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第7話:初クエスト・下

(どうやらさっき倒した1匹は死ぬ間際に仲間に何か伝えたようだな。死ぬ間際に仲間を呼ぶなんて聞いてないぞと言いたいとこだが、今はそんな場合ではないか)


 2人の方を見ると立て続けの状況に気持ちが追いついていないのか困惑の表情を浮かべて固まっていた。


(ここで2人を守りながら奴らと戦うのは得策ではないな、シュリにまた怒られるだろうが仕方ない)


「俺が奴らを惹き付ける、その間に2人は気持ちを落ち着けて体勢を整えるんだ!」


 2人に告げると同時にジャイアントビーの群れへ駆け出し、群れの中央に陣取れば奴らの注意は俺に向くはずと考え縦横無尽に叩っ斬りながら歩を進め目的の位置に辿り着いた。すぐにシュリ達を確認してみるとまだへたり込んだままだったがジャイアントビーは1匹も彼女達の方へ向かっていなかったので1つの目的は達成できたことに俺は胸を撫で下ろした。次はこいつらを全滅させなければならなかったが、どんな攻撃をしてくるか当然俺には分からないのでしばらくの間は回避に専念し出方を見極めようと考えた。

 ほどなくしてジャイアントビーの攻撃手段はロウオオカミよりは速いスピードで直進してきて体当たりか針による突き刺しの2つしかないことが分かり、以降は直進してきたとこを左右にステップで回避と同時に斬り殺すというパターンで着実に数を減らしていく。

 さすがに数を減らしていくとそれなりに考えるのか数匹による時間差や同時攻撃といった感じで攻めてきて無傷ではいられなくなるが、ほとんどかすり傷ばかりで動きに弊害をきたす事も無く殲滅を完遂した。

 呼吸を整えてから2人の方を向くと2人は起こった事が信じられないのか呆然とした顔のまま立ち竦んでおり、俺はできるだけ明るく2人に手招きをして呼び寄せた。声をかけられ我に返った2人は駆け寄ってきて、俺はシュリにビンタされた。


「バカっ! 無茶しちゃダメだってさっき・・言った・ばかりなのに・・あんな事・・・」


 嗚咽をあげながら俺の胸をポカポカ叩いてるシュリを見て、怒られるかとは考えたがまさか泣かれるとは思わず何故?と困惑してしまう。


「シュリちゃんが心配するのは当然だよ。ジャイアントビーが弱いってのは戦闘経験がある冒険者が1対1で対峙した場合であって、あの数の群れに出会ったら5~6人のパーティーでも全滅する可能性があるって話なんだから」


 カイムは宥めるようにシュリの肩に手を置き理由を述べたが、「でも、シュリちゃんを守ってくれてありがとう」と俺にだけ聞こえるように小声でお礼を言ってきた。

 その後シュリの気持ちが落ち着くまで俺は黙って彼女の肩を抱き、カイムは討伐証拠と素材を売る目的の為にジャイアントビーの針を回収していく。


「シュリちゃん落ち着いた?」

「・・・うん、テツヤくんもごめん。私全然役に立ってなかったね」

「初の実戦クエストで予想外の事が立て続けに起こったんだ、怪我が無かっただけ儲けもんだよ」

「でもテツヤくんはまったく慌てないで対処して、1人だけ怪我しちゃったじゃない」


 そっと俺から離れたが、シュリはまだ俯いたままだった。


(俺は慣れてるし初めての実戦の中予想外のことが起きたにしては2人とも無事だったのだから気にし過ぎるのもなぁ)


