階級戦争《レベリトン》の始まり
--------戦いの序章--------
「泡沫!お前の天使、見せてみろよ」
エリオットが昼休みに詰め寄ってきた。その周りには何人かの生徒が集まっている。
「見せたくても、呼び出し方が分からないんだが」
「はっ、契約して一週間経つのにそれすら出来ないのか」
エリオットは軽蔑的な笑みを浮かべる。確かに、他の生徒たちは既に天使との意思疎通ができているようだった。
「あの...」
リアが途中で割って入ってきた。相変わらず小さな声だが、以前より俺と話せるようになってきている。
「天使の召喚は、明日からの授業で教わります。だから...」
「ふん、お前もずいぶん男と話せるようになったな、リア」
エリオットの言葉にリアは一瞬たじろぐ。
その時、校内放送が鳴り響いた。
『本日午後より、第一回レベリトンを開催します。全生徒は体育館に集合してください』
「よっしゃ!やっと始まるか!」
教室が急に活気づく。
「レベリトンって何だ?」
「階級戦争...ですよ」
リアが説明してくれる。
「私たち祝福者が、実戦を想定して戦う訓練です。チーム戦で...」
「おい、リア。そいつに教えすぎだ」
エリオットが遮る。
「どうせすぐに脱落するんだからさ」
体育館は想像以上に広かった。そして、なぜか地下まで続いているようだ。
「では、第一回レベリトンの説明を始めます」
壇上に立ったのは学院長のセフィル・アルノーだ。
「今回は新入生の実力測定を兼ねています。4人1組のチームを組み、与えられたミッションをクリアしていただきます」
「チームは...」
名前が呼ばれていく。
「泡沫 纈、リア・テリアレイル、フィオナ・クラウディア、エリオット・レイン」
「はぁ!?」
エリオットが声を上げる。だが学院長は意に介さない様子だ。
「や~!私たちチームだって!」
明るい声と共に、小柄な女の子が駆け寄ってきた。オレンジ色の髪が印象的だ。
「フィオナです!よろしくね♪」
「チッ...くだらん」
エリオットは不機嫌そうだ。
「ミッションを発表します」
学院長の声が響く。
「地下迷宮に仕掛けられた3つの封印を解き、中央祭壇のクリスタルを手に入れよ。ただし...」
にやりと不敵な笑みを浮かべる。
「迷宮内には模擬エボルティを配置してあります。接触した場合、大きなペナルティが課されます」
「模擬...エボルティ?」
「本物に似せて作られた訓練用の敵です...」
リアの説明に頷く。
「作戦会議の時間を15分与えます。その後、各チーム順次投入します」
エリオットは渋々、俺たちの元に歩み寄ってきた。
「じゃあ、作戦考えましょ!」
フィオナが明るく言う。
「俺がリーダーだ」
エリオットが即座に宣言する。
「異論は...」
その時、俺の右手の紋章が強く光った。そして、頭の中に声が響く。
『危険が近づいている...気をつけろ』
契約した天使の声...?
「泡沫、聞いてるのか!」
エリオットの声で我に返る。
「すまん...ちょっと気分が」
「んも~!しっかりしてよ~」
フィオナが頬をつねってくる。
「いった!」
「ふふ...」
リアが小さく笑った。珍しい光景だ。
「まったく...」
エリオットは呆れた表情を浮かべるが、先ほどより幾分和らいでいるように見える。
だが、俺の頭の中では天使の警告が反響し続けていた。
この階級戦争は、予想以上に危険なものになるのかもしれない...。