第二章 其の2
短いです。スミマセン。
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「今日、転校生がくるってよ」
「女か?」
彼女がいない野郎どもが色めき立つ。
「残念。男だよ」
チッ。野郎かよ。
「転校生って、やっぱ軍関係者か?」
横でなにかの雑誌を読んでいる睦月に尋ねる。
こいつが住む自衛軍官舎は、帰らずの森を囲むように造られた4つの基地に勤める人や家族が住むところなのだ。
「多分そうじゃないか? 何日か前に補充されてきたから」
森を駆除するために、年何回か森へと入っているが、未だに森は消えていない。いったい何人犠牲になればいいのやら……。
「竜矢、転校生ってうちのクラスだけか?」
我がクラスの情報員。彼に調べられないものはない、らしいよ。
「いや、他のクラスもいるらしいぜ」
「じゃあ、沢山死んだんだな」
「ああ、沢山死んでるな」
「……ときに睦月くん。君は、さっきからなにを読んでいるのかね?」
「ビスケット・キングダムの歩き方って雑誌」
確か、関西の方にできた魔法と夢の国、だったっけ?
「……1度、聞きたかったんだが、お前、夏美ちゃんと、どんな関係なんだ?」
17歳と10歳が気軽に行ける場所じゃないだろう。
雑誌から目を離した睦月は、にっこり笑うと、また雑誌に目を向けた。
「……お、お前……」
まさか、10歳の女の子にアレやコレをしたんじゃ……。
「手を繋ぐまでだよ」
このギャカァァァァッ!
文句をいおうとしたら、我がクラスの担任で空手部(おれも睦月も空手部なのだ)の顧問でもある吉崎美和、27歳。永遠なる独身が入ってきてしまった。
おれがつけたあだ名は、ロボ美和。体が細く美人なのに、鬼のように強く機械のように冷徹で、おれをいぢめるからつけてやったのだ。
「そこで暗くしている忍ちゃん。朝なんだからもっと爽やかにしなさい」
この女、自分より弱い男は『ちゃん』づけで呼ぶ主義で、唯一ロボ美和から1本取った睦月だけが『くん』扱いなのだ。
「スミマセンね。最近不幸なもやんで」
「また浮気がバレたの?」
「うっせーよ、ロボ美───うごっ!」
チョークが額へと直撃する。
グゾッ! またロボ美和必殺の"ホワイトマグナム"を食らってしまった!
「そんなんだから妹にしかモテないのよ」
……ぢぐじょう! いつか絶対泣かせてやるぅぅっ……!
「さて。皆も知っているでしょうけど、転校生を紹介します。入って」
霞む視界に大男が入ってきた。
身長190㎝。見事なまでに鍛えられた肉体。醸し出す雰囲気は武の香り。くるな、我らが空手部に……ん? あいつ、どこかで見たような気がするぞ……?
「篠原一樹です」
「えー、一樹ちゃんは、おとうさんの仕事の関係で引っ越ししてきました。なので、この街のことは知りません。皆、一樹ちゃんに街の事情や学園のことを教えてあげてね」
『はぁ~~い』
ココは幼稚園か、ロボ美和に飼い慣らされた畜生どもがっ!
「じゃあ、睦月くん。お願いね」
睦月は2年D組の委員長。おれは裏委員長。そして、教壇に立っているのが黒幕だ。
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読んでもらえて嬉しいです。
ありがとうございました。




