3.森の住人
アイルと美咲は布の中でしばらくぐるぐると回っていた。
「ちょっとアイル!めまいがしちゃうよ」
美咲はめまいを覚えていた。アイルはそんな美咲を無視していた。
「もうすぐホエールに着くから、我慢したまえ」
「我慢って、あんたね…。きゃあ!」
その時ドンという衝撃音が響いた。美咲の顔面が、地面に叩きつけた。
「痛い!」
美咲は顔をなでながら布から出た。アイルも同時に出ると帽子をとったのだ。
美咲はアイルの髪の長さと美しさに茫然とした。
髪は腰まであり、銀色に輝いていたのである。
美咲が周りを見渡るとそこには森の中だった。
「アイル…、ここは?」
「ホエールの一番西橋にある森だ。住んでいる者もいる。」
その時向こうから、何者かがやってきた。
「貴様ら、何者だ!?」
男は槍をアイルと美咲に向けたが、アイルの存在に気付くと槍を下した。
「アイルじゃないか!」
「ほう、ソラじゃないか。久しぶりだな」
アイルは微笑みながら、ソラを見つめていた。
美咲はアイルとソラを交互に見た。正直、アイルにも知り合いがいることに驚きを隠せなかったのと同時に、なんとも言えない不思議な気持ちになった。
「知り合いなの?」
「ソラは我が輩の兵士学校時代からの友人だ、今はこの森で暮らしている。」
ソラは美咲を見た。
「はじめまして。ソラと名乗る。君がミサキ・クリハラだね?」
美咲は目を見開いた。
ソラはアイルからの手紙で美咲の存在を知ったのである。ソラの話によると森の住人たちは、美咲の存在を知らない者がほとんどであるがという。
「これからみんなに話すね。」
ソラはアイルに耳打ちしたのだった。