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第156話 打ち合わせ

 チンピラたちの襲撃を退(しりぞ)け、たい焼きの販売を終了した僕たちは屋台の後ろにブルーシートを敷き円座(ぐる』になって作戦会議中だ。

 ちなみに『示し合わせて悪だくみする事、悪仲間』みたいな意味のある『ぐるになる』の語源も囲炉裏(いろり)みたいなところをぐるっと囲んで座り、悪い奴らが計画を話し合ったりした事が語源らしい。


「…という訳で、僕はあいつらが襲ってきたのは誰かに指示されだからだと思うんです」


 僕はチンピラの一人が『前金をもらっている』と口を滑らせた事を根拠に、ただの偶然ではないと感じた事を話した。


「だろうね、だいたいここは冒険者ギルドの出店だ。そこに脅しをかけてくるなんてね」

「羽振りの良い出店があるから、ひと暴れしてこい。ついでに売り上げ金は好きにしろとでも言ったんだろうな」


 ウォズマさん、ナジナさんが率直な感想を述べる。


「って事は…アイツらか?」


 マニィさんが広場の外れに陣取る二つの出店…、ハンガスとブド・ライアーの出店の方に目を向ける。人っ子一人いない開店休業状態、出店を開いただけ手間がかかり損をしているだろう。


「たぶん…ね。もしかしたら僕らに客を取られた他の店かも知れないけど」


「だが、そういうのには金が必要()る。それに伝手(つて)もな。ああいう半端者(はんぱもの)(つる)ンでるなら、あの粉屋のハンガスじゃねェか?」


 ゴロナーゴさんが推論する。


「いずれにせよ…敵じゃの」

「んだ。喧嘩相手としても商売敵(しょうばいがたき)としてもだべ」


 ドワーフの兄弟が続いた。


「それでゲンタさん、これからどうするんですかぁ?今夜は焼きそばですよねえ?でも、さっきの人たちがまた来るかも知れませんよぉ?」


 フェミさんの言葉に僕は確かにと応じた。だが、ふわり…とカグヤが僕の前に浮かび、いつものように僕の肩に乗る。そのまま『つう…』と僕の頬を撫でる。


「カグヤは大丈夫…と言っているみたいなんですけど…」


 そう言うとカグヤはまたふわり…と僕の目の前で浮遊し『にこ…』と静かに微笑む。そして僕の胸元、シャツのポケットに入り姿を消した。


「でも、用心はした方が良いでしょうね。また別のならず者を寄越(よこ)してくるかも知れません」


 僕の左隣に座ったシルフィさんが助言してくれる。ちなみに右横にはアリスちゃんが『どうしても!』と言って陣取っている。


「だとすると明日はどうする兄ちゃん。用心に越した事は無えと思うが…」

「行き帰りはワシらがおるが…」


 ナジナさんの提案に、ガントンさんが応じた。

 でも、移動は最小限にした方が良いかも知れない。そうなると…。


「なら…、明日の早朝のパン販売は中止にしたいと思うんですが…」


「「「「ええええッ!!!!!」」」」


 相談していたメンバーと、屋台の向こうで焼きそばの順番待ちをしている行列、その中の冒険者の皆さんから驚きの声が上がった。



「ちょっ、ちょっと待ってくれ!兄ちゃん、お、俺は明日『じゃむぱん』を食えないのか…」

「あ、アタイの推し…、『つなまよ』はどうなるんだ…」

「お、俺は明日『はんばーぐぱん』でヒャッハーしたかったのに…」


 俺たちは明日の朝、何を楽しみにしたら良いんだという雰囲気が冒険者の皆さんに(ただよ)う。


「マオンさん、明日かなり忙しい事になると思いますが…大丈夫ですか?」


 マオンさんがニヤリと笑った。


(わし)を誰だと思ってるんだい?お前さんが生まれる前からパンを売っできてるんだよ!出来ない訳が無いさ!」

「安心するんじゃ。坊やが思い付いたアレも既に出来上がっておるわい!」


「なら…、イケる!」


 僕は立ち上がり、ぐるっと周りを見回した。


「冒険者ギルドでの早朝のパン販売はありませんが…、明日はカレーにします!!」


 うおおおおおっ!!


 冒険者の皆さんから大歓声が上がった!!


「準備をする出店者は開催前から仕込みや準備の為に会場に入れます。幸い冒険者ギルドの名前で契約していますからね。皆さんも準備を一緒にするという名目で入ってしまえば良い。あまりに人数が多いと言うなら…そうですね。今日はこんな襲撃があった訳ですから会場警備とでも言って入りましょうか。主宰している商業ギルドは何の手も打っていなかったのですから」


「じゃ、じゃあ俺たちは明日早い時間から『かれー』が食えるのか!?」


 名前は知らないけどよく見かけるベテランの冒険者の人が聞いてきた


「ええ、さすがに夜明け頃は無理ですけどね」


「いや、それでも『かれー』が食えるなら!」


 他の冒険者の皆さんも一様に頷いている。問題は無さそうだ。


「あの、ゲンタさん…」


 シルフィさんが声をかけてきた。


「分かってますよ、シルフィさん。クリームシチュー、ご用意しますね」


「はい」


 つんつん。僕の足をアリスちゃんが突っついていた。


「もちろんアリスちゃんにも作るからね」


「うん!」


 どうやら僕の返事に小さな姫君は機嫌を直してくれたようだ。




 次回、第157話。『働きたくないでござる』、お楽しみに。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 明日の早朝のパン半端は中止にしたいと思うんですが…のところなのですが、パン半端ではなくパン販売ではないかと
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