第2回:魔女の階級
魔女と一口に言ってもその様相は様々で、ピンからキリまである。ただでさえわかりにくい全世界の魔女の実情を少しでも整理しようと魔女世界統合規格が発表されたのは今から5年前のことだ。これの普及によって各国の魔女を階級分けするとともに全体数の把握が以前より行いやすくなった。魔女の能力は杓子定規に測れるものではないなど異論も多いが、実際この規格は現代に生きる魔女達を絶滅させないために必要とされるものなのである。
ちなみに、黒猫タンゴの主人である魔女ユーワは7つある階級のうち下から2番目のC級魔女である。
「ご主人様は階級を上げたいとは思わないんですか?」
「どうしたの、急に?」
カレーの味を確かめていた黒髪の魔女ユーワは使い魔であるネコのタンゴの問いに対して首をかしげる。タンゴがそんなことを言ってくるのは珍しいことだったからだ。タンゴも別に階級とか他人の評価とかにはさして興味がある方ではない。
「さっきね、妖精の1人が言ってたんですよ。階級を上げると箔がつくって。それがつくと、もっと美味しいものが食べれたり、もっと幸せになれるって」
「タンゴはこのカレーが嫌い?」
ユーワの言葉にタンゴはぶんぶん首を振る。嫌いどころか大好きだ。ユーワのつくる料理はどれも美味しいし、特にイワシカレーはほんのり甘くて、お魚の風味も残ってて、食べているだけで幸せになれるのだ。
「じゃあ、いいじゃない。今でも、十分。食べ物に不自由はしていないし、私は、タンゴといるだけでとっても幸せだわ」
タンゴもそれは同じ気持ちだ。ユーワと一緒にいるときがタンゴにとって一番の幸せ。ユーワとイワシカレーとあとお菓子とハーブがあれば他にはなにもいらない。
いつまでも幸せでいられますように。
タンゴは願って今夜もユーワのベッドに潜りこむ。