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信長の庶子  作者: 壬生一郎
織田信正編
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第十五話・当主の父と当主の子

「大変にお待たせ致し、誠に申し訳ございませぬ」

四十を僅かに過ぎたくらいに見える年頃の男が俺に頭を下げた。


「構いませぬよ員昌(かずまさ)殿。待っている間に面白き話も出来ているではないですか」

俺がそう返すと、屋敷の主である磯野員昌(いそのかずまさ)殿が済まなさそうにもう一度頭を下げた。


先程も少々触れたが小谷城が築かれた小谷山は、前面に虎御前(とらごぜ)山、西に高時川、背後には伊吹山系が控える自然の要害に囲まれた屈指の山城である。詳しくは知らないがここ小谷城を居城とした浅井家当主三代が何度となく増改築を繰り返し、今も大きくなり続けているらしい。小谷山に深く切り込んだ清水谷とその両側の尾根、及び小谷山の山頂大嶽(おおづく)にあり、その構造は、本丸を中心とする主郭と居館のある清水谷、それらを守るように配置された出丸・金吾丸・大嶽城・月所丸・焼尾丸・福寿丸・山崎丸の独立した砦からなる。俺達は客人とはいえ本丸に入ることは許されていないのか清水谷にある屋敷に通された。


小谷山に囲まれ、先に述べた砦に守られた清水谷は浅井家で最も安全な場所である。つまり、清水谷に館を構えることを認められている磯野員昌殿はそれだけで浅井家にとって重要な人物であると分かる。それが証拠にというべきか、磯野殿を見た瞬間、可隆君が少し眉を顰め、又左殿は寧ろ楽し気に『出来ますな』『そうだなあ』などと小声で話していた。


若輩者の俺に対しペコペコと頭を下げる磯野員昌殿は、それだけで見ると嘉兵衛のような苦労人の文官であるのかと思えるが、見かけによらず対六角の戦ほぼ全てで先陣を務めている御仁だと聞いている。元々国力に差がなく、しかもまとまりの悪い斎藤家を相手取った織田家の先陣ではない。衰えたりとは言え今もって畿内有数の戦力を持っている六角家を相手とする浅井家の先陣だったのだ、簡単なことではなかっただろう。先程俺は磯野殿の事を四十過ぎに見えると評したが、実際には三十程度、斉天大聖や又左殿と同年代であるそうだ。


「誠良き話、良き出会いとなり申した。この員昌、今日という日を決して忘れは致しませぬぞ」

「それはこちらとて同じ事にござる」


取り敢えずこちらにと言われて屋敷に通されて既に小一時間、浅井家にどのような思惑があって待たされているのかはさておき、俺としては中々に楽しい時間が過ごせていた。

磯野殿は俺を通してから暫くは市姉さんが元気で過ごしているとか、不便があれば何でも言って欲しいとか、浅井家の人間が織田家の人間を迎え入れるにあたって当然話すだろうという話をしていたのだが、やがて話が俺自身についてのものとなった。


(それがし)武辺一辺倒の無骨者故、読んだ書物はせいぜいが兵法書程度でございます。帯刀殿のように智に明るくあのような面白き物語をお書きになる方は、兵法書のような血生臭き物などお読みにはなりますまい」


帯刀仮名は便利であるし、市姉さんが持ち込んだ竹簡の帯刀規格も非常に理にかなったものである。といったお褒めの言葉を頂戴した後、磯野殿はそんな風に言ってくれた。兵法など、お前は知らないだろうという馬鹿にされた言い方ではなかった。むしろ員昌殿はそれしか知らない自身を恥じ入るようですらあった。


「いえ、そのようなことはございませぬ。某確かに日記文学や物語は好きでありますが、武経七書に戦国策、戦国三十六計なども読み申した。血生臭いとか雅でない、などという理由から兵法書を避けるは愚者の考えというもの」

