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第35話:爪痕、そして・・・

 賊が消えてしまい追うのは難しいと判断し、俺達は将軍達の治療に取り掛かる。ビキニアーマーの少女の攻撃を受けた将軍達は重傷ではあるが命に別状は無さそうだが、グレンガルの攻撃を受けた将軍は既に事切れていた。まもなくして後続の隊長達が到着したので残り治療は任せ、レティーナと王はずっと何やら話していたので俺達3人は1度ギルドに報告に戻ることにした。


「結局賊に逃げられちゃったね」

「王都は甚大な被害、それに比べて向こうの被害はほとんど無く目的を達成したようだからなぁ。完全にこっちの負けだ」

「? どうして目的が達成してたって分かるの?」

「目的が達成していないならあの時点で撤退する理由が思い浮かばい」

「僕達が来たから分が悪いと思ったとかは?」

「それは無い。将軍の実際の強さがどの位かは知らないが、それでもこの国のトップの精鋭には違いないだろう。そんな相手を一瞬で倒す奴等がたった4人しかも1人は王女が現れただけで分が悪いと思うか」

「たしかにそうだね」

「それより2人は『破滅の紡ぎ手』って知ってるか?」

「『破滅の紡ぎ手』? ううん、聞いた事ない」

「僕も知らない、それがどうかした?」

「フルフェイスの奴が自分達の事をそう言ってたんだ」

「ふ~ん、となるとチームもくしくは組織の名前ってとこなのかな」


 3人で今回の事を話しながら城を出ると外はまだまだ慌しい感じではあったが、先程までの緊迫感は少なからず薄れていた。ギルドの前に冒険者とおぼしき人が多数ざわついていたので話を聞いてみると、明日からギルドから街の復興支援という依頼が追加され緊急以外の今までの依頼は一時凍結になるという話で詳しい支援活動の内訳は明日随時張り出される依頼で確認してくれとのことだ。

 ギルドは今から街の被害状況など詳しい情報を纏めるらしく、入口をそっと開けて見てみるとかなり慌ただしい状況で何かを聞ける状態ではなかった。


(ここに居ても邪魔になるだけだな、急ぐ程でもないし今日のとこは帰るか)


 いつもの宿屋に向かうと外まで長蛇の列が出来ており、何事かと覗いてみたら1階の食堂が野戦病院のような状態となっていた。あきらかに人手が足りてないので俺達も治療の手伝いを始め魔法を使って次々に治療していくが、どこからか話を聞いたのか次々に負傷者が運び込まれてきて一段落した時にはすっかり陽は沈み魔力もほぼ使い切り疲労困憊の為夕食も取らず部屋に戻り死んだように眠りついた。

 お昼になろうかという時間に目覚めまだ少し重い身体を起こして1階に下りると多くの人で賑わっており、早めの昼食を軽く済ませてから3人でギルドへ向かう。ギルドは冒険者で溢れておりミーニャさんに昨日の城での出来事を話、ギルドの状況を詳しく聞いて俺達もさっそく復興依頼を受けることにした。

 宿→ギルド→依頼→ギルド→宿という日常を繰り返しニ週間経過する頃には少しずつ街に活気が戻ってきていた。そんなある日依頼ボードの1つの緊急依頼が目に止まるが、依頼内容は[馬車の荷物の護衛]というありふれたものだった。


(荷物の護衛なんて珍しくもないのに、なんで緊急依頼なんだ?)


 ギルド職員に疑問をぶつけてみると、この前の魔物襲撃で馬車が破壊されてしまい今の今まで修理に時間がかかり納期が間近となり、それを納品しないとその商人が破産してしまうという理由だった。


(荷物の護衛にはそこまで興味ないが、目的の場所には気持ちをそそられるなぁ)


 依頼書に書かれている目的地は東の隣国の王都で、ここから片道でも一ヶ月以上かかる距離である。


(定員残り1人ってのも残り物には福がある的な感じでお得感あるし。それになにより、ここを旅立つキッカケにはなるか)


 さっそくいつもの復興依頼と一緒にこの緊急依頼を受理してもらい護衛の依頼主に会いに行った。依頼主の話では出発は明後日の明け方という事なので、今日中に復興依頼をこなしながら街中でお世話になった人達に挨拶に行くことにする。

 つつがなく依頼と挨拶回りを済ませ、日が暮れる前に城へ向かいこの前と同じようにディオラの名前を借りて城内へ入りルーシアの部屋を目指した。


「よっ!」

「テツヤ様(さん)!」

「おっ、レティーナ王女も居たかちょうど良かった」

「いつも突然ですが、今日はどうされたのですか?」


 ルーシアが嬉しそうに微笑みながら訊ねてくる。


「あぁ、今日はお別れを言いに来たんだ」

「・・・・えっ?」

「護衛依頼を受けて隣国まで行くんだ」

「あ、あぁ。隣国でしたら2ヶ月程留守にするということですね?」

「いや、それはあくまでキッカケでそのまま世界中を見て回ろうかと考えてる」

「そんな・・・・」

「いつかは元の世界に帰る為にここに戻ってくるだろうけど、それがいつかは正直分からないし無事かどうかも。だから今日来たんだ」

「・・・・分かりました、それがテツヤ様の意思ならば私はそれを尊重致します」

「ありがとう」

「でしたらテツヤさん、今日はいっぱいお話しましょうね♪」

「そうだなレティーナ王女、時間もまだまだいっぱいあるし」


 その後俺・ルーシア&レティーナ&ディオラの4人で俺の故郷の話や3人の昔話などで夜遅くまで盛り上がり、レティーナが眠くなってディオラが連れていくとルーシアが俺に抱き付いてきた。


