第13話:次なるステップへ
目が覚めた時には隣で寝ていたクレージュさんはもぬけの殻だった。
窓を開けると外はまだ夜が明けきっていなかったが、農家の人は朝が早いようで村の人達はすでに活動している。眠気覚ましにいつでも入っていいと言われていた温泉に浸かりに行き、向かう途中朝の支度をしていたクレージュさんとすれ違いざまに挨拶をすると頬を染めながら笑顔で返してくれた。
朝風呂を終えたところにクレージュさんが「朝食までまだ時間があるのでゆっくりしていて下さい」と言ってきたので暇潰しを兼ねて村を見て回る。
村を回りながら行き交う人達と挨拶を交わし、手伝いを兼ねて村の周りにある農園へ付いて行くことにした。この村での畑は俺のいた世界のように1つの畑を個人で運用するのではなく、それらをまとめて村で管理する1つの大きな農園と考え村人全員で運用し収入は村人に均等に配付するといった方法だった。
(元の世界だとこの方法では必ずサボる奴が出たが、この村では誰1人サボっている人がいないなぁ)
しばらくして誰にも気付かれないようにかなり辺りを警戒しながら農園を離れ森へ向かう人影を見かけ、その人影に何か引っかかるものを感じ出来る限り足音と気配を消しその人影を追う。思いの外簡単に人影を見つけたがその隣に別の人影があった。
(1人は昨日村長の隣で俺を睨んで立っていた男だが、もう1人は深めにフードを被っていて顔どころか性別する分からん・・・どうしたものか)
逡巡している間に2人の口論(?)が終わったようで別々の方向へ歩き出す。
(尾行を続けるとしたらとりわけ怪しいフードの方か・・)
尾行開始しようとしたが、武器すら持っていないことに気付き今回は仕方無く諦める。
農園に着くと朝食の為村の人達は家に帰り始めていたので俺も村長の家に戻ることにした。シュリとカイムもさすがに起きており和やかな朝食を済ませ、惜しまれつつ(特にクレージュさんに)も俺達は王都の帰路につく。
昼過ぎに王都に着きまっすぐギルドに向かって全ての換金を済ませて昼食を取ることにした。
「今回の報酬と素材換金の合計が7800シリン、1人2600シリンだよ」
「前回と合わせたら1人約3000シリン、カイムと2人だった時の1週間分の稼ぎを2日で超えたね」
「うん、僕もこの結果にはびっくりしてるんだ」
(予想以上の結果に2人ともかなり嬉しそうだな)
「それでこの後はどうするんだ、今までと同じようにクエストでもして過ごすか?」
「僕は少し武具を見て回ってから情報収集をする予定だよ」
「私はお手伝いクエの時に知り合った剣の師範を訪ねようかと考えてる、少しでも強くなりたいし」
「それじゃ俺も試した事があるから今日・明日・明後日の3日間を各自自由行動にしないか?」
「僕はそれで良いよ、シュリちゃんは?」
「私もそれで構わないわ」
「それでは4日目の朝に宿屋の1階に集合だ」
そう締めくくり俺達は昼食を済ませて各々目的の場所へ向かい、俺は目的の情報を得る為冒険者ギルドを訪れた。
「こんにちは、ミーニャさん」
「あらテツヤ君、話は聞いてるよ、すごく頑張ってるじゃない♪」
「話ですか?」
「えぇ、登録して僅か3日で多数のロウオオカミやジャイアントビーを討伐しハイコボルトの撃破でしょ、それとフィルド村の村長の娘さん達を救出っと」
「討伐と撃破は分かりますが、クレージュさん達を魔物から助けた事は報告してないと思いますけど?」
「ギルドにその村出身の人が居て、その人から聞いたの」
「なるほど、でも俺1人の力ではなくて仲間がいてくれたからだと思います」
「それもあるかもしれないけど、こんな短期間でハイコボルトまで倒したのはほぼ0なんだから」
「そんなに強い奴として記録されてるんですか?」
「もちろん! ハイコボルトは新人さんが6~7人でPT組んでも負ける程なのよ。だから今あなた達は期待の新人としてこの王都では有名になってきてるんだから」
(そこまで有名なるつもりはなかったがミーニャさんが喜んでくれてるしまぁいっか、とりあえず当初の目的を果たそう)
「ミーニャさんに聞きたいことがあるんですが、今大丈夫ですか?」
「もちろん、冒険者をサポートするのも受付兼アドバイザーの務め、何でも聞いて」
「どこか魔法を教えてくれるとこってありませんか?」
「魔法? テツヤ君魔法を覚えたいの?」
「はい」
「本格的に魔法を覚えたいなら魔法学院か魔法ギルドに行ったほうがいいけど、ここからかなり遠いし時間とお金が結構かかるよ」
「できれば3日間でできるとこがいいんですが」
「3日かぁ、う~ん・・・・・・・・・・・・・・」
(やっぱり3日で魔法覚えようなんて無理だったか)
「・・・・あっ、そういえば!」
「! 何か心当たりがあるんですか?」
「心当たりというか、最近王都の隅っこに魔導師が住み着いたって噂を聞いたことがあった気がして」
「魔導師ですか?」
「えぇ、この王都に魔法を教えているとこはないから、可能性があるとしたらその噂の魔導師くらいかなって」
「なるほど・・・」
「あくまで噂で、可能性があるかもしれないって話だからね」
「それでも他の可能性が無いならそこに行ってみます、ダメなら諦めるだけですから」
「ごめんね、何でも聞いてって言っておきながら噂程度の情報しか挙げられなくて」
「いえ、それでもずいぶん助かりました、ありがとうございますミーニャさん」
「お礼なんて、・・・魔法覚えられるといいね」
ミーニャさんの話を元に街の人達に聞き込みしながら噂の魔導師の家を目指した。




