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想いに気付いたとき

作者: 安浦
掲載日:2016/08/17

それは突然の誘いだった。


「果歩、明日映画観に行かない?」


小さい時から同じマンションに住む幼なじみの涼と二人で出掛けたことなんかこの17年間一度もないのに。


「え?あ…うん。別にいいけど…」


「じゃあ、明日10時にマンションのエントランスで待ち合わせってことでいい?」


「…うん。いいけど」


もちろん私は、デートだなんて1ミリも思っちゃいなかった。


そして、涼の本心なんて尚更知るわけがなかった。




翌日、私は言われた通り、エントランスで涼を待っていた。


私はチラッと腕時計を見ると、約束の時間を10分程過ぎている。


「涼から言ったのに。遅いな」

そんな小言を言っていると、大きな足音がバタバタと聞こえてきた。


私はゆっくりと振り向くと、そこには焦って走っている涼がいた。


「ご、ごめん!寝坊…」


焦っている涼を見て、怒る気も起きない。

それに、友達と遊ぶ約束をして遅刻されることも珍しいことでもないからだ。


「別にいいよ。行こう」


私はすぐ近くの映画館に行くものだと思っていて、自転車の鍵を取りだし駐輪場に行こうとした。


だけど…。


「ちょっと待て!チャリじゃないから」

「え?!歩いて行くの?!遠くない?」


すると、涼は何だかボソボソと話始めた。


「…電車で、2駅行ったとこの映画館に…行こうかと…」


その時の私は、何でわざわざ遠いところに?と、思ったのが本音だった。


でも、私は嫌な気なんてするわけもなく。


「そうなんだ。じゃあ電車で行こう」


私たちは駅まで向かった。



「涼から誘うなんて珍しいね。よほどみたい映画なんだ?」

「うん。まぁね」


涼は電車から見える流れる景色をただじっと眺めながら答えた。



私たちは目的地の駅に着き、映画館まで歩いて行った。


「果歩はここで待ってて」


私は言われるがまま、大人しくそこで待つ。


すると、涼がチケットを買って戻ってきた。


「あ、チケット代払うよ」


私はそう言いながら、ポケットからお財布を出した。


「俺が誘ったからいいよ」

「え?!いいよ!私も払うから…」

「本当にいいから!!」


涼が力強く言うものだから、私もそれを受け入れることにした。


私は、受け取ったチケットを見て、初めて何の映画を観るのかを知った。


「あ!これ私が見たかった映画だ!」

「でしょ?果歩が絶対好きなやつだと思ったんだよね」


ふと、涼は何で私が好きな映画を観に誘ったのかなんて考えたら、少しだけ、私の中で言葉に出来ない気持ちが沸き上がった。


「行こうか」


私は、小走りで涼の後を追う。


「…涼ありがとう」


私はボソリと呟いたが、ちゃんとそれを涼は聞いていてくれていて、そして笑った。


「どういたしまして」



薄暗い部屋の中、隣を見ると、涼は肘掛けに頬杖を着いている。


その手は大きくて、ゴツゴツしていて、何だか急に恥ずかしい気持ちになった。


小さい時から知っているのに、17歳になるまで二人で出掛けたことなんかなかったのに。



私はそんなことを考えながら映画を観ていた。




「映画、楽しかった?」


映画もあっという間に終わり、私たちは外に出た。


「何か目がチカチカする」


涼はそう言いながら目を擦っていた。


「…果歩、何か食べない?」

「うん…そうだね…」


友達と遊びに行くと、一緒に食事をする機会なんてあたりまえのようにあるのに、何故か緊張してしまった。


私たちは、空いてるお店に入り、普通に食事もして、会話もする。


だけど、急に涼がおかしな話をし始めたんだ。


「…果歩って、好きな人とかいるの?」


胸がドキリとした。


「き、急だなぁ。どうしたの?突然…」


「別に。どうもしないけど…」


そういえば、前に涼に言われたことをふと思い出した。


涼は少し前に私が失恋したことも知っていて、それを励ましてくれたこともあった。

