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魔装戦鬼  作者: Nutz
第1章 ビギナー
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第7話 エンカウント その2

 くそ!

 俺のせいだ!

 あの時一撃で仕留めていたら…!



「良いのがいるなぁおい! この森はよぉ! こいつはかなり使えそうなブタだぜぇ、ハッハァ!」



 ビッグ・ママに蹴りを入れながら髑髏面は言う。

 クソ野郎め…!



『小僧、許す。あいつは殺せ!』

「当たりめぇだ!」

「やってみろよぉ!クソ雑魚どもがぁ!ハハァ!」



 動き出すビッグ・ママ。

 直後突進に弾き飛ばされる。

 くっ!早い!



『小僧!』

「ハッハァ! いいじゃねぇかブタぁ! 俺の腕をこんなにしやがって! すぐには死なせねぇぞぉ! ゆっくり四肢をもいでぇ! 動けないお前の上であのガキを楽しんでやる! 殺すのはそれからだぁ! ヒャハァ!」



 あぁ…だめだ。

 アイツは…

 絶対に…ヤル。



 ビッグ・ママの追撃が来る。

 今までよりも早く、重い。

 やっぱりママは優しいんだな。

 手加減してくれてたのが分かるよ…

 ガードするので精一杯だ。

 それすらも凌駕し、ガード越しに吹き飛ばされる。



「カハッ!」



 宙に飛ばされ転がり、意識が飛んで起き上がれないでいた俺を潰そうと蹄が迫る。



『小僧! 早く起きろぉ!』



 師匠の束縛が久し振りに来た。

 衝撃に目を覚まし、迫りくる蹄を手で抑える。

 やばい!

 逃げられない!

 潰されるのは時間の問題だ…!



「ユキさん!!!」



 ハヅキが来た。

 ヤバい!

 髑髏面の男が即座にハヅキの後ろに回り拘束する。



「ハッハァ!! こりゃ丁度良いなぁオイ! ガキが自分の方から来やがったぁ! おっとぉ、下手な真似すんなよぉ? 彼氏が死んじまうぜぇ?」

「そんな…ビッグ・ママまで…!」



 抵抗しようとするハヅキを制し髑髏面はいやらしく笑う。

 髑髏面の兜を収納し、素顔を晒す。

 頬はこけて目の窪んだ、魔装通りの髑髏のような顔だった。



「ブタぁ! そのままそいつを抑えてろぉ! お前も素顔を見せろぉ。ここで楽しむのを見せてやるからよぉ…ヒヒッ」

「ひっ…!」



 言う通りに顔を晒したハヅキの頬を髑髏面が舌で舐め上げる。

 くそが!

 くそがぁ!

 …どうしてもやらなきゃダメなのか!



『小僧! やつの思い通りにさせるつもりか!?』



 ダメだ。

 あいつの好きになんてさせちゃいけねぇ。

 ママ…ごめんよ。

 覚悟、決めたから。

 もう誰も傷付けさせない。

 ママだってそんな風にされて、悔しいよな。

 すぐに解放させるからな。



「…お、おおおお!!! おらぁ!!!」

「!?」



 ママの体は押し返され宙に浮く。

 飛び上がりママのこめかみ目掛けて、全力の右ストレートを打ち込む。

 錐揉みに回転し吹き飛ぶビッグ・ママ。

 起き上がる気配は無い。

 気絶してくれたようだ、良かった…



「はぁぁぁ!? 使えねぇブタだなクソがぁ!!」

「お前はもう無駄口を叩くな…」



 一気に間合いを詰めるが、髑髏面は反応出来ていない。

 早いのは脚だけか?

 ハヅキを抑えていた左手を掴み、捻り上げ締め付ける。

 鈍い音がして腕が曲がり、髑髏面が叫ぶ。

 そのまま頭を抑えつけ、地面に叩きつける。

 カエルのような鳴き声を上げて気絶する。

 もう一度叩きつけ起こす。



「はっ!はへ!ひゃあああああ! 助け! 助けて!」



 気絶の影響で遅れて事態を理解したようだ。

 涙と鼻水を垂らしながら懇願する。



「ダメだ。ビッグ・ママへの支配を解け。そうしたら楽にしてやる。」

「待って! だダメなんだ!! 支配は解けねぇんだよぉ!! 支配を解いたら、俺の能力を解く事になる! 一度支配した魔物はそのまま消えるんだよぉ! そうしたらお前俺を殺すだろぉ!?」

「そうか、無理か…残念だ。どっちにしろお前は殺すがな。」

「へぇぇ!?? くぶっ」



 頭を叩き潰し、吸収する。

 ステータスを確認すると、コイツの魔装はδ(デルタ)

 マスターの名前はいい。

 知りたくもない。

 こんなヤツを吸収するのは癪だけど、魔装のエネルギーは強力だろうからな。

 俺の力に変えてやる。

 もうこんな犠牲を出さない為にも…



「ユキさん…」

「ハヅキ、ごめんな。 怖かったな…」

「ううん、ユキさんなら助けてくれるって信じてたよ。」

『お前ら、いちゃいちゃするのは後だ。ママが起き上がるぞ。』



 …!?

 髑髏面は倒したのに消えないのか!?

 まさか!!



「あぁ…痛いわぁ、派手にやってくれたわねぇ…」

「「ママ!」」



 起き上がるなり話し出すママに驚き駆け寄る。

 目に輝きが戻り、暖かいあの瞳で俺を見る。



「坊や、やっぱり貴方はやれば出来るじゃないの。操られていた間も、自分じゃ動けなかったけど、全部覚えてるわ…」

「良かった…。 ママが死んじまうと思ってたから…。」

「あの容赦無い右拳には死を覚悟したわね。そこの戦鬼との戦いを思い出したわ。この坊やはまさに貴方の後継者ね。」



 笑いながら師匠を見る。

 師匠も友人が目を覚ました事に安堵しているようだ。



『やつを倒した事で支配が完全に解けたんだろう。そもそもママは普通の魔物じゃない。神格化した魔物。神獣だ。だから無事だったんだろうな。あんなヤツに操られるなんてお前もまだまだだな! ヌハハハハハ!』



 照れ隠しにビッグ・ママをお説教するが、羽の羽ばたきが多い。

 興奮してやがるな。

 緊張が解けてヘタリ込む。

 そんな俺に師匠は思い出したようにお説教を始める。

 あの時ーこうしてーああしてーだのなんだの。

 勘弁してくれぇ。



 俺達の様子を見てハヅキもビッグ・ママも笑う。

 良かった。

 皆が無事で、本当に………



 意識が遠のいていく。

 頭に響く声。

 おめでとう、君は一つ壁を超えた。

 君の……



 そのまま俺は深い眠りについた。

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