序局~新たなる舞台(ステージ)~
基本主人公は本人視点です。初投稿&駄文ですが、どうぞよろしくお願いします。
「第七百七十七条、上記にある校則を破りし者、これを罰する……っと。これで全部……はぁっ……しっかし、やたらと長いなこれ。見てるだけで首が痛いぜ」
分厚い本を閉じながらそんなことを呟く。
読んでいたのは俺がこれから入ることになる学校の案内書。校則やら校則やら校則やらが書いてある。他の事は一切書かれてはおらず、まるで何かにとりつかれた様に校則ばかりを記載した本。まさに校則のオンパレードである。いやエレクトリカルパレードか。七百七十七個も校則を考えるのにどれだけ時間を費やしたのだろう。
全く、世の中のお偉方はそんなに決まりが大切なのかねぇ? 俺、決まりとか守るタイプではないのだが……。
え~、先ほども話したように、この案内書がやたらと分厚い。それはもう広辞苑に匹敵する程で、読み終わる頃には、もう朝の八時をまわっていた。
……え? 八時? 俺、起きたの五時だぜ? 珍しく。三時間もこんな本に読み入ってたのか。本って凄いんですね。
しかし、考えてもみよう。たった三時間で広辞苑程もある厚さの本を読み終えたのだ。これは驚嘆すべき記録なのではないのか? 人間はやれば出来るものだ、と初めて思えた瞬間だった。
……っと、そんなことはどうでもいい。
「確か、登校時間は八時三十五分までだったよな。今から着替えたらギリギリだ。急ごう」
自室のクローゼットから白い制服を取り出して羽織る。ワイシャツはもとから着ていたため、多少は着替えに要する時間を短縮出来るだろう。
あ、間違えた! 先に下から着替えた方が良かったかも知れない。こういう時に限ってあいつが……。
「神夜ー!」
「おわっ!!」
ほら、やっぱり来やがった。部屋のドアを勢いよく開けて入り込んできた不貞な輩。こいつは俺の幼馴染、咲群緋狩。俺より一つ年上で、小さい頃はよく一緒に遊んだっけ……。家も隣だったし。
いやいやいやいや! 思い出に浸っている場合ではない。何故なら、今の俺は制服にパンツ一丁という奇怪な格好をしているからだ。早くこいつを追い出さねぇと! 年頃の男女が部屋で二人きり。しかも俺はこんな格好。こんなもの、誰かが見でもしたら完全に誤解を招いてしまう!
「もう、遅い! 神夜、早くしなさい!」
「うっさい! 大体、お前は何で昔からタイミングが悪いんだ!」
「え? どこが? 最高に良いタイミングだと思うけど?」
(デリカシーの無い女め……)
「生憎、デリカシーなんて持ち合わせてないの」
「て、テメェ! 勝手に人の心を読むな!」
この咲群緋狩の驚くべき能力、それは“人の心を読むことが出来る”というものだった。この能力は生まれつきらしく、さらに発動と持続時間は自由ときた。この様に、常識では説明できないような力を持つ者。この世界において、最も人間離れした人間。それが能力者である。
ただし完璧ではないらしく、心が高ぶっている時の相手の心と、心を開いた人間の心しか読むことが出来ないという弱点も、同時にもっている。これは、緋狩が聞きもしないのに、俺に教えてくれたことだ。 つまり、リラックスしている相手の心は読めないということになる。戦いで役に立つ能力だな。
「とにかく、早く下着てよ。時間、あんまり無いんだからね」
(誰のせいでこうなったと思ってやがるのでしょうか此奴は……。おとなしく外で待っていれば良いものを、わざわざ中まで入ってくるから、余計に時間くっちまっただろうが)
「そうつれないこと言わないの。二年生、クラス<騎士>であるこの緋狩様が直々に来てあげてるんだから。逆に感謝して欲しいくらいだわ」
また心を読みやがりましたな……。しかも自分のことを“様”付けって、どんだけ自意識過剰なのだろう。
(いつかギャフンといわせてやる。もう俺の前で自分を大きく見せられなくなるように、な)
「ギャフン」
「……本気でそう言わせてやるから覚悟しとくんだな」
「フフッ……努力してみなさい」
「チッ……覚えてろよ……」
…………言い終わった瞬間に、俺は自分の迂闊さを痛感した。勢いで啖呵きったけど、俺の心は緋狩に筒抜けだった。どんなことを考えていてもその裏をかかれてしまってはどうしようもない。
俺のささやかな抵抗は、簡単に打ち砕かれた。
「さぁ早く!」
「はぁ……分かった、分かりましたよ」
強引に俺の手を引いて家を後にする緋狩。俺は抵抗すること無く、手を引かれて学校へと向かうのだった。
……今更ながら、自己紹介をしたいと思う。俺の名前は明星神夜。今日から高校生になる。好きなことは寝ること。嫌いなことは……面倒なこと。俺の中において、学校は面倒なことに分類される。故に、俺は学校が嫌いだ。まぁ、理由はそれだけではないのだが、今は控えておこう。
親は二人とも海外にいるために、今は一人暮らしを満喫中だ。と言っても、ほったらかしにされているわけではない。毎月の小遣いもちゃんと送られてくるし、生活に必要な物は、家に残してくれた。お蔭で、生活に不自由を感じたことは殆どなかった。
俺が通うことになる学校は、国立捨て駒学園。創立されてからまだ年月の浅い学校である。
……とても、とても悲しい名前なのは、スルーして下さい。
と、いうわけで、今この時、この瞬間をもって、波乱の学園生活が始まるわけである。始まってもいないのに、すでに波乱と言い切るのは、俺の第六感がそう告げているからだ。
どうでしたでしょうか?出来るだけ早くあげていきたいと思います。
どうか感想よろしくおねがいします。