いよな…」


 カグヤを起こそうとするが深く眠りについているのか起きる気配はない。


 そっとカグヤの体を離して壁によりかからせると、僕は手早く布団を敷いたてそこにカグヤを寝かせた。布団を掛けると僕は急いで外出の支度(したく)をする。


「すぐに戻るから、良い子で待っててね」


 急いで原付に乗ってスーパーに向かった。しかし…。


「やっぱり、値引きが出る状況に無いんだなあ…」


 スーパーでは値引きシールが貼られたパンは無かった。しかし躊躇ってはいられない。僕はカートに乗せた買い物カゴにどんどんパンを入れていく。


 しかし、捨てる神あれば拾う神あり。


「あっ…。これが売れ残って値引きだなんて…。これもコロナ禍の影響なのかな?」


 思わぬものが半額で大量に残っていた。間違いない、きっとこれは売れる!僕は全て買い物カゴに入れてレジに向かったのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] カグヤ順調に気持ち悪くなってきましたね
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