通り魔、派遣×
仕事が終わったのは5時を過ぎたあたりだった。
いつものように帰り支度をし、公園と向かう。
待ち合わせまでかなり時間がある。
コンビニに立ち寄り時間を潰していた。
ふとスマホでアプリを起動させると
表示が変わっていた。
【通り魔を派遣中】
「派遣中…通り魔が派遣とはなんだか面白いな。」
気が付けば時間まであと数分まで迫っていた。
コンビニから出て公園へ向かう。
めずらしい事に人が居ない。
いつもならたくさん人がいるはず…
そう思った時だった。
左に人影が見えた。
男がたたずんでいる。
目を凝らしよくみると、
なんだか違和感を感じた。
コートを羽織った
大男がこっちを見ている。
その手にはナイフらしき物を持っていた。
通り…魔?
背筋に寒気を感じたと同時にその男はこちらに走ってくる。
間違いない。
通り魔だ。
スマホを握りしめると同時に逃げる。
どう考えてもケガどころで済ましてもらえる
雰囲気の相手ではない。
感じるのは殺気。
誰かに助けを求めようにも声がでない。
息を切らしながら公園からでると、
隠れれそうなところを探す。
どこに逃げるか頭が回らない。
足音がする。
まだ追いかけてきている…
いつもは通らない道に来てしまった。
どこかに隠れれそうなところはないのか…!
はぁはぁはぁ......
こんなにも死にたかったのに、
いざ死ぬんだと思うと途方もなく怖い。
スマホを握りしめ走る。
ただ走る。
どんどん距離を縮めてこられている、
どうすればいい、どこに逃げればいい、
、、、、、、
振り向くと
数メートル先に男がいた。
目の色が赤く、
無表情の男がこちらを見ていた。
「と、と、通り魔!」
口をついて言葉が出た。
近づいてくる。
怖くて足がすくむ、
思うように体が動かせない。
そしているうちに
男は目の前にいた。
ナイフが振りかざされたその時だった。
ガッ
何かを殴った音がした。
その音と同時に
大男がこちらに倒れてきた。
大男の先には人がいた。
そこには笑顔の男がいた。
鮮やかな緑色の髪をオールバックにし、
赤色の目をした男だった。
笑顔のまま唐突に話し出す。
「はじめまして、こんにちは。
秋川シュン様、ご提案があって参りました。
大変お困りのようですね。
突然ですがゲームに参加しませんか?
簡単な殺戮ゲームです。
参加していただけるのでしたら
この危機的状況から
救って差し上げます。
いかがでしょうか?
選択肢は、死ぬか、参加するかの
どちらかになります。」
笑顔を崩さず、
営業トークのようにすらすらと話す。
「ゲーム?」
訝しげに問いただす。
「はい。異世界に行って
たくさんモンスターを殺戮するのです。
そこに行けば理想の世界がありますよ。
たくさんのお金も手に入りますしね。」
お金か…
それに
断れる状況ではないな…。
「わかった。参加するよ。」
「ありがとうございます。ふふふ…」
そう言うと同時に男の目の色が変わる。
闇のような紫の色になった。
それを見たと同時に意識を失った。