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第22回:赤ん坊は泣きわめき

 3日泣き腫らして、4日目の朝にはすっかり体力をなくして、ぐったりとなっていた。

 タンゴはぼんやりと空を早足で駆けていく雲を見上げていた。魂を抜かれてしまったぬいぐるみのようだった。脳が考えることも悲しむこともできなくなってしまって、ぼんやりとぬけるような青空と、壊れた時計のイメージだけがおぼろげに像を結んだ。

 ジェラスは動こうとしないタンゴのために食事を持って行った。タンゴを見るたびジェラスの心になにかが去来する。熱く、揺さぶられ、いてもたってもいられなくさせる。けれど、いくら気をそぞろにしても、なにができるわけでもなく、ジェラスはこみ上げてくる切ないものに耐えたたずむしかなかった。

 タンゴはぼうっと昔を思い出していた。

 生まれてから、決してユーワと遠く離れることのなかった年月。

 一緒にご飯を食べて、一緒にお話して、一緒に買い物にいって。

 ユーワの腕の中で安らかな眠りについた毎夜。

 もう還らない日常。

 

 赤ん坊はなんで泣くのか。

 昔、ユーワに聞いたことがある。

 赤ん坊は泣いて自分のことを知らせるのだと、ユーワは言った。他に方法がないから。赤ん坊の泣き声は、おなかが減ったとか、もう眠いとか、だっこしてほしいとか色んな意味があるのだと、ユーワは言って二時間だけ預かっていた姪をあやしていた。

 赤ん坊でなくなったタンゴは、泣いても喚いてもユーワを返してもらえない。

 こんな不条理あるもんか!

 そうタンゴは思ったが、それもとうに知れたことではあった。生まれた瞬間から、タンゴにとって世界は不遇であったのだから。

 赤ん坊は泣いて母を呼ぶ。

 赤ん坊でも人間でもないタンゴは泣いているだけじゃ、母を呼べない。他に手段がいる。大切なユーワのもとに行くためには……。

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