何かあったら相談しろとも話していた。


きっと涼はいろいろと心配しているのかもしれない。


「果歩?聞いてる?」


涼は飲み物を持ちながら私の顔を覗きこんだ。


「好きな人はいないけど…」


私は今の恋バナらしき話を始めた。


「やっぱ、塔野くんはかっこいいよね」


私は過去の恋愛を引きずってるわけでもなかったが、その人をまだ素敵だなぁとは思っていた。


「…へぇ。そうなんだ」


涼は俯きながらストローで飲み物を飲んでいる。


「涼が前に相談しろって言ってくれたでしょ?それ、本当に嬉しかったんだ」


私も飲み物を片手に笑顔で涼に話した。


「涼って優しいよね」


私は本当にそう思っている。


だけど…。


何となく涼が数分前よりも不機嫌になっているのがわかった。


「果歩さ、塔野はもうやめたんじゃないの?」

「…え?」


涼は優しい…?


「塔野って彼女いるじゃん」


そんなことは言われなくても知っている。


「涼?急にどうしたの?」


涼の明らかに苛ついてる態度に私は心配になった。


「どうしたのって、何でわかんないの?!」


「え?な、何でって…何…?」


私は涼の言ってることが全くわからなかった。


「俺はただの優しい人になりたいわけじゃない」


涼が何になりたいかなんて私が知るわけないのに。


「何で塔野なの?ずっと塔野なわけ?」


涼が飲み物を勢いよくテーブルに置いた。


「いや…。そういうわけじゃ…涼、本当どうしたの?」


私は涼を落ち着かせたいのに、何故だか私が話すたびに涼はヒートアップしてしまう。


「塔野はもうやめなよ」


涼が思ってる程、私は別に塔野くんに執着しているわけでもないのに…。



「…うん。わかった」


私は涼の言葉にコクリと頷いた。


「果歩、それで…俺にしてよ」


「…………えっ?!」


これは幻聴だったのか。

信じられない言葉が聞こえた気がして、聞き間違えたのではないかと思う…のに。


「えっと…」


涼が明らかに様子が違うから、急にリアルに感じて、私は恥ずかしくなって涼の顔が見れなくなる。


嘘だよね…?


「……………」

「…ごめん。こんなふうに言うつもりなんてなかったんだけど…」


私の中の勇気を振り絞っても、チラリとしか涼を見ることが出来ない。


「涼は何で急にそんなこと…言うのよ…?」



「俺の中では急じゃない。ずっと思ってたことだから」


涼の顔がちゃんと見れない。

今、涼はどんな顔してるのだろうか?


「果歩、こっち見て」


涼の言葉に心臓が跳ね上がる。

私は恐る恐る涼に視線を合わせる。


涼は…。


「…ずっと好きだった。本当に」


こんな涼は見たことあっただろうか?


それとも、私が気付かなかっただけなのだろうか?


「…何だよ。全然わかんなかったわけ?…少しは気付けよ」


「ご、ごめん…」


「塔野ばっか見てるからだろ」


「ごめん…」


謝るしか出来ない私。

涼は勝手に良き理解者だと思っていた。


「果歩、謝りすぎだし」

気付けなかった想いが今、少しずつ動き出していく。


「…別にいいよ。でもやっと気付いてもらえたんだから」


涼は私の目を真っ直ぐ見て言ったんだ。


「これから始めるから。ね?果歩」


これから起こるドキドキの連続に気持ちが動き始めることを、私はもう確信しているんだ。



最後まで読んでいただきありがとうございます!!

これは前に書いた「気付いてほしい」の続編な感じになっています。

が!読んでなくてもわかる話になっていると思います!!ですが、併せて読んで頂けたら本当に嬉しく思います!!

これは書いているうちにまたしても急に両想いもまだ違うような気がしてしまい、すごく悩んだのですが伝わって終わりにしました…曖昧な感じでスッキリしなかったら申し訳ないです…。

今度こそ!また機会があれば涼の努力を称えたいと思います(笑)

長々と偉そうに後書きを書いてしまいすいません。

またよろしくお願いいたしますm(__)m

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