申し訳なさそうに磯野殿が言うので、励ますような気持ちを込めて言った。嘘は言っていない。一生懸命に書かれた文章に技術の差はあれどどれもみな尊いのだ。


「左様でございますか、なれば、闘戦経を読んだことはございますか?」

トウセンキョウ、と聞いて、一瞬頭の中で字が浮かんでこなかった。しかし、その本について記憶が行き当たった時、俺は思わずははあとため息にも似た吐息を漏らした。


「これはまた、思わぬ名が出て参りましたな。実は某、闘戦経は未だすべては読み切って居り申さぬ。孫子、呉子は嗜んでおります故手に入れた部分においては理解したと自惚れてはおりますが」


武経七書に戦国策、戦国三十六計は全て大陸で生まれたものだ。闘戦経は武経七書の内の一冊である孫子についての補助的な内容を持つ。補助書であるが故にそもそも孫子や或いは呉子を読んでいなければ内容がつかめず、従って本そのものが余り広まることがない。俺も津島港にやってきた商人がたまたま持っていた一部書物を買って読んだ程度だ。


「しかし、あれは良書にございます。読んでいると何やら北畠顕家(きたばたけあきいえ)公にでもなったかのような」

「お分かりになりますか!?」


磯野殿が膝を打たんばかりに喜び、ズッと身体をひとにじり前に出した。俺はそれに驚きはしない。好きな本を語り合うことの出来る仲間を見つけた人間の反応は今までに何度となく見て来たからだ。


「はい。『兵は詭道なり』を否定するつもりはございませんが、正々堂々とした日ノ本の武者らしい思想を纏めた、まことに日ノ本の兵法書と呼ぶに相応しいものでござる」


俺が言うと、磯野殿は『よくお分かりで!』と喜色を満面に張りつかせた。実のところ俺は闘戦経の内容を丸ごと良いとは思っていない。闘戦経は『すべては気の持ちよう』であるとか、精神論に些か偏り過ぎているような気がするからだ。先に述べた正々堂々の気風も、格好良いことは認めるが、泥水を啜ってでも、鬼畜生と罵られてでも生き延び、勝つということの格好良さも又あると思う。しかし、日ノ本の兵法書と呼ぶに相応しいという言葉に嘘はないし良い内容も沢山ある。


「流石にござりますな。実は某偶然にも闘戦経を手に入れましてな。自ら注釈などをつけておるのですが……」

「希少な文献が手に入るは矢張り小谷が琵琶湖を通じ京や堺、或いは大坂城の文物を手に入れられるという事ですな。尾張の田舎者としては羨ましい限りで」

「何を仰います。尾張の港にも日々多くの物や人が届くと聞いておりますぞ」


そうして、磯野殿は水を得た魚のごとく話し出した。俺はそうやって話をする磯野殿を見ながら一つ、ここに来た成果を得られたと思っていた。

見た目だけでは余り警戒する気になれない磯野員昌殿だけれど、俺は会う以前から彼の事を良く注意し、そして出来ることならば仲良くなりたいと思っていた。その理由は一つ、母が言っていたからだ。『磯野員昌殿に出会えたならば知遇を得、顔名前を互いに分かるようにしておくに如かず』と。


母がなぜそう言ったのかは、そもそもどうして他国の一武将について知識があるのかについては、いつものことながら考えるだけ無駄なので考えない。しかし、母が発する言葉には常に何らかの裏付けがあるのだ。それは最早答えを知っているかの如くに。

そうして、話はようやく今へと戻る。


「もしよろしければ某が書き写した闘戦経を持って帰っては如何ですか?」

ようやく準備が出来たと、女中から声をかけられたところで、磯野殿がそう提案してくれた。

「それは有り難いことにございます」


本当にありがたい。闘戦経もそうだが、本は大作であればあるほど紙片が増え、二巻三巻と増えてゆく。そうなると内容の前半やら中間やらが抜け落ちてしまっている事が実に多いのだ。俺が闘戦経を一部しか読めていないのもそういった理由による。