「カイム採取は終わったか?」

「うん、全部回収したよ」

「とりあえずこれでクエスト終了だな、ギルドへ報告に戻ろう。今回についての感想や反省はその後に話そう」

「またいつモンスターが出るか分からないし、行こうシュリちゃん」


 シュリは無言だったが頷いたのが確認できたので、俺達は街へ帰路につく。


 クエストはまぁ成功したと言っていいはずなのだが、みんなが終始無言だった為まるで失敗したような状態でギルドにたどり着いた。


「それじゃ僕、報告してくるから」


 カイムがクエスト報告のため受付に行き俺とシュリが2人だけになると、突然シュリが顔を上げて俺をじっと見てくる。


「テツヤくん、今日のことについて話があるから後で私の部屋に来てくれる?」

「今話したってことはカイムには内緒か?」

「うん、察しが早くて助かるかな」


(今日の事についてということは自分が役に立たなかったのではという気持ちに思うとこがあるのだろう、愚痴って気持ちが晴れるならそれは良いことだ)


「分かった、俺としてはこの後みんなでクエスト成功夕食パーティーをしたいから夜就寝前にシュリの部屋に行くよ」

「ありがとう。・・・それにしてもテツヤくん成功パーティーなんて考えてたの?」

「パーティーと言っても夕食を3人で飲んだり食べたりしてバカ騒ぎするだけさ」

「ふふ・・・それは楽しい夕食になりそうだね♪」


 シュリと夕食について話し合っているとカイムが戻ってきた。


「・・? 何だか楽しそうだけど、どうしたの?」

「おかえりカイム、テツヤくんと夕食は3人でバカ騒ぎしようって話してたの」

「へぇ~、それは楽しみだよ。じゃあ、クエストの報酬を分けようか。討伐クエスト千シリン・採取クエスト五百シリン、素材の買取でロウオオカミの牙1個五十シリンで計三百シリン・ジャイアントビーの針1個四十五シリンで計四百五十シリンとなって合計二千二百五十シリン。1人当たり七百五十シリンだよ」

「森に行く前に聞いたシュリ達が利用してる宿だと、食事付き一泊三百十シリンだから二日分の稼ぎか。簡単なクエって言ってたからこんなものか?」

「Fランククエだからね、でも私達が受けていたお手伝い系クエだと一日分の稼ぎしかなかったからすごい進歩だよ」

「なるほど、稼ぐ為にはランクを上げろってことだな」

「もしくはダンジョンで一攫千金かな」

「その当たりは追々考えるとして、ちょうどいい時間だし夕食に行こう」

「宿の1階が酒場だし、そこにしましょう」


 俺達はまっすぐ酒場に向かい長時間飲み食いを続け、カイムが酔い潰れたのを皮切りにお開きとなる。

 シュリ達と同じ宿を取り、部屋で一息ついた後約束通りシュリの部屋に向かった。


コンコン


「俺だけど」

「鍵はかけてないから入ってきて」


 返事があったので室内に入ると、シュリは寝間着姿でベットに腰掛けていたので俺は隣に腰掛けた。


「それで話って?」


 さっそく本題を切り出すと、シュリはおもむろに俺の目の前に立ち上がった。


「・・・お詫びかな」


 そう言ってシュリは寝間着を脱ぎ、俺の目の前に恥ずかしそうに下着姿で立っていた。

 その姿はルーシアとはまた違った発展途上のスレンダー美少女といった感じで、経験していなければすぐにでも理性を失くすだろうと思う程とても魅力的だった。


「どういうつもりだ?」


 俺は出来るだけ平静を装いつつ言葉を発すると、シュリは俺の首に手を回してきた。


「こういうつもり。・・・・・それとも、私に魅力無い?」

「そんなことは!」

「だったら」

「しかし、君のその魅力はお詫びという形で簡単に受け入れてしまう程安いものじゃない」


 そう告げて俺は首に回されていた彼女の腕を外した。


「テツヤくん?」

「君がお詫びではなく心から愛して俺を誘ってくれたその時は、俺は喜んで受け入れるよ。だから今回はここまで」


 俺はシュリの額にキスをして勿体無いと傷つけてはいけないという思いに葛藤しながら、頬を赤く染めて俺を見つめながら立ち尽くしているシュリを残して部屋から出ていった。


通貨の単位を決め忘れていたので、今回「シリン」に決めました。

石貨1枚=1シリン


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