第3話:旅立ち
少し気だるい感じで目覚め今までのことは全て夢だったのではという思いが湧いたが隣で眠っているルーシア王女の姿を見て現実だったかと嬉しくなり、辺りを確認すると空は白みがかっていたがまだテーブルに置いてあるカンテラが無いと暗く感じる程でベットの中でゴソゴソ動いているとルーシア王女も目覚めてしまった。
「お、おはようございます」
俺の顔を見て昨夜の事を思い出したのか恥ずかしそうに頬を染めて顔を逸してしまった。その仕草がとてもいじらしく&愛おしくお互いまだ裸だったこともあり俺の理性はすぐに瓦解し少しハッスルしてしまった・・・青春まっさかりの高校生だからしょうがないよな。
日が昇り2人とも(主に俺だけど)落ち着いたとこで扉がノックされて1人のメイドさんが入ってきた。一国家の王女と何処の誰かも分からない男が裸で居るのを発見したら大問題になりそうだが、このメイドさんは何も言うことなく部屋の換気を始め俺達に隣で風呂に入ってくるように促しベットシーツを片付けてしまった。それもそのはずこのメイドさんはディオラと言ってルーシア王女の専属メイドで俺が王女の部屋に居る事を知っている唯一の人なのだから。ディオラさんは所謂ドジっ娘メイドとは真逆の完璧メイド長みたいな人で、1つ1つの動作がキリッとしてスキが無くお堅い人物かと思えば優しく微笑み包み込んでくれるような母性も持ち合わせている。
「テツヤ様はこれからどうなさるのですか?」
お風呂と朝食を済ませ落ち着いたところでルーシア王女が切り出してきた。
「そうだな、すぐに帰れないようだから昨日聞いた塔でも見に行こうかと考えてる」
「中央大陸に行かれるのですか、それでしたら北へ街道に沿って進み街を3つ越えた先の港町から船で渡るのが最短でしたよねディオラ?」
「はい、ですがすぐに出発するより城下の冒険者ギルドに登録して少し依頼をこなしこの世界の生活に慣れてからの方がよろしいかと」
(ディオラさんの意見も最もだな、今は城にいて安全なだけで外にでてちゃんと生活できるか怪しいし)
「それじゃ城下町に向かうかな」
「お待ち下さい、ディオラお願いします」
「かしこまりました」
ルーシア王女に声を掛けられディオラさんが部屋から退出し30分程して荷物を持って戻ってきた。
「テツヤ様の衣装はこの世界では少々目立ちますのでこちらにお着替え下さい」
たしかに制服は目立つかと思いディオラさんから荷物を受け取り着替えてみた、着替えた後の見た目はRPGゲームの初期装備と言っていい旅人の服・革の靴そして背中にショートソードである。
「良くお似合いです、あとはこちらをお受け取り下さい」
ルーシア王女から巾着袋を受け取り中を見ると銀貨10枚入っていた。
「いいのか? 服を用意してもらっただけでなくお金まで」
「お気になさらず、むしろこの程度しか支援出来無く申し訳ありません」
「いや、何から何まで助かるよ・・・ありがとうルーシア王女」
お礼を言ったらルーシア王女は少し唇を尖らせた。
(はて、何か気に障る事言ったかなぁ?)
「・・・ルーシアで構いません」
「えっ?」
「ルーシアと呼び捨てで構いません! 私達は・えっと・その・・もうそういう仲ではないですか」
最後の方は恥ずかしいのか顔を赤らめて消え入りそうな声だったが聞き取ることができた。
(王女を呼び捨てにするのは気が引けるがあっちが良いと言ってるし気を悪くされるよりは・・)
「分かった、ありがとうルーシア」
「はい♪」
ルーシアは満面の笑みを浮かべて返事をした。
(よし、こんなに喜んで貰えるなら呼び捨てして良かった良かった)
その後貨幣ついて説明を受けた。貨幣は全世界共通で「石貨・銅貨・銀貨・金貨・白金貨」の5種類あり、価値的には「石貨100枚=銅貨1枚・銅貨100枚=銀貨1枚・銀貨100枚=金貨1枚・金貨100枚=白金貨1枚」となっている。
「さて準備も終わったし俺は行くよ、またいつか会えると良いなルーシア」
「はい、またお会いできる日を楽しみにしています。ディオラあとよろしくお願いします」
「かしこまりました、ルーシア様」
ルーシアに見送られディオラさんに付いていく様に部屋を出た。