第12回:双子の来訪
その地域に新しく魔女がやってくると歓迎会が催される。
在地の魔女との面通しという意味合いもある。魔女は閉鎖的なイメージをもたれやすいが、こと現代においては当てはまらない。誰が魔女であるか一般にはあまり知られてはいないし、従ってイメージから推測することもできないだろう。
ユーワも見た目はおとなしい留学生といった印象である。それも使い魔のひいきめにしても美人だ。けれど、目をみはるほどの美形というわけでもない。十人並みというやつだ。
しかし、やってきた魔女は違った。
内側から光を放っているような黄金色の髪。
海の色より鮮やかで神秘的なディープブルーアイズ。
白磁よりもきめ細やかな肌。
おまけにハロウィンの魔女の仮装みたいなその衣装。
フランス人形顔負けの美女、それも2人である。
ステファンとエリー。
魅力を更に高めているのは2人が無機質な人形ではなく、とびきりチャーミングな性格も有している点にあった。ころころ猫の目のように変わる表情。人懐こさ。2人はあっという間にこの町の魔女たちに打ち解けてしまった。
ステフとエリーは双子でそっくりすぎて見分けがつかないとタンゴが言うと、ユーワは口調で区別できるよと教えてくれた。
ステフは大阪弁、エリーは京都弁を話す。
タンゴにはやっぱり区別がつかない。
2人は年配の魔女たちからもちやほやされていた。
けれど、その待遇はすぐにうって変わった。
2人と特に仲の良かった魔女が急死したのだ。
老衰や病気ではなく、何者かに殺されたという。
彼女達がやったという証拠があるわけではない。物取りの犯行だろうと警官は言った。
だが、年配の魔女たちは手のひらを返したようにステフとエリーを相手にしなくなった。
魔女たちの間で双子には『共食い』という裏の意味があるということは広く知れたことだ。
魔女たちは意識してしまったのだろう。
殺されたフレデリアという魔女は秘薬のレシピを持っていた。とても貴重で、とても効き目のある薬の製造法が書かれている。
いくら探してもフレデリアの家からそのレシピが見つかることはなかったのだ。