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第二章 其の3

      ○●○●○●○●○●




 青海学園空手部。


 あらゆる大会を総ナメにしている、歴史と伝統がある空手部(睦月談)だ。


 まあ、女子部は人数的にもレベル的にも充実しているが、我ら男子部は人材不足。剣道から転向してきたおれや睦月が1年から主将と副主将をやらされ、個人戦(男子部員は全部で5人。おれと睦月以外は新入生で空手経験者は1人だけ)しか出ていないんだから肩身が狭いのだ。


 いつものように20人は入れる部室で着替え、道場に向かうと、ショートで小柄な女の子が中を覗いていた。


 こんな子いっけ? と思いながら靴を脱いで下駄箱に入れると、その女の子が声をかけてきた。


「……確か、どこかで会ってるよね……?」


 場所は思い出せないが、この笑顔には覚えがあった。


「はい。昨日の夜に助けてもらいました」


「ああ、あのときの子か。道理で記憶があると思った」


「知り合いか?」


「ちょっとだけな。転校生?」


「はい。3日前に引っ越してきました。だから、道がわからなくて迷っちゃって。本当にありがとうございました」


 まあ、あの辺は道がゴチャゴチャしてるからな、新参者には迷路と同じだろうよ。


「いいよ別に。あ、おれ、風間かざましのぶ。よろしくね」


「……お前も懲りないよな……」


 いい返そうとした瞬間、凄まじい殺気を感じた。


 反射的にその場から跳び退いた直後、黒いなにかが視界に入った。


 と、黒いなにか───いや、黒い道着を着た男が拳で地面を殴っていた。


 地面を殴ったにも関わらず、その男は直ぐに立ち上がり、なにやら鋭い目でおれを睨んだ。


「お兄ちゃん!」


「お兄ちゃん!」


 黒い道着を着た男の後ろで叫ぶ加奈美とショートカットの女の子。叫ぶ言葉は同じでも向けられた相手は違った。


 加奈美がおれに抱きつくが、今はこの男のことで精一杯。ちょっとでも油断したら死ぬぞ、おれ……。


「……誰だ、お前……」


篠原しのはら一樹かずき。今日転校してきた同級生だ。しかも横にいる奴をどうしたら忘れられるんだよ、お前は……」


 と、目の前の男ではなく道場から出てきた睦月が紹介してくれた。


 そういやきたな、うちのクラスに。どうでもいいから忘れてたよ。


綾子あやこに近づくなッ!」


「お兄ちゃんになにするのよっ!」


 どちらも自分の後ろに隠す。これは自分のものだと主張するかのように……。


「この幸せ者」


 これのどこが幸せなんだよ! 思いっきり不幸じゃねーか!


 畜生がっ! なんでおれの周りにはこんなのしかいないんだよ。


 ブラコンにロリコン。昨日はホモだし、今日はシスコンかよ。不幸にも限度があるぞ!


「お兄ちゃんどいて!」


「綾子、あいつは変態だぞ」


 おい、シスコン野郎。テメーに変態呼ばわりされる筋合いはねー! おれはまともだ。普通の青少年だ、こん畜生がァッ!


「お兄ちゃん、綾子ちゃんとはどういった関係なの?」


 後で聞いたところによると、同じクラスになったんだってよ。


「か、関係って、昨日、ケダモンに囲まれてるところを助けただけださ」


 チッ。こんなことなら昨日のうちに親しくなっておくんだった。幸せに慣れてないからチャンスに気がつかなかったぜ。


「今、変なこと考えたでしょう」


 冷たい視線がおれのハートを刺してくる。


「な、なにも考えてないって。誤解だよ、加奈美ちゃん……」


「ほんと、呆れるくらいウソが下手だよな、しのぶって……」


「傍観してないで助けろや! いや、助けてください睦月さま!」


「しょうがない。貸しにしておくぞ。加奈美ちゃんも一樹もストップ。でないと、美和みわ先生の鉄拳が飛ぶぞ」


 いって後ろを指す。


「とっとと入りなさい」


 暴力に屈するおれではないが、権力には弱いから屈する。逆らえば敵になるから……。


 皆も素直に従う。


 やっぱり、空手部辞めようかな……。




      ○●○●○●○●○●


読んでもらえて嬉しいです。

ありがとうございました。


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