第5話:パーティー結成
ボードを確認したところFランクの依頼は9割方お手伝い系や採取系で残り1割が討伐系だった。
(Fランクは初心者だから危険が少ない依頼が多いのか?でも採取も外に行くから危険が無い訳ではないか)
あれこれ考えながらボードと睨めっこしていると後ろから肩を叩かれ、振り向いた先には俺と同じくらいの年齢と思われる男女が立っていた。
「ちょっといいかな?」
見た目爽やか系男子が声を掛けたので依頼書が見たかったのかと考え、俺は「どうぞ」と席を譲り隣に移動して他の依頼を探しだした。
「いやそうじゃなくて君に用があるんだ」
(Fランクボードで依頼を探してる俺にどんな用があるのだろうか?)
少し疑問に感じるが話だけでもを聞いてみるか。
「俺に何のようだ?」
「君さっき受付でギルド登録していたよね?」
「? あぁ、さっき登録したばかりだが」
「やっぱりそうか、よしパーティーを組もう!」
(登録したばかりでFランクのヒヨッコ(?)である俺にいきなり何を言ってるんだこの男は?)
ますます疑問に思い男を訝しい目で見た。
「こらっバカイム! ちゃんと説明しないから彼驚いてるじゃない」
「ごめんシュリちゃん、でも早くパーティー組んでクエストしたくて」
隣にいたポニテの可愛らしい女の子に頭を叩かれながら男が謝っていた。
(・・・イチャつくなら他所でやってくれ)
「いきなりで驚いたと思うけど、私の方から詳しい話をしても良いかな?」
「はぁ~」
「えっとね私達も7日前にギルド登録したばかりで、この一週間はお手伝い系の仕事を受けて生活費を稼いでいたの。それでそろそろ採取や討伐系を受けてみようかという話をしたのだけど、2人だけだと心許無いし実戦経験もほとんど無いから上のランクの人にはパーティー断られるのよ。そこで同ランクの君をパーティーに誘ってみたってわけ、ダメかな?」
「なるほど、ソロよりパーティーの方が効率良さそうだしOKだ」
「ほんと! ありがとう。私はシュリ=ロンドベル」
「ぼ、僕はカイム=クランドールです」
彼女達が手を差し出してきたので俺も手を出し握手を交わした。
「俺はテツヤ=カミナシ、よろしくシュリ・カイム」
「それじゃパーティーも無事組めて、自己紹介も済んだ事だしクエストでも探しましょう」
「シュリちゃん、僕このクエストが良いんだけど」
「どれどれ、ジャイアントビー討伐ねぇ。集団で動いているから探し回る手間は省けるけど」
「そうだよ。それに集団って言っても3~4匹程らしいし、こっちも3人いるんだから」
「う~ん、テツヤくんはどう思う?」
「俺? 俺はこの街に来たばかりで周辺がいまいち分からんから任せるよ」
「そうなの? ・・・・・よし! 私達にとって初パーティークエだから無難にいきましょう」
「じゃ僕受付で申請してくるから」
「待ってカイム、クエストは同時に2つまで受けられるからジャイントビーがいる森で出来る採取の依頼も一緒に受けましょ」
「あの森だと・・・・このホワイトキノコの採取でどうかな?」
「ホワイトキノコならすぐに見つかるしそれにしましょ」
「僕行ってくるよ」
カイムが受付に申請に行ってしまいシュリと2人っきりになって少し手持ち無沙汰になってしまった。
(何か話した方がいいのか? しかしこの世界に来てまもないから話題が何にも無いんだよなぁ、とりあえずパッと目についたもので話を進めるか)
「シュリ達は生活費削って装備とか揃えたのか?」
「ううん、私達の村に元冒険者の人が居てもう使わないからってこの装備貰ったの。今のとこ生活費稼ぐだけでいっぱいいっぱいだから新品買うのはちょっとね」
「なるほどなぁ。まっ、これからバンバン依頼こなして稼げばいいんじゃないか」
「だね、もう少し実戦を経験したらダンジョンに潜ってみるつもりだし」
「ダンジョン? じゃあ、シュリ達も中央大陸に行くのか?」
「えっ!? もしかして塔の事言ってる? いやだなぁ、私達の力じゃ中央大陸の塔なんてかなり先だよ」
「でも少ししたらダンジョンに潜るって・・・」
「私達で行けるダンジョンって行ったら近辺にあるミニダンジョンの事だよ」
「ミニダンジョン?」
(ここにきてまた初めての単語だ、ダンジョンってそんなにいっぱいあるもんなのか?)
「あれ知らない? ここ十数年前から世界中にダンジョンが出現し始めたんだよ。といっても10~20階層くらいだからミニダンジョンって言われてるけど」
「そんなにダンジョンが出現してたら世界中ダンジョンで埋め尽くされないか?」
「そうでもないよ。1つの国に2~3個以上は出現しなくて、最下層のボスを倒した後いつの間にかミニダンジョンは消滅するそうだし」
「そりゃまたご都合的なダンジョンだなぁ」
「まぁね、でも稀にレアアイテムとか出たりするそうだから初心者~中堅前の冒険者にとっては一攫千金を狙うには良い場所なの」
シュリと話しているうちにカイムが受付から戻ってきた。
「ただいま、申請は受理されたよ」
「おかえり、では行きましょうか」
「その前にちょっと聞きたいのだが」
「何? 何でも聞いていいよ」
「2人は恋人同士なのか?」
「やっぱりそう見え・ぐふっ!」
カイムが肯定しようとした時シュリが脇腹に肘鉄を喰らわせていた。
「はぁ~、それいろんな人に聞かれるけどこいつとは幼馴染以上でも以下でもないわ!」
「う、うん」
シュリは心底うんざりした顔ではっきり答え、カイムは酷く残念な顔をしていた。
(なるほどカイムはシュリに好意を持ってるが、今のとこ全く脈無しといったところか)
「ほらくだらない事言ってないで行くわよ!」
「待ってよシュリちゃん」
少し不機嫌な顔して外に出て行くシュリに慌てて付いて行くカイムを見て、似たような関係の元の世界の友人達を思い出し微笑ましくも寂しい気持ちを感じながら2人の後を追いかけた。