第3回:勉強をする
学校へ行くご主人様について行く。
親の顔を知らないタンゴはユーワをその代わりのように慕っている。
実際、タンゴにとってユーワは魔女と使い魔の主従関係を超えてかけがえなく大切な存在なのである。
ユーワは留学という名目で来日しているため昼は学校に行かなくてはならない。『いかなくてはならない』と言うとマイナスに聞こえるかも知れないが、歳若い魔女にとって一般の学び舎は得るものも多いので、有益な場所である。それどころかユーワは日本の学校というものに好感さえ抱いていた。
好きこそものの上手なれ。
ユーワは地で好きなことはとにかく上達する。学校の勉強も、料理も、縫い物も、だから得意中の得意だ。
反面、ユーワの魔女としての技量はそれほどでもない。
ユーワはそれを必要としていないからだとタンゴは理解している。
魔女に助けを求める者の多くが抱いている願いを、ユーワは持たない。大抵の願いは努力してこなそうとするし、それでも叶わないような望みは優しく語れるだけの余裕を持っている。
それは人間には普通のことなのだとタンゴはユーワに教えてもらった。
でも、タンゴはユーワ以外の人間といえば魔女に頼りに来る者達くらいしか知らない。
彼女らはとても思いつめた顔をしていて、時々は底冷えする瞳の色をする。
その度に、タンゴはご主人様はやっぱりユーワがいいなと思う。ユーワ以外には考えるだけに怖ろしい。
怖ろしい、怖ろしい。
だから、その考えを振り払うようにタンゴは温かなふところに擦り寄るのだ。