表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

黎明に託す願い事

 夜が明ける。

 東の空が明るさを増し、間をおかずして眩しいほどの陽光が辺りを照らす。

 まだ暗い時分に、街の中でも見晴らしのよい場所を探して、スメラはその様を見守っていた。

 なんでも、一年の始まりの日、その朝の日の出を拝んで願い事をすると、それが叶うらしい。

 一種、おまじないのようなもので、子供の頃には眠い目を擦りながら、家の窓から日の出を見ようとしたものだが、大抵は上手くいかず、明けてしまった空を見ては、がっくりと肩を落とした。

 眼下に広がる城下は、未だ多くの人々が夢の中だ。そんな静かな街並みを見下ろしながらスメラ自身、何をしているのだろうと自嘲の笑みをもらす。

 何か、これ、という願いがあったわけではないのだ。

 ただのきまぐれ。久しぶりのまとまった休暇に合わせて、昔出来なかった事をしてみたくなった。ただそれだけである。

「でも……。」

 もし、本当に願いが叶うなら。

 スメラは知らず手を組み、目を閉じる。

 目を閉じれば、辺りはとても静かで微かな風の音しか聞こえない。

 まるで、世界が消えてしまったようだ。そう思った。

 スメラはそろりと目を開けた。世界は変わらずそこにある。

 そして、今スメラがいるこの場所よりも、さらに一段高い場所にある、この国の王がおわす城を見上げた。

 もし、本当に願いが叶うなら。

「どうか、あの方に心休まるひとときを……」

 冷たい仮面を被るあの人へ、そのおもいが届くようにと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