「しかしながら、何分戦時にてそれは次の機会にいたしましょう。支払える金銭もなければ物も持っておりませんし」

そう言って俺が固辞すると、いやいやと、磯野殿が手を振って応えた。


「金銭や物など必要ございませぬ。強いて言えば早うに『ゲン爺』の続きを書いて頂ければと」

「そう言えば、先程から某が(つたな)く阿呆な物語を書いていることを知っている口ぶりでしたね」

「いや、阿呆はともかく、拙いとはとんでもござらぬ。当家にてあの物語を読んで笑い転げなかったものはおり申さぬ。源氏物語のような甘い恋愛譚は正直肌に合い申さぬ。平家物語のような戦記は実戦で何度となくその様子を見てござる故、今更書物で味わおうとは思えませぬ。しかし帯刀殿がお書きになる物語は良い。あれだけ笑うと腹の底から力が湧き出てくるような気が致す」

「あのようなものをそこまで褒めて頂けるとは却って恐れ多いことですが、どこで読まれたのです?」

「市姫様付きの女中達が当家の子女に広め申した。そこから某も読み、余りに面白かったので周囲にも紹介致した次第」


市姉さん、中々の広めっぷりだな。というか、引っ越してきてすぐあんなものを拡散した他国の姫を見て、小谷の人間はどう思ったのだろうか。磯野殿に関して言えばそう悪い感情は持っていないようだが。


「そういう次第でございますので、是非とも一冊お持ちください」

そう言って頭を下げられると最早断る方が野暮というものだ。俺は有り難く頂戴いたしますと言ってから、人差し指を立てた。

「ただ、頂戴してばかりでは余りに申し訳ございませぬ故、後で紙を一枚お借りしたい。そこに某が帯刀仮名を書いて差し上げます。壁にでも貼り付け、童達の手習いの見本となさいませ」


せめてもの礼を俺が提案し、磯野殿が大いに喜んでくれたところで、迎えの者から移動するようにと言われた。屋敷を後にし、用意された馬で移動する。目的地は本丸やどこかの砦ではなく、清水谷にある別の屋敷だった。ただし、他の屋敷よりも格段に広く豪奢で、明らかにこの谷の主か、それに準じる者が住んでいることが分かる屋敷だ。



「こちらへ」



磯野殿に促され廊下を進む。京に近い畿内において六角や朝倉といった名門と時に結び時に争って来た浅井家の屋敷や廊下は、織田のそれよりも洗練されているように思えた。


「倅が使者か、織田家は当主を筆頭にその妹も長男も身が軽いな」

通された奥の間にいたのは、浅井家当主浅井長政様、ではなく、磯野殿よりも年上の、もうじき初老に差し掛かろうというような年齢の男だった。

「貴方様は……?」


名前も立場も分からないままだったが、軽々と誰だお前はと聞ける相手でないことは分かった。ここに座って待っていることがすでにその身の大きさを示しているし、そうでなくとも俺を見る目が尋常ではない。間違いなく修羅場を潜ってきた男が多少の敵意と強い警戒を露わにしながら俺の事を品定めしている。


宮内少輔(くないしょうゆう)様、織田上総介信長様の御長子帯刀信正様をお連れ致しました」

磯野殿が言う。宮内少輔と、名ではなく官位で男の事を呼んだ。母から聞いてきた限りでは、この清水谷にその官位で呼ばれる人物はただ一人しかいない。


浅井宮内少輔久政あざいくないしょうゆうひさまさ様におかれましては、初に御意(ぎょい)を得まして光栄の至りにございまする。織田上総介信長が庶子、帯刀信正にございます。此度は浅井家による戦の御助力に対しての礼を申し上げに(まか)り越してござります」


