第25話:出現した悪意
少し気だるい感じで目が覚めたが、横で可愛らしい寝息を立てているシュリを起こさないように頭を撫でてベットから出た。部屋を出たとこでカイムと会った。
「おはようテツヤさん、シュリちゃん・・居る?」
「・・・・あぁ」
「そっか、・・・・2人だけで少し話さないかい?」
「分かった」
お互い無言のまま1階の食堂へ行き、まだ朝早いからか人はまばらでかなりの席が空いており端の席に向かった。席に着いてからも無言が続き、少し居心地の悪さを感じる。
「・・まずは、シュリちゃんを受け入れてくれてありがとう」
「えっ?」
突然カイムが頭を下げて感謝を言ったことが全く理解できなかった。
「いや~、シュリちゃんに好きな人なんて出来るのかなぁって心配してたけど、思っていたよりかなり早く出来てホッとしてるよ」
「ちょっと待てカイム、いったい何を言ってるんだ?」
「何ってシュリちゃんがテツヤさんを好きになって、テツヤさんがシュリちゃんを受け入れてくれてありがとうって話しだよ」
「そうそこだ! どうして笑顔でそんな事が言える、お前シュリの事が好きだったんじゃないのか?」
「そういう事か~、もちろん好きだよ。でもこの好きは男女の好きではなく、姉弟の好きと言った方がいいかな」
カイムは注文していたドリンクで一息いれ話しを続ける。
「混乱してるようだから全て話すけど、シュリちゃんから冒険者になった理由とか聞いた?」
「あぁ、お互いの両親の関係とか理由は聞いてる」
「それなら話は早いかな。僕の両親は僕とシュリちゃんを分け隔てなく愛し育ててくれた、だからシュリちゃんが冒険者になると決めた時は凄く心配したけど理由があれでは反対する事は出来なかった」
「・・・・」
「そこで「世界を見て回りたい」という理由を僕に付けて、せめて一人立ちし信用出来る恋人ができるまで最低5年はシュリちゃんのお守役として同行しろって事になったんだ」
「カイムは同行に反対だったのか?」
「そりゃね家族としてシュリちゃんは好きだし心配もしたけど、そこまで過保護にする必要があるのかなって考えたさ。でもあの人が自分は大丈夫だからシュリちゃんを守ってあげてって言うから」
「あの人?」
カイムは胸元から何かを取り出し見せてくる、手の平の上にあったのは鎖に通された1つの指輪だった。
「あの人は僕の大切な女性であり、妻だよ」
「・・・・えっ? 妻? 奥さん? ・・カイム、結婚してたのか!?」
「うん。と言っても結婚は旅立つ前日に2人で挙げただけだから、周りからはまだ恋人としてしか見られてないかもしれないけど」
突然の既婚者宣言に開いた口ふさがらないとはまさにこの事だった。
「・・・その事、シュリは知っているのか?」
「いいや、相手の女性の事は幼馴染だから知ってるけどシュリちゃん恋愛事は疎かったから僕達が恋人同士ってのも多分気付いてない、余計な気を使わせるのもなんだし旅の間は黙ってるつもりだよ」
「そうか、とりあえずその事は俺もシュリには黙っていればいいんだな」
「そうしてもらえると助かるよ」
「それと、たしかにシュリの事は好きだが恋人かと聞かれたらそうだとすぐに答えられるか解らない関係だ。それにお互いこの先ずっと一緒にいられるかどうかも分からない」
「それでも構わないよ、お互い先は長いんだ離れることだってあるかもしれない。でも今はお互い好き同士だし、そばに居る時はテツヤさんは必ずシュリちゃんを守ってくれるだろ?」
「勿論だ」
「それが聞ければ今は僕から特に言う事は無いよ」
話は終わりとばかりにカイムは朝食の注文を始め、ちょうどその時シュリが2階から下りてきた。
