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第128話 猫にイカはイカンですよ

醒波(サメハ)」は勢いで書きました。

今は反省してます。

「あ…、あがががが…」


 突如グッタリとし、ズルリと座っている椅子から半分ずり落ちそうになっている猫獣人族(キャトレ)のゴロナーゴ。


「おふぉぉ…」

「ぐふあぁぁ…」


 周囲(まわり)を見れば同じように一同がみんな口から力ない声を漏らし、グンニャリとしている。も、もしかしてイカには何か猫獣人族の人たちにとって体に悪いものだったのだろうか。

 あるいは有害な成分が含まれているとか…。


「サ…、醒波(サメハ)


 ミアリスさんの声、弱々しい声で何かの魔法を唱えた。


 パアアアアッ!柔らかな光、それがミアリスさんのまわりを柔らかく照らす。するとミアリスさんとその周囲の何人かの口から漏れ出る声が収まる。


「ミ、ミアリスさん!」


「だ…、大丈夫です。す、少し休めば皆さんに魔法をかける事も出来るでしょう。今は他の人を…」


 ハアハアと荒い息をつきながらミアリスさんが応じる。


「わ、分かりました」


 そう言ってとりあえずゴロナーゴさんの所に向かった。


「ゴロナーゴさんッ!」


「あ…、あががが…。きゃ…客人よォ…。すまねえ…ブサイクな醜態(ザマ)ァ…見せちまったなァ…」


 戦場で倒れ、味方に看取られる兵士のようにゴロナーゴさんは弱々しく呟いた。


「お…(おら)ァ…もう…ダメだ…。 目の前で…お(めえ)さんの顔が…星と一緒に…回ってらあ…」


「き、気をしっかり持って下さい!ゴロナーゴさんッ!」


「じ、自分(てめえ)の事だ…。自分の事はよく分かるぜぇ…」


「そんなッ!そんな弱気にならないで下さいッ!ゴロナーゴさんッ!」


「へへっ…。シケた表情(かお)してんじゃねえよ…。…うっ!」


 ギュッ!僕の服をいつの間にか掴んでいたゴロナーゴさんが断末魔のような声を上げる。


「ゴ…、ゴロナーゴさんッ、ゴロナーゴさんッ!!?」


美味(うま)い…」


 がくり…。崩れ落ちたゴロナーゴさんの顔はとても安らかなものであった…。



「ゴロナーゴさん…」


 猫獣人族の親分ゴロナーゴさんはイカを食べ、力尽きてしまった…。


 なんとも言えない空気が流れる。それはなぜか…と言うと。


「いやぁ…、こら参った!こんな美味えモンがあるなんてなあ…」


 力尽きだとは言えゴロナーゴさんは息絶えた訳ではなかった。あまりの美味さに腰を抜かし気を失ってしまったのだ。


「体に悪い訳ではなさそうですが…」


 ミアリスさんによればどうやらイカは猫獣人族にとって有毒なものではなく、正気を失うと言うか文字通り骨抜きになってしまう程の美味らしい。

 ここにいる猫獣人族の皆さんはまさにその影響を受け、全員がノックダウン。かろうじてミアリスさんが「醒波」の魔法で正気を乗り戻したものの、それでもしばらくはグッタリとしていた。


「お、恐ろしいぜ。こんな腰砕けになっちまう美味が…、まだ四切れも残ってるなんてよォ…」


 ゴロナーゴさんのその言葉に一同が『ごくり…』とノドを鳴らす。


「こ、これはヤベえぜ…」

「ああ…、明日俺たちは足腰立つのか…」


 そんな不安な声が聞こえる。


「だか、客人からの祝膳に祝酒だッ!カケラ一つ、一滴残らず腹に収めるンだぜぇ!!」


「へいっ!!」


 親分の号令に全員が(はし)を…いや、フォークを付けた。


 その夜、ゴロナーゴ邸では同じ事があと四回繰り返されたと言う…。



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― 新着の感想 ―
[一言] ウチの猫は、皿に乗せていた焼いたスルメを齧ってましたが普通に平気でしたね 猫にとって毒となる酵素は加熱すれば壊れるみたいです まぁ、塩気が強くて食べさせられないのですけど、ウチの猫はイカが…
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