第一局~壇上(ステージ・オン)~
投稿二回目です。あまり自信はありませんが、よろしくお願いします。
初めに言っておこう。俺、明星神夜は学校が大嫌いだ。どれくらい嫌いかというと、『学校があるから』という理由だけで世界を滅ぼすための口実を作れるほど。
毎日、何かとつけて授業、授業、授業。ほんの少しの休み時間の後に、五月蝿い教師どもの顔を何度も見なければならない。
そんなことが毎日継続されていくと、もう本当に嫌になる。他の連中は何故耐えられるのだろう?と、いつも不思議で仕方なかった。
教師との間で何度いざこざを起こしたか、もう数えられない。それくらい、俺は学校を憎んでいる。いや、“いた”か……。
そんな俺が、日本の中でもトップクラスの捨て駒学園に何故入れたのだろう?その疑問が俺の頭の中を駆け巡っていた。先ほども話したように、名前こそ悲しいものの捨て駒学園は日本の中でも優等生が集まる高校として有名だ。
俺みたいな落第生を入れていたら、学校の名に泥を塗るのではないのだろうか。
ましてやその俺がこんなことを……。
「わ、私達は、この学校に入学できたことに誇りを持ち……」
今俺がやっているのは、新入生代表挨拶。入学式の席でぼーっとして座っていたら、突然俺の名前が呼ばれた。誰の策略だまったく!
もちろん代表挨拶など考えているはずもなく、全てアドリブだ。何を話せばいいのか全く分からないので、とりあえず皆が並べそうな建前だけを適当に言ってやり過ごすことにしたわけで。
「これから、よろしくお願いします」
目の前に居る校長と後ろからの視線を一点に浴びながら、俺は挨拶を終えた。
拍手が起こり、俺は一礼してから壇上を後にする。
(……勝った!やったぞ!俺はやりきったのだ!もう怖いものなどない!神にでもなった気分だ!わははははは!最高だ!ファンタスティック!……はっ!マズイマズイ。俺は何を興奮しているんだ。イカンイカン、冷静になるんだ。冷静に)
ふと二年生の席を見ると、緋狩と目が合った。そう、まるでそこに緋狩がいるのを分かっていたかのように、ピシャリと目が合ったのだ。緋狩は右手の親指を上げて“よくやった”と言わんばかりの笑顔を向けている。俺は頭を抱えたくなったが、そこは耐えるところ。何せ、皆が見ているのだから。
高校では良い子ちゃんで通そうと決めた俺の決心は、固かった。
◆
さ~てと、お次は教室でのSHRだったよな。
幸いなことに、担任は……女性だ!しかもかなり若いらしい。この地獄のような生活の中に差し伸べられた、まさに救いの手。
おっと、噂をすればだ。
教室の引き戸を開けて入ってきたのは、黒髪に藍色の瞳をした女性。スーツの着こなし方からみるに、かなり清潔な印象だ。
見渡すと、もうクラスの男子ほとんどが目をハートにしており、女子も半分くらいはそうなっていた。だがしかし、俺は決して目をハートになんてしない!してなるものか!あの美貌をこの目に焼き付けなくては!
「皆さん初めまして。このクラスの担任になりました、咲群沈黙です。よろしくお願いします」
おお!声まで美しいではないか!まるで鈴の鳴るような……ん?ちょっと待て……今あの人、咲群って言わなかったか?確かに言った。はっきりと。
「あ、あの……」
恐る恐る手を挙げた俺に先生が笑顔で振り向いてくれた。
「はい、何かな?え~と、明星神夜君?」
「先生って緋狩の関係者、ですか?」
「あら、緋狩を知ってるの?……あ、もしかしてあなた、明星さんとこの神夜君!?」
「は、はい」
「やっぱり!大きくなったわね~神夜君!私、緋狩の姉の沈黙よ。覚えてない?」
ビンゴ、やはり沈黙先生は緋狩の親族であった。しかし、まったく覚えていない。本当だ。
くそっ!俺としたことが、こんな美人のことを忘れてしまっているというのか。不覚、一生の不覚。しかし、覚えていないものはしょうがない。正直に答えよう。
「すみません。全く」
「まぁ、仕方ないか~。私、あなたが二歳の時にアメリカに留学したから、当然といえば当然なのよね。ごめんね、変な質問しちゃって」
な、ん、だと……!俺はこの美人の手のひらで踊らされていたというのか……。
「と、いうわけで、今から私がこの学校について説明します。みんなよく聞いてね?」
どういうわけだ!
「この捨て駒学園には六つのクラスがあり、まず一年生は全て<歩兵>から。そして二年生へ上がるときに、成績や能力に応じて<僧>、<城>、<騎士>、<女王>、<王>の五つに分けられるんです。一番能力の高いものは、当然ながら<王>に配属、ということになりますね。皆さん<王>になれるようになって下さいね」
はーい!と皆の元気一杯な返事をよそに、俺は机に顔を預けていた。何だかどっと疲れたような気がする。流石に緋狩の姉さんなだけのことはあるようで、掴みどころのない人だ。
「では、これでSHRを終わります。神夜君、号令お願いね」
ここでも俺なのか……まぁ良い。
「きりーつ、きをつけー、れーい」
◆
「なぁ、ちょっと良いか?」
「ん?」
先生が出て行き、騒がしくなった教室で俺が小さくなって眠っていると、一人の男が声をかけてきた。
誰だこいつ?身長は俺とあまり変わらないようだが、決定的な違い、それは明らかに俺より愛想が良さそう、というところだ。
「俺は城ヶ崎悠聖。仲良くしようぜ神夜?」
妙に馴れ馴れしい口調に少しばかり不快感を覚えるが、友達が出来るのは悪い気分ではないので従うことにした。机から立ち上がり、悠聖の差し出した手をがっしりと握る。
「……ああ、よろしくな、悠聖」
かくして、なんだかよく分からないかたちで高校初の友を得たのだった。
さぁ、これから忙しくなるな……。
進展があまりありませんね。次、少しは進展出来ると思います。
ではまた会いましょう。