第56話:行動開始
「これは一体?」
初代は目が覚めて最初に見た-つい先程まで敵同士と言ってもいい相手の女性達と孫娘が談笑している-光景が不思議で仕方なかった。
「おっ、爺さん気が付いたか」
「お主・・・・」
「ん? どうしたんだ、そんな困惑した顔して」
「いや・・あれは・・・・」
「あぁ、すっかり意気投合したようでずっと楽しそうに話してるよ。お蔭で俺達男性陣が夜食を作る羽目になったけどな」
「テツヤ~、夜食まだ~?」
「はいはーい、今持っていくよ! 起きたんなら爺さんも来なよ」
初代を座らせ夜食をテーブルに置いたとたん待ってましたとばかりに皆食べ始め、一人困惑していた初代もパルティに促され少しずつ手をつけ始める。その後食事を終え一服してから話をまとめる為に俺達の状況・パルティの状況・初代の状況などをポツポツと話し合い、話を終えた時初代は何かを考えるように目を瞑り黙ってしまった。緊迫した雰囲気というわけでは無かったが誰も声を出すことができず、しばらく続くかと思われた沈黙の時間も耐えられなくなったパルティがそれを打ち消す。
「お爺ちゃん、ごめんなさい!」
「ん? どうして謝る?」
「だって、私が勝手な事をしたせいで『ルザートゥス』の名に傷が付いたんだよ」
「そんな事お前が気にする必要は無いんじゃよ。もともと儂が引退した時点でその名は捨てておるし、現役の時だって名の価値には全く拘っていなかったしの。儂としてはこの経験を元に暗殺稼業など諦めてくれる方が嬉しいんじゃが」
「お爺ちゃん・・・・」
「あぁすまないがその辺りの話は身内だけの時にじっくりやってくれ、それより爺さんに聞きたい事があるんだが」
「なんじゃ」
「まずは確認だ、俺達に対する依頼が反故になった事で爺さんが俺達を殺すことは無くなったと考えていいんだよな?」
「うむ」
「それじゃ次に、爺さんに依頼した奴がすぐに別の暗殺者に依頼して俺達を殺そうとするかどうか?」
「それは彼奴がどう判断したかによるかの」
「判断?」
「そうじゃ。判断の1つとして儂程の者が敗れたのだから生半可な奴を刺客にしても返り討ちにあうだけだし、刺客増やせば自分に繋がる可能性も出て来ると考え狙うのを控える」
「・・・・他には」
「もう1つは、噂は凄くても所詮は儂の力は過去のものと考えすぐにでも現役の暗殺者を刺客として仕向ける」
「そいつがどっちを選んだとしても俺達からは何もできないな、そうなると現状はいくら考えても無駄ってことか。・・・・まてよ、爺さんは依頼人を知ってるよな? そいつが誰か教えてもらえばいいんじゃないか」
「すまんがそれはできんよ。裏稼業では依頼人の事を誰にも話さないというのが暗黙の了解でな、いくら引退しておるとはいえこれを破るわけにはいかん」
「そっか、まぁそこまで拘る必要は無いか。来たら来たで相手をすればいいだけだ。さすがに爺さんみたいな奴がゴロゴロしているとは思えないしな」
「お主達には迷惑をかけたからの。儂のとこにも多少は情報が入ってくるから、何か分かったら伝えよう」
「それは助かる、それで爺さん達はこれからどうするんだ?」
「長居する理由も無いからの、早朝にでも街へ行って馬車で帰ろうと思う。のう、パルティ」
「・・・・ごめん、お爺ちゃん! 私もう少しここに残るから」
「「えっ!?」」
予想外の言葉に俺も初代も驚き、一体どういう事だという目で女性陣を見た。
「私シエル姉とポアラ姉の事すっごく好きになっちゃったの、一人っ子だったから甘えられる兄姉とか欲しかったし2人も私の事気に入ったって言ってくれたからもう少しここ居たいなって思って」
パルティの言いた事は分からないでもなかったのか初代は強く反対する事もできないが、心配な為困った顔をして俺を見てくる。初代としては自分では反対しにくいが俺が反対してくれればいいという感じなのだろうが、俺の方もシエルとポアラから物凄い目で見られている為反対した日にはどんな酷い目に合わされるか分かったもんじゃなかった。ゴードンは割を食いたく無かった為早々に顔をそらし何も見ていませんという態度を取っていたので、結局誰も反対する事ができず俺達が折れることになる。
「すまんのまた孫娘が迷惑をかけるようで」
「いや俺も反対できなかったし、爺さんが謝ることじゃないよ。こうなった以上何が何でも守り通して無事に爺さんの元に帰すから。まぁ彼女の実力だったらそこまで気を張る必要は無いと思うが」
「儂もそう思うが万が一という事もありうる、なのでよろしく頼む」
「あぁ」
「パルティ、婆さんには儂から話しておくが王都にきたら顔を出しなさい」
「は~い!」
よっぽど嬉しかったのか女性陣ははしゃぎながら2階へ上がっていき、俺達はため息をつきながらしばらく話をして床につく。朝方街の乗合馬車のとこで爺さんを見送った後4人で街の東側へ潜入し易そうな場所を探しながら散策していると、この街に来る時に一緒だった冒険者達と偶然会ったので話を兼ねて少し早い昼食を近くの食事処で取ることなった。
「久しぶりって程じゃないけど元気にやってるか? たしか領主の屋敷で警備の仕事だったよな?」
「見ての通り皆元気だよ、警備といっても誰かが攻めてくるわけでもないから暇な方だな。ただ待遇が悪くてな、俺達が最初に依頼を聞いた時と報酬とかが違うんだよ」
「そうそう、だけどそれでも他の仕事より割が良いのはたしかだし下手に文句言って辞めさせられたら困るから仕方なくその条件でやってるって感じだな」
「君の方は仲間の女性が1人増えてるようで羨ましい限りだよ」
「ホントにそう思うか? 発言力は女性陣が強いから振り回されるだけだぞ」
「そりゃ勘弁して欲しいなぁ」
ワハハと笑いながら男達で話しているとシエルが横から小突いてきて小声で屋敷の中とか聞けと言ってくる。頷き今日はどこかのお偉いさんが屋敷に来るから俺達みたいな雇われ組の警備は休みという話を聞いていたので軽くお酒を出しながらそれとなく屋敷の構図や警備網を聞き出し、屋敷の奥の方に関係者以外入れない場所があり時々その方向から男女のうめき声が聞こえてきたりするという話も聞くことができた。しばらく話をしてから陽気な気分の冒険者達と別れ、先程の話をまとめながら潜入&脱出経路の捜索とそれに必要な買い出しを済ませ村へ戻る。
その日の真夜中、皆が寝静まったのを見計らい俺達4人は屋敷へと向かった。




