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第一章 其の3

      ○●○●○●○●○●



 やっと見知ったところまで帰ってきた。


 いや、いつものことながら遠くまで走ったものだ。まさかフルマラソンをやっていたとは。自分の集中力(現実逃避ともいう)が怖いよ……。


「ふー。喉が乾いたな」


 なにか飲むかと自販機を探すと、公園の向かいにある酒屋を発見した。


 そこにするかと近くと、なにやら公園にたむろするケダモンが視界に入った。


 いつの時代になっても滅びない馬鹿ども。なにもこんなご時世に出てこなくてもいいのに……って、だから馬鹿っていうのか。納得───している場合ではない。絡まれてる女の子を助けねば。


「コラコラ、そこの若人たちよ、嫌がる女の子を無理やり誘おうなんてゲスのやることだよ。男ならいい寄られるくらいになりなさい」


 ……もっとも、実行しても邪魔されるんだけどな、おれの場合は……


「あぁあっ! なんだテメー?」


「邪魔なんだよ、あっち行ってろ!」


 鋭い目で睨んでくるが、加奈美かなみの嫉妬に狂った眼光に比べれば天使の眼差しである。


 ……ああ、あれは凶器だ……


「あ、すみません。助けてください」


 と、ケダモンに囲まれていた女の子が助けを求めてきた。


 ……気のせいかな? この娘、妙に落ち着いてません……?


 女の子の年の頃は、加奈美と同じか下って感じ。髪は短くてボーイッシュな雰囲気だが、その可憐さはなくなってはいない。加奈美にも負けない美少女である。


 ちょっとタイプかも。テヘ☆


「なに笑ってやがる! 殺すぞッ!」


「失礼した。つい本音が顔に出てしまった。で、だ。ここは平和的に話し合いで解決……は、無理だよね。その小さなオツムでは……」


 わかってはいるんだけど、せめて人間扱いしてやらないと可哀想じゃん。


「ケンカ売ってんのか、テメーッ!」


「死ぬまで泣かすぞッ!」


 ヤレヤレ。思った以上にオツムが小さいようだ。これならまだ原始人の方が賢いぞ。いやまあ、原始人についてそんなに詳しい訳じゃないけどねー。


「おれさ、弱い者イジメって嫌いなんだよね。あんたらだって強いヤツにイジメられんの嫌だろう?」


「っざけんなッ!」


 懇切丁寧な説得にも関わらず、馬鹿どもが襲いかかってきた。


 嫌になるくらいゆっくり。こんなの瞼を閉じてても避けられるぞ。


 右に左に避けるが、誰1人当てることができない。まったく、貴重な体力を無駄に消費してるよ。おれを含めてな……。


「まだやる?」


 開始して5分。馬鹿どもが息切れし、更に5分後には、地面に崩れ落ちてしまった。


「ったく。いい若い者がだらしない」


 おれ、17歳。まだまだ元気です!


 と、崩れ落ちた1人が立ち上がった───と思ったら、なんのことはない。逃げ出しただけであった。


 根性がないなと見送っていれば、残りも逃げ出してしまった。


 ……ウム。群れの習性ってやつだな……


 遠吠えを聞きながら自販機に移動した。


 さて。なににしようかな~? よし。エネルチャージXにするか。


「くぅ~~! この1杯がたまらんぜい!」


 などとおやじモードに入ってしまうおれであった。


「……あ、あの……」


 なにやら横から声がして振り向くと、女の子が……って、そういや助けたんだっけ。


「ごめんごめん。すっかり忘れてた。ケガとかなかった?」


「はい、大丈夫です。助けていただいてありがとうございました」


 なかなか笑顔がグーですな。


「いいよ。お礼なんて。おれが勝手にやったことだからさ」


 素っ気なくいってエネルチャージXを飲み干した。


 さて。喉も潤ったし、我が家まであと数㎞。加奈美の手料理が待っている。あんな妹でも料理の腕は最高なのだ。


「じゃーな。早く帰りなよ。本当のケダモンがくる前にな」


 女の子に別れをいって駆け出した。


「あ、あの───」


 後ろから声がかかるが、気にせず角を曲がった。


 駆けること数百m。前方からガタイのいい男が駆けてくるのが見えた。


「───綾子あやこぉおぉぉぉっ!!」


 突然の叫びに体が勝手に反応し、その場から塀に跳び退いた。


 なにか、加奈美の『お兄ちゃーん!』に似てたからさ……。


 男はおれなどいなかったように走り去って行った。


「……うん。見なかったことにしよう……」


 それが幸せに生きるコツである。




      ○●○●○●○●○●


読んでもらえて嬉しいです。

ありがとうございました。



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