--- はじまり ---
初めて見たときは怖そうなヒトだな、と思った。とても闇色のマントが似合うなと思っていた。まだ表情の違いを読み取れなかったから、何を考えているのかあんまり分からなかった。
でもアガレスさんと契約する時に心配してくれた。死ぬな、って言ってくれた。
ラースに左腕を喰われた時も優しく包み込んでくれた。
きっとその頃にはすでにアレイさんが特別だったんだ。
セフィラと戦闘したねえちゃんが消えた時も、ずっと傍で支えてくれた。震えるほど怖かった時も喪失感で消えそうになってしまった時も。
フラッシュバックに遭ってもアレイさんが名前を呼んでくれるだけで現実世界に帰ってこられた。
それはアレイさんがおれの新しい世界の象徴だから。
他に代わりなんていない。
傍にいて欲しいと思った。ねえちゃんの隣にいる自分の傍にずっといて欲しかった。
その時はまだ傍にいて欲しいというばかりで、自分がどうしようとも思っていなかった。
でも、今は違う。
半年以上離れて、再会した瞬間に気づいた。
――アレイさんから『傍にいて欲しい』と言われたい
初めての感情だった。
自分が想うように、アレイさんにも想って欲しい。
アレイさんがその優しさゆえにたくさんの傷を心に刻んできたことに気づいた時、胸が苦しくなって、その苦しみに押し出されるように傍にいていいか、と聞いた。
イジワルで、でも底抜けに優しいあのヒトの隣で少しでも傷を癒したかった。望まれて傍にいたかった。もう二度と……離れたくなかった。
でもその時は邪魔が入ってしまって答えを聞けなかった。
ベアトリーチェさんはこの感情に『恋』という名前をつけてくれた。
もう一度聞けるだろうか。
でもそれはとても勇気のいる事だった。
だって、拒絶されてしまったらきっと自分はもう――