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第七章 其の3

      ○●○●○●○●○●



 更に増えた蜘蛛型魔獣へとオリハルコンの弾丸を放った。


 見事命中して蜘蛛型魔獣が四散する。


 銃の才能がないおれでも2m先の標的を外す程下手ではない。


「死ねや、畜生どもがッ!」


 右手にオリハルコンの剣。左手にはMG-X1。超接近戦で勝負だ。


「さすがティンカーベル。しぶといもんだ」


 ネバネバ糸や鋭い爪を交わしながら必死に戦っているというのに、横転したトラックの上で高見の見物をする腐れ魔将。テメーは絶対に殺すッ!


 少しの隙を突いてトラックの燃料タンクへとオリハルコンの弾丸を発射。これからの幸運を前借りしたかのように大爆発を起こした。


「───クッ!」


 第6感が命じるままに後方に跳ぶと、今までいた場所に巨大斧が振り下ろされた。


 咄嗟にMG-X1を鎧男に振るうが、なんなく受け止められてしまった。


「ったく。ちょこまかと動くヤツだ」


「じっとしてられない性格なもんでな!」


 手榴弾を鎧男の隙に押し込み、一目散に逃げ出した。


 起こる爆発に構わずビルの中へと退避。弾倉を交換して入口へと向けた。


 入口が吹き飛び鎧男が入ってきた───瞬間に1発。更に1発。けど、全然当たってくれなかった……。


 と、鎧男がなにか灰色っぽいものを放り投げてきた。


 なにかの攻撃と判断して退避したが、どうやら罠だったらしく鎧男が目の前まで迫られてしまった。


 鍛えられた反射神経が反応ししてくれ、MG-X1を犠牲におれを救ってくれた。


 直ぐに意識が追いついてくれ、MG-X1を投げつけ、オリハルコンの剣を一閃させた。


「非力だな───」


 あっさり受け止められ、逆に巨大斧で吹き飛ばされてしまった。


 強度あるプロテクターが弾丸と化し、壁を突き破って道路へと投げ出された。


 口から熱いものが噴き出す。体の感覚がなくなる。


 ───畜生ォッ! 動け、おれのバカ体だァァッ!


「そろそろ死ね」


 クソ! 降下部隊はなにしてんだよ! こんなときの部隊じゃねーかよ!


 ……って、無理か。蜘蛛型魔獣に邪魔されてんもんな~。やっぱり最後の手───



(───ダメッ!)



 ……叫ぶということはできるってことだな、聖魔の集束は……



(…………)



 ……ほんと、お前は素直だな……



(死なないって約束したじゃない! 生きるっていったじゃない! あたしはお兄ちゃんが大好きだから、生きてて欲しいからベルになったのよっ!)



 ……真砂美……



(お兄ちゃんを守るのはあたしよ! 愛してるのもあたしよ! それがあたしの特権。あたしが死なせない。あたしが守るのよっ!)



 体の奥底から光が溢れ出てくる。聖なる魔がおれの外へと飛び出そうと暴れまわっていた。



(お兄ちゃんを守るのは───)



「───あたしよォオォォッ!」


 真砂美が体から飛び出そうとする瞬間、加奈美の魂叫びが轟いた。


 ブゥオンとばかりに風を切り、超必殺の蹴りを鎧男に食らわした。


 アスファルトを吹き飛ばしながらビルへと激突。その威力を証明するかのようにビルが崩壊してしまった。


「そのくらいで死んでんじゃないわよ、グア・ライナス!」


 そんな声につられて横を見ると、冷気を纏う加奈美がいた。


 もうなにがなにやらわからない。と、突然浮遊感に襲われた。


「少し我慢してくださいね、忍先輩」


「……え、あ、綾子……?」


 な、なんだろうな、コレ? おれの目が壊れたのかな? なんか炎に包まれた綾子が見えるんだが……?



(……壊れてなんかいないよ。この子も加奈美もベルを継いだのよ……)



 心の奥底から嫉妬の炎がメラメラと伝わってくる。


 ……いやほんと、マジでカンベンしてください。あなたの思いはおれにも影響を与えるんだからさ……


「加奈美ちゃん!」


「ごめん。お兄ちゃんをお願い。この腐れ畜生だけは許せないの!」


 白く輝く聖魔が世界を凍てつかせる。


 いつもなら止めろと間に入るところだが、ここまでキレた加奈美を止めるなど北極の氷を溶かせといってるようなもの。逃げろ。それが今のおれにできる精一杯の情けだ……。


「すみません忍先輩。ちょっと揺れますね」


 いつもにこやかな綾子の表情が厳しくなった。


 知り合ってからの綾子の印象は変わってない。顔や雰囲気は穏やかで無害を感じさせるが、その秘めた思いは誰よりも熱い。下手したらあのバカ兄貴より直情かもしれない。


「フェリオル!」


 綾子の背中に炎の翼が生まれ、襲いくる蜘蛛型魔獣を一瞬で蒸発させた。


 ベ、ベルって、心の繋がりがものをいうんじゃなかったのかよ!? あの2人とこの2人を繋ぐ思いってなんなんだよ! あきらかに前任者より強力になってんじゃねーかよッ!!


「あたしは犠牲の上に生きたくありません。1人で生きたってうれしくないし、楽しくもありません。幸せだなんて思えません。皆で勝つ。そして、皆で幸せになるんですっ!」


 幸せになるんなら手段は問わない。利用できるものはなんだって利用する。


 それが綾子の武器であり、もっとも怖いところであった。


「まだまだ死んでんじゃないわよ、リュークス!」


「燃えてしまえ、バ・グゥードゥ!」


 巨大な氷柱が幾つものビルを崩壊させ、灼熱の炎が大地を融解させる。


 ……この2人は絶対敵にすまい。うん……

読んでもらえて嬉しいです。

ありがとうございました。


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