「先程は妹の前でしたから強がりましたが、ホントはとても悲しくて寂しいのですからね」

「・・いきなりで悪いと思ってるよ」

「そう思うのでしたらあなたを忘れられないくらい抱きしめて下さい」


 お互いどちらともなく濃厚なキスを交わし、隅から隅まで念入りに愛してあげ、これでもかという程に激しく攻めた。

 日が昇る前に少し気だるい感じをなんとか奮い立たせ、横で眠っているルーシアの頭を起こさないように優しく撫でて誰にも見つからずに城を出た。宿に戻る頃には街はすっかり動き出し食堂も賑わっていた。ちょうどシュリとカイムが食事を取っているのが目に入ったので2人に近づく。


「おはよう、2人共」

「おはよう、テツヤくん(さん)」

「2人共、今日はどうするんだ?」

「いつも通り復興依頼を受けるつもりだけど、どうしたの?」

「良かったら今日は俺に付き合ってくれ、教えたい物があるんだ」

「? 別にいいけど」


 俺も軽く朝食を取り、3人で街の外の近く野原に来た。


「今日2人に教えたいのは、俺もつい最近覚えた気や魔力を使って高速移動する術だ」

「?」

「とりあえずやってみるから、2人はそこに立っていてくれ」


 5~6m程離れて向かい合って立ち、一瞬で俺は姿を消す。


「えっ!?」

「こっちこっち」


 俺は後ろから声をかけ、2人は俺の方を振り向いた。


「な、なにをどうやったの?」

「これがさっき言った気や魔力を使った高速移動術だ。瞬間的に移動する術だから『瞬動術』だな」

「『瞬動術』・・・・それを教えてくれるの!?」

「あぁ、これは2人に対してのお礼だから」

「凄いよテツヤくん! ねぇ、カイム」

「う、うん」


 シュリは驚きと興奮といった感じで、カイムは何か違和感を感じているようだ。とわいえ2人共修行は熱心に受け、日が暮れる頃には2~3mの短い距離で直線のみだが瞬動術が出来るようになっていた。修行を終え夕食を3人で取っているとカイムが疑問をぶつけてきた。


「テツヤさん、ほんとに今日はどうしたの、お礼とかちょっと様子が変だよ?」

「お礼もしくは置き土産だな、遅くなったけどお別れを言うのにはちょうどいいか」

「・・・どういう事?」

「明日隣国まで護衛依頼でここを発つ、そのまま世界中を見て回るつもりだから俺達のパーティーはここで解散だ」

「何それ! それなら私達も一緒に護衛依頼を受ける!」

「定員は残り1名でそこに俺が入った、2人が受けるのは無理だ」

「なんで、どうして、いきなりそんな事言われても・・」

「何の相談もなく決めた事は悪いと思ってる、だがこれを逃したら俺は世界を知る事無くこの国でずっと過ごしてしまんじゃないかと思うんだ・・・・キッカケが欲しかったのかもしれないな」

「テツヤさん、もともと僕達が頼んでパーティーに入ってもらったんだ。だから君がパーティーを離れると言うのを僕は止めようとは思わない。だけどこれだけは約束してくれないか」

「なんだ」

「いつの日かお互い無事な姿で再会すると」

「それがいつになるかは分からないが、約束しよう」


バン!


 シュリは勢いよく立ち上がって部屋に行ってしまった。


「怒ってるようだな」

「シュリちゃんの気持ちを考えたら当たり前だよ、とりあえず明日気持ちが落ち着いた頃に僕の方から言い聞かせておくから」

「世話をかけてしまうな」

「いいって、それより今日で最後なら飲むのに付き合ってくれよ」

「ふっ、仕方ないな」


 俺達は夜遅くまで飲み合い、いろんな事を話して賑わった。カイムが酔い潰れたので部屋まで運び、俺も自分の部屋に戻って荷物を纏める。


コンコン


 しばらく部屋で寛いでいると誰かがノックしてくる。


「開いてるよ」


 部屋に入ってきたのは目を赤くしたシュリだった。


「今、大丈夫?」


 頷くと扉の鍵を閉めて、俺の隣に座ってきた。


「夕方はごめんね、突然部屋に戻ったりして」

「いや、俺の方が悪かったし。シュリは大丈夫なのか?」

「部屋で泣いたら少しスッキリした、だけど・・・・」


 シュリは俺に抱き付いてくる。


「こんなイヤな感じのままでお別れするのは嫌だったから、ちゃんと素敵な思いで塗り替えて」


 そう言ってキスをしてきたので、俺もそれに応えるように抱きしめる。じっくり優しく身体中を愛してあげ何度もシュリは気をやったが俺は止めず、一晩中可愛がった。

 明け方隣で眠っているシュリを起こさないようにキスをして、部屋を出て東門へ向う。東門には既に準備を終えた馬車が待っており、商人に挨拶をしているうちに残りの護衛が来たので馬車は隣国へ向けて出発した。


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