第一章 其の1
こんな感じで忍の一人称で進みます。
~~第一章~~
おれの妹は嫉妬深い。
それはもう怖いくらいに、悲しいくらいに、絶望的なくらいに嫉妬深いのだ。
しかも、その鋭さといったら監視衛星を凌ぎ、その威力は核ミサイルも真っ青。その被害といったら地縛霊ですらダッシュで逃げ出すほどだ。
……そんな妹が愛している気の毒は誰だって?
ふっ。おれだよ、おれ。兄であるおれなんだよ、こん畜生がァァッ!!
……ううっ。なんでおれなんだよぉ……
なぜだかわからないが、ハッキリと行動に出たのはおれが中1の春だ。
入学式も終わり、さあ帰るかと下駄箱を開くと、中になにやら可愛らしい手紙が入っていた。
なにコレ? と思い手紙を取り出して中から便箋を出すと、どこからどう見ても女の子の文字で、『好きです。付き合ってください』とか『体育館の裏で待ってます』とか書いてあった。
飛んだねッ!
舞ったねッ!
愛の女神に土下座して感謝したねッッ!
───我が人生に一片の悔いなし。
そういったヤツの気持ち、心からわかったぜっ!
だが、そんな幸せも長くは続かなかった。
天使に祝福されながら体育館の裏に行こうとしたら、その途中に小学生の妹が立っていた。
「誰かと待ち合わせ?」
……思い出しただけで身が凍るぜ、あの笑顔にはよ……
その冷たい瞳と、怖いほどの笑顔に危険を感じたおれは、持てる限りの演技力で誤魔化した。
だが、愛する妹さまは聞いちゃいない。手に持っていた出刃包丁でおれの学生服を斬り裂き、懐に大切にしまっていたラブレターを奪い取ってしまったのだ。
怖かった。
ああ、漏らしてしまうほど怖かったよ。
可愛い妹が、優しい妹が、鬼に見えたんだからな……。
おれしか知らないはずなのに。下駄箱から直接きたのに。なぜ、ここにいて、どうして的確に奪えるんだよ。女の勘は鋭いっていっても限度があるぞ、こん畜生がぁッ!
「あたしのお兄ちゃんをたぶらかす女狐がッ!」
と、おれの幸せを破り捨てたっけなぁ~~。
「ぶっ殺すッ!」
まったく、あの白魚のような手に握られた出刃包丁の輝き、今でも夢に出てくるよ……。
血の気が引いたおれは、暴れ狂う妹を押さえるのがやっとで、待ち合わせの場所まで行けなかったのだ。学年で1番の美少女だといわれる歌穂ちゃんからだったのにィィッ!
……ふっ。それでおれの"最初の恋"は終わったのさ……
それからってもの毎度毎度おれの恋を蹴りにやってくるんだよ、容赦なくな。
ううっ。彼女が欲しいよぉ~!
楽しいデートがしたいよぉ~~!
おれは、幸せになりたぁ~~~いっ!
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読んでもらえて本当に嬉しいです。
ありがとうございます。