表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔装戦鬼  作者: Nutz
第1章 ビギナー
7/59

第6話 エンカウント

 あれから2日、ハヅキから他の話も聞いた。

 ここに来たのは一ヶ月ほど前な事。

 そこですぐに他の魔装使いに出くわす。

 相手はすぐに攻撃を仕掛けてきたらしい。

 いきなりの事に驚いた彼女は自分の能力を使い、草木に隠れてひとまず戦線離脱、何とか逃げきる。

 魔装は基本的に同格、よほどの実力差が無ければ簡単に倒せないらしい。



 元々この近くにいた彼女は、逃げながらこの新マップ《禁域》が広大な森である事を思い出しここにたどり着いた。

 自分の能力ならここは打って付けだろうと。

 その上、彼女の能力《植物操作》は操るだけでなく、植物と簡単な交信も出来るらしい。

 その時にこの森に眠る力の事を聞く。

 それを探していたら、覆面ライダーみたいなのいるー!

 って事で俺の後をつけてたらしい。



「話しかけてみたかったんだけど、また襲い掛かられたらって思ったら…」



 ハヅキは震えていた。

 俺より若い、しかも女の子が1人で一ヶ月も…

 怖かっただろうな…

 俺だって3日であの様だよ。

 元の世界のままなら事案だ。

 未成年に抱き着く、コスプレした不審者だ。



「最初に会えたのがハヅキで良かったよ。これからは一緒だし、師匠もいる。ビッグ・ママもな。」

「…うん!」



 少し目を潤ませながらも笑顔で頷いた。

 強い子だな。



「ところであの時見てて思ったんだけど、ユキさんの《再生》、あれ何!? 凄過ぎません!?」



 可愛いなぁ、まだ敬語混じりになってる。

 あれ? 魔装だと普通じゃないの?

 師匠を見る。



『言っただろう、魔装α(オレ)は特殊だとな!ヌハハハハハ!』

「この師匠さんもそうよ! 私にはこんなナビゲーターいないのにー! 羨ましいー!」



 ハヅキに抱き抱えられ、師匠は揉みくちゃにされてる。

 羨ましいだと?

 脳筋の鬼畜だぞその毛玉。

 ハヅキが以前の戦闘で負った怪我は大したものでは無かったが、治るのに数秒掛かったらしい。

 それなのに、俺の腕と脚を生やした《再生》を見て信じられないと言う。



「私じゃ絶対出来ないですあんな事。痛いでしょ!?」

「確かに、魔装が皆あんな再生してたら倒せないよな…そういえば、痛みらしい痛みもない。」

『ふん。再生を終える前に叩き潰せばいい。それでも再生するなら何度でもな。生き物には必ず限界があるもんだ。』



 ホントこの毛玉は容赦無いなぁ。

 ハヅキも苦笑してるよ。

 でも、その通りだな。

 逆に俺がそれをされたらまずい。

 ビッグ・ママ級の実力者にそれをやられたら、再生にエネルギーを取られてすぐに終わる。



 あれからビッグ・ママに何度か相手をしてもらってるが、勝てない。

 ハヅキも一緒にやるが、この子はもっと弱い。

 俺達は2人共、甘ちゃんなのだ。

 師匠には怒られるが、ビッグ・ママはこっそり言ってくれる。

 貴方達の優しい所は魅力よ、後は少しで良いから覚悟を持つ事ね。と。

 これからは自分だけじゃなく、ハヅキも守らなきゃ、だもんな。



 修行がてら、近隣の魔物を狩りに2人で出る。

 師匠の提案で、今回は俺とハヅキでもやり合ってみようと言う。

 魔装同士での戦いに慣れておけと。



 《禁域》を出てしばらく進むが、なかなか魔物の姿を見かけない。

 この辺りの魔物は数日前に狩ったから、もうとっくに湧いて(リポップ)ていいはずなのにな…



「ハヅキ、この辺の植物達に聞いてみてくれないか?」

「はい!」

「敬語じゃなくていいのに、相棒なんだから。」

「あ、はい!」



 笑うがすぐに真面目な顔に戻り、震えだす。



「ユキさん、ここに来てる。」

「何が?」

「あの時の、あいつ、魔装使い。見えたの、あいつ、だった。」

「…どこだ?」

「イメージが見えたの…」



 ハヅキの両肩を掴んで、目を見る。



「落ち着いて。大丈夫だ、俺達がいる。」

『小僧はともかく、俺がいるからな。何もビビる事はねぇ。』

「てめぇこの毛玉。」



 ハヅキは少し笑った。



「ここから北の方に向かってる…だけど変なの。ちゃんと見えなかったんだけど、何かを連れてた。 多分、魔物…」



 魔物を連れてた?