深々と頭を下げると、俺に従っていた又左殿と可隆君も続けて頭を下げた。こういう時、体がでかくて堂々としている人が後ろにいてくれるのは大変心強い。


「……噂に違わぬな」

鋭く、俺を睨むかのように見つめる浅井久政が、唸るように言った。


「噂、でございますか?」

「左様。帯刀殿、貴殿、幾つになる?」

「十四となりまする」

「その年で、官位を聞いて儂を浅井久政であるとすぐに見極め、見事な挨拶をした。儂の顔を見て、油断してはならぬと表情を引き締めた。尾張の麒麟児に相応しい、見事な振る舞いよ」


睨むような表情はそのままに、忌々し気な口調でべた褒めされた。お褒めに預かっていることは間違いないので礼を言って頭を下げると、そんな俺の振る舞いなど見えていないかのように話を続けられた。


「貴殿が書いた書を読んだ。儂も笑い転げた。見事な物よ。人を笑わす才もそうであるが、それを文章で見事に表現しつつ、仮名文字という表現柔らかな文字を使用することで誰もに読みやすくしておる。知性というものはひけらかすのではなく、伝えることが出来てこそだと学ばせてもらったわ。誠、天才とはいるものよな」


どんどんと、誉め言葉が過分になってゆき、反比例して忌々し気な口調もきつくなってゆく。

喜右衛門(きえもん)よ、そちもそう思うであろう?」

「誠に。驚嘆(きょうたん)すべきは師らしきものもおらず独力でもって帯刀仮名の作成や漢字の編纂などの事業に着手する行動力。更に言えば重臣に咎められようとも正しいと信じたことを曲げぬ胆力にございまする」

「あ、いや、余りにも身に余るお言葉でございます」


褒められているのに、なぜか追い詰められているような気分になって、俺は話を遮った。喜右衛門と呼ばれた身分の高そうな男の存在にも、浅井久政が問いかけて初めて気が付いた。


「身に余る? そのようには思えませぬが」

「師はおりまする。独力でもって帯刀仮名の作成や漢字の編纂に着手したわけでもございませぬ」

「左様ぞ喜右衛門。帯刀殿の母は稲荷の化身と呼ばれる程の才女。良き師、良き母でもあるのだろう」

「成程、それを失念しておりました。今子建殿の母、さしずめ今式部と呼ぶべき方かもしれませぬな」


知られている。これまでの俺の半生が全て、母のことまで。


「『ゲン爺』の中にも麒麟児の才は見えておったな。帯刀殿、貴殿源氏物語は当然読んでおろう」

「はい」


話が俺の事からほんの僅かに逸れたことで、俺は内心ほっとしながら答えた。

「宇治十帖編も抑えている者は意外と少ない。薫の君と匂宮二人を思わせる味噌と酒の香りがただよう酔っ払いを出してくるところなど、技ありの手法と呼ぶべきであろう」

「ただの戯れでございます」


頭を下げながら答えた。源氏物語と言えば主人公は光源氏と誰もが知っている。しかし宇治十帖編についてはその限りではない。光源氏の死後、義理の息子薫の君が主人公の物語だ。


「偉大な父を持つ息子の気持ち、恐らく帯刀殿なれば理解出来るのであろうな、薫の君と帯刀殿には共通点も多いことであるし」

「共通点、でございますか?」

「左様。例えば容姿、佐和山へと向かう上総介殿を見たが、帯刀殿によく似ておる。光源氏も薫の君も共に美男子じゃ。よく似ておろう」


いつの間にか、忌々し気な口調は成りを潜めていた。まさか本当に、ここで古典作品について話をするつもりなのだろうか。

「父から(うと)んじられているという点についても、よく似ておろう」

そう油断した時、ズンと、腹の底に響くような言葉がぶつけられた。


薫の君は対外的には光源氏の子と言われていたが、その実不義の子であり、父光源氏からは疎んじられていた。その為、薫の君は世を儚み仏門に帰依したいと考えるようになる。


「そ、某は父から疎んじられている訳でなく、薫の君とは異なっておりまする」

「ほう、長子にありながら家督も継げず、それどころか他家に追い出されてしまったというのに疎んじられておらぬとは、これは健気健気」

「お言葉が過ぎますぞ、宮内少輔様」


そこに、喜右衛門と呼ばれた男が口をはさんだ。


「家督を継げぬは御家争いを避ける為仕方なき事。上総介様は此度も帯刀様をご自身の名代として寄越したのです。信頼出来る精鋭の供回りを付けて。我ら浅井家が信頼されている証、そして帯刀様が重要視されている証ではござりませぬか」

