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詩集 手をつないだら

キミの真ん中

作者: 小日向冬子

熱が出たのは

何年かぶりで


キミの帰りを待つこともできず

くたりと布団に横たわった


遠くに聞こえる

ドアの音


近付いてくる

外界の気配


薄ぼんやりとした意識の中に

柔らかなキミの声がする


「どんな感じ? ごはん食べた?」


のどが痛い、とかなんとか

ムニャムニャ答えた気がするが


すぐさま曖昧な意識の底に

引きずり込まれた秋の夜



一夜明け

気だるい体を引きずって

ふらふら向かった台所


朝の光を浴びながら

慣れない手つきで猫にエサやる

キミの背中は寂しげで


洗いかごを見てみれば

昨夜の食器と

ビールの空き缶


キミは振り向き

目が覚めた?

何か飲む?

お腹すいてたら好きなの食べなよって


冷蔵庫の中を見てみれば

よりどりみどりのコンビニスイーツ


腫れた喉に

つるんと滑り込む超絶プリン

カラメルの甘さがじんわり染みわたる


食欲あるなら大丈夫だね

ああ、よかったって

そう言ってキミは

しばらく黙ったそのあとで


君が元気じゃないとさ

僕、なんだかしょぼんとしちゃってね


ゆうべだって

テレビ見ながらビール飲んでたはずなのにさ

どんな内容だったのか

全然覚えてないや


そう言って

泣きそうに笑ったんだ


なんで? と尋ねたら

キミはちょっと困った顔で


よくわかんないけどさ

いっぱい話したいことあったのになあ

とか思ってた



そうなんだね


一日の仕事を終えて

なんでもないことを語り合い

どうでもいいことで笑い合う

あたりまえの日常が


キミの真ん中には

あるんだね



わかったよ

早く元気になるからさ

いつでも元気でいるからさ


今日も明日も明後日も

なんでもないことを語り合い

どうでもいいことで笑い合いながら


あたりまえの毎日を

たくさん重ねて生きて行こう

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― 新着の感想 ―
[一言] 今のあたりまえを必死で保とうとしている行いは、一番尊いものなのでしょう。
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