 そいつの能力なのか?

 とにかく警戒は必要だな。

 有無を言わさず女の子に襲い掛かるヤツだ。

 話し合いは出来ないと思った方が良いな。



『あぁ! 魔物を強制的に支配下に置く能力の魔装があったな。その時のマスターは、実力者だが生意気なヤツでな。何度も叩きのめしてやったよ。 ヌハハハハハ!』



 師匠やるじゃねぇか!

 情報は武器だ。

 優位に立てる。

 って事は、そいつがここいらの魔物を使役して連れて行ったのか。

 魔物を強制的に…面倒な能力だな。



『常に警戒を怠るなよ。辺りの魔物を使役しているなら、何処から気付かれるか分からん。』

「あぁ、分かってる。」

「…! ユキさん! 後ろ!」



 振り返りそこにいたものを握り潰す。

 《殺人蜂(キラービー)》だ。

 人間の頭ほどあるサイズの魔物で、集団で現れ攻撃してくるからかなり面倒なヤツなんだが…

 他の個体がいない。

 1匹だけなんて…



『まずいぞ、そいつが使役している魔物なら相手に位置を知られた。それぞれの状況を把握してるはずだ!』

「ハヅキ!すぐにここを離れるぞ!」

「え?」

『今のは相手の斥候だろう。適当に放って探らせてたんだろうな。』



 遅かった。

 もう周囲には多数の魔物がいた。

 《ハウンドドッグ》、《ワイルドボア》に《キラービー》。

 群れを成すにしても多種族は有り得ない。

 しかもこの数…100以上はいる。

 先手を取られた…!



「ハッハァー! いたよいたよぉ、やっと見つけたぜぇクソガキぃ! チョロチョロ逃げ回りやがってよぉ。」



 薄気味悪い、灰色の髑髏面の男が姿を現わす。

 ハヅキがその姿を見て怯えている。

 随分と素早いヤツみたいだな。

 もう来やがった。



「あぁん? なぁんだよ、他のもいたのかよぉ…クソガキなりに知恵を働かせたじゃねぇかぁ…何も出来ねぇガキなりに、"女"を使って垂らし込んだかぁ? 大したもんだぜクソガキぃ! 終わらせる前に俺も楽しませてもらうかなぁ!? ハハァ!しかしラッキーだぁ。一気に2人も潰せ…」



 一気に間合いを詰め懐に潜り込み、下から腕を振り抜く。

 髑髏面の男は後ろに飛び退く。



「ハハァ! あぶねぇあぶねぇ! お前そこそこやりそうだなぁ?」

「お前の評価なんてどうでもいい。ムカつく野郎だから、遠慮無くやれそうだ。」



 言いながら、腕を地面に捨てる。

 エネルギーを吸い取り、カラカラに萎びた()()()()()()右腕を。



「うぉ、お、俺のぉ、はぁ!? なんて事しやがるんだテメェ! ぶっ殺してやるからなぁ!!」



 言うなり、踵を返して逃げていく。

 自分の右腕が無くなった事に焦ったようだな。

 大した事ないんじゃないかこいつ。

 だけどお前は逃がさね…!



 道を塞ぐように使役された魔物達が襲い掛かってくる。

 ハウンドドッグの牙が迫るが、俺に届く前に全ての魔物が止まる。

 襲い掛かって来た魔物達は、蔦に絡められ抑えられていた。



「ユキさん! ここは私が!」



 優秀な相棒だ。

 頷き、すぐにヤツを追う。

 あれは放っておいちゃダメなヤツだ。

 逃げた方向は禁域。

 ヤバい!



 全力で追い掛けるが早い。

 後ろ姿が辛うじて見えるがどんどん引き離されていく。

 さっきの一撃を避けたのは伊達じゃねぇな!

 けど、ここのまま行かせたら…

 禁域に入り、すぐにヤツに追い付いた。



 隣には、涎をだらしなく垂らした大型の魔物が虚ろな目をして立っていた。

 嫌な予感が当たっちまった…

 ビッグ・ママ…



 そこにはもう、威厳のある暖かい森の守護者の面影はなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=134242164&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