第13回:魔女と使い魔の再会
「ったく、ええかげんにせぇっちゅうねん」
大阪弁とやらを話す英国人魔女ステファン・D・トールキンはテーブルにうつ伏せになりながら言った。
「勝手にキャアキャア騒いどいて、今度は手のひら返したようにヒソヒソ疑いおって、温厚な自分でもしまいにゃ怒るで、ホンマ」
「みなさん、動揺してらっしゃるだけよ」
ユーワはステフの前によい香りのする紅茶を置いた。落ち着いて、ということだろう。ステフの間違いだらけな大阪弁の方が発音はいいが、ユーワの方が丁寧でやさしい言葉だ。
実は、ユーワとステフは故郷にいた頃からの友人である。お互いの祖母が古くからの知り合いなので、祖母についていくうちに、歳が近いこともあって仲良くなった。エリーはステフとは違う家で育ったので歓迎会以前の交遊はない。
ステフはユーワの家に遊びに来ていた。ステフはきれいな顔の割りに気性の激しい性格なので、ユーワがなだめるのは幼少の頃から決まった役割だった。
年上の魔女たちへの愚痴が収まると、再会を祝う思い出話に花が咲く。世話話とか、たわいない、楽しいおしゃべりを始めた隙を狙ってタンゴはステフの抱擁から逃げ出した。
ステフはキス魔で、ことあるごとに唇を押し付けてくる。特にタンゴはお気に入りで、タンゴが嫌がるほどしつこくベタベタする。タンゴは、ステフのことが嫌いではないが、ユーワ以外に対しては自分はクールなんだと思っているのだ。
「災難やったなぁ、タンゴ」
上の方から声がかかる。ステフの使い魔、カラスのロンドだ。
ユーワとステフ同様、タンゴとロンドも以前からの友達である。頭がよくてさっぱりとした性格のロンドは、タンゴにとってよい兄貴分だ。
「あねさんにつきあってくれてあんがとな。イヤイヤされると、あねさん後ですねんねん」
「慣れてるよ」
羽音をたててロンドは床に降りてくる。
テーブルの下でも小さな花が咲く。