「2人共早いねぇ、いつから起きてたの?」
「今起きたばかりで朝食を注文しようとしたとこだよ、ちょうど良いしシュリちゃんも注文したら?」
3人で軽めの朝食を終え、昨日の宝の鑑定と武器の調達の為武器屋に向かう。
「よう、おっちゃん元気か?」
「あぁ~ん!? って、テツヤじゃないか! どうした、この前剣買っていったばかりだろ」
カウンターに剣を置き、壊れた事と手に入れた武器の鑑定に来たことを伝える。
「お前なぁ、いくら普通の鉄剣とわ言え俺が作った物をたった3日でどうやったらこうなるんだよ」
ドワーフのおっちゃんは柄だけになった剣を眺めながら呆れている。
「まぁいい、剣の方は何か新しいのを見繕ってやる。先に鑑定を済ませるから武器をだせ」
「はいよ」
宝3点を置き、おっちゃんはルーペのような物を取り出して1つ1つ手に取って鑑定を始める。鑑定中は武器屋の中を見て回り、しばらくしておっちゃんが俺らを呼んだ。
「3点とも素材はミスリルだな。それぞれに特殊な処理がされており剣は風属性・槍は火属性が付与されておる。腕輪の方は解った事は1つだけで、お嬢ちゃん腕輪をつけて「盾よ」って言ってみな」
シュリは腕輪をつけ言われたようにやってみる。すると腕輪のつけた方に直径30cm程の光り輝く丸い盾のような物が出現した。
「これは!?」
「盾としか言えんな。一応腕輪に合わせてその盾も移動するし物理攻撃も防げてた、とりあえず見た目が特殊な普通の盾と思ってればよい。解除は「リリース」と言うだけだ」
(思っていたより使えそうな物だったみたいだな)
「それでどうする? 売るんだったらそれなりの価格をつけるが」
「いや、今の俺達には十分な武具になりそうだし鑑定だけでいい」
「そうか、まぁお前ら場合はその方が良いだろ。それとテツヤ次の剣はこれを使え、素材は鋼だから前のやつよりは重いが強度はある」
そう言って片手ブロードソードを手渡され、振ってみると少し重さはあったが特に問題はなかったので鑑定料と剣の代金を渡した。
「ありがとう、助かったよ」
「ダリオスはおるか~?」
入口から聞き覚えのある声がおっちゃんを呼びながら入ってきた。
「なんだミゲルか、どうした?」
「ちょいと鑑定を頼もうかと思っての」
「お前らもか」
「お前らも? おぉ~、お主らも来ておったのか」
「なんだ、お前ら知り合いだったのか」
「昨日ちょっとな」
話しながらもミゲル達は次々と昨日の宝をテーブルに置いていった。
「なかなかの量だな、少し時間がかかりそうだしどこかで時間を潰してきてくれないか」
「分かった、ではまた後で来るとしよう」
ミゲル達が帰ろうとしたので、俺達もおっちゃんにお礼を言い店を出た。
「お主らも鑑定に来てたということはさっそくギルドの依頼を始めているようじゃの」
「ギルドからの依頼?」
「なんじゃ聞いとらんのか、帰国途中のこの国の第3王女が今朝誘拐されたそうだ」
「誘拐!?」
「あぁ、街の人達にはまだ秘密にされているし警護もあるから兵士を全投入できん。そこでギルドから手の空いた信頼できる者に依頼という形で渡されておる」
「そんなことが」
「さすがに儂らも動かないわけにはいかんしの、では準備があるからここで」
ミゲル達と別れ、俺達もどうするか話し合う。
「誘拐ってなんか以前にもそんな話を聞かなかったっけ?」
「あったね、すぐに終息しちゃったけど」
「それでどうするの?」
「2人は一足早くギルドに行って詳しい話を聞いておいてくれ、俺は少しその話を知ってそうな人に会ってくる」
「分かった、それじゃギルドで待ってるね」
2人と別れ俺は王城へ急いで向かった。