「そうじゃの、その通りだ喜右衛門。儂が間違っておったわ。済まぬ、帯刀殿」


喜右衛門の言葉は、表面上俺を持ち上げるような内容だったが、その実俺に疑問を投げかけるものだった。


『敵か味方か分からない小谷に、少人数で寄越された。お前は父親から疎んじられてはいないか?』と。

浅井家は現在三つの大勢力に囲まれている。東が織田家で南が六角家、そして北に朝倉家。浅井家はこの久政の代には六角家に服属していた。そこから離反し、六角家に大打撃を与えたのが現当主浅井長政である。それとは別に北の名家越前朝倉家とは先々代亮政(すけまさ)の代から長らくの友誼を結んでいる。此度の上洛は元々越前朝倉家が主導するはずのものだった。それが駄目になったから父に御鉢が回ってきたという事だ。浅井家はこの三つの勢力の真ん中にあり、しかも琵琶湖東岸という好立地にある。今言った三家全てが、味方に引き入れられるのならそうしたいと考えているのだ。


例えば、朝倉の味方をするのなら兵を動かさず織田六角が相争い疲弊するのを待ち、やはり上洛は朝倉でなければならないという状況を作っても良い。もっと積極的に織田家を潰す為、再び六角と結んで上洛を阻んでも良い。当然、それらの争いの中で勢力を伸ばしいずれは天下を狙うという選択肢もあるだろう。父としては、織田家に味方し上洛を完遂させる手助けをして欲しい。だから切り札である市姉さんを大急ぎで嫁入りさせた次第だ。


話に聞く限り、六角と結ぶことは現状考えられず、織田家と結ぶ可能性が最も高い。先に述べたように、市姉さんが輿入れをし、当主長政様が父の義弟となったからだ。長政の長の字は父信長から一字を取った物であり、両者の関係は緊密である。


しかし、最後の一つ、朝倉家と結ぶという可能性は未だに根強い。理由は二つ、一つは美濃を獲った織田家が越前朝倉家と領地を接したことにある。西美濃勢は長年北の朝倉からの圧力を受けており、決して仲は良くない。現在では両家の家臣達が互いに挑発行為を繰り返している。


もう一つの理由、それは目の前の男、浅井久政にある。この男が、親朝倉派の筆頭であるのだ。隠居したとはいえ、今もって隠然たる影響力を有している先代当主。彼を御輿に親朝倉派、即ち反織田派が結集する可能性は無視出来ない。


今後、織田家と浅井家がどういう関係になるのかはあと十日程度で分かる。即ち、六角攻めに兵を出すか出さないか。出すとしたらどれだけの兵を出すか、である。その辺りも含め、俺は予め母から助言を貰い、注意すべき人物を聞いていた。磯野員昌殿もそうであるし、赤尾清綱(あかおきよつな)海北綱親(かいほうつなちか)遠藤直経(えんどうなおつね)といった重臣達の名も聞いた。そして注意すべき人物筆頭が浅井久政であったのだ。その久政に、俺は今追い詰められている。


「誠優秀かつ果報なる麒麟児殿よ。なればこそ聞いておきたい。貴殿は」


この時、完全に先手を取られてしまっていた俺は、何と言えばいいのかも分からずただ老練な浅井久政の話術に絡め捕られていた。周囲からどうおだてられようと俺はまだまだ子供で、海千山千の老将からすればそれこそ赤子の手をひねる様にやり込められる存在であったのだ。



「尾張を――」



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