とある鬼の恋の詩
登場人物
鬼
妖怪で珍しい種族。 一種の噂では元は人間で、少し人間とはかけ離れた力を持っただけで
妖怪として見られたというのがある。 この話ではとある事がきっかけで女と出会い
一目惚れした
女
この話のヒロイン的存在。 村の中である特別の種族の娘で、この女の末裔は代々
神に仕える神職であった。
この話ではとある事がきっかけで女の運命が暗く薄れていく事になる
女2
ただの村人。 プロローグにだけ登場。 薬草を取りに森に行って盗賊に出会った厄い人。
プロローグで助けられ村に帰るが目の前で人が喰われるのを見て
精神不安定になったのはまた別の話。
盗賊達
不運な盗賊達。 プロローグにだけ登場。 動物を狩りに森に行き女に出会い
殺そうとするも鬼(主人公)に逆に殺された可哀想な人たち。
ここはとある森。 村から少し遠く離れた場所にあり動物や人間が行き来する道でもある。
その中に1人、整った顔立ちに綺麗な色をした髪、
2mを超える身長を持ち、頭に尖っている角を持った生物がいた。
鬼である。 彼は人を喰らうべく森を歩き人を探していた。
歩いていると話し声が聞こえ身を隠し声がしたほうを見る。
目を凝らすとそこには武器を持った数人の盗賊の中に1人、茶色い服を着た村人の女がいた。
それを見た鬼は自らの食欲を満たすために盗賊たちの元に向かった。
近づくごとに下品な笑い声が聞こえる。
鬼が一人の盗賊に手を加えた。 すると盗賊達の前に一つの首が飛んできて、笑い声がとまる。
首の表情は何があったのか分からない表情だった。
後ろから肉を引きちぎる音が聞こえた。盗賊達はゆっくりと後ろを見た。
するとそこにはさっきまで人間だった肉の塊とソレを喰らう鬼だった。 盗賊達は恐怖した。
盗賊達は恐怖で動けない奴もいれば腰を抜かしたりした奴もいた。
鬼は肉の塊を食べきると次の肉を求め盗賊達に近づく。
盗賊達の中には勇敢にも鬼に挑むも返り討ちにされ鬼の食欲を満たす存在に変わった。
全ての盗賊を喰らい辺りが真っ赤に染まり鬼も返り血で真っ赤に染まっていた。
男の肉は硬い しかし女の肉はく美味だ。 鬼はゆっくり女に近づいた。
鬼が女に手を加えようとしたその時
「そこの妖、少し待って」
鬼は声のする方に顔を向けた。 そこには美しい顔立ちに長く美しい髪、
白く綺麗な肌 少し触っただけで折れてしまいそうな細い身体。
白い服に赤い袴を着た女がそこに立っていた。
鬼はしばらくその女を見ていた。その間に女は地面に座っている村人を立たせ村へ帰らした。
鬼は逃げる村人の足音で我に返ると女に襲い掛かろうとする前に女が話した。
「結果は違えど村の民を助けてもらい感謝します。」
鬼は呆気に取られた。 人間が妖に感謝の意を述べるなど思ってもいなかったからだ。
「それでは」
そして女はすぐに見えなくなってしまった。
鬼は普通の人間たちとは違う反応をした女が少し気になった。
それからだろうか。 鬼が村によく来るようになったのは。
鬼が女に対する感情が興味から行為に代わっていたのは。
プロローグ END
~とある鬼の恋の詩~
第1章 異変
昔々、あるところに 美しい鬼がいた。
その鬼は1人の女性に恋をした。 狂ったように恋をした。
しかし女は鬼を拒んだ。
鬼は人を喰らう喰鬼だったからである。 鬼が何度恋をしようと女は拒み続けた。
ある日、女に対して村人は言う。
「お前のせいで鬼が来る。だからお前はひとつの役目を果たしてもらう。」
女は拒む事さえ許されなかった。
鬼が女に恋をして、二度目の春
いつもみたいに鬼が女に会いに行くために村に行ったが村の中には誰もいない。
村の中を詳しく調べても誰もいない。
「みな何処に行ったんだ。」
第1章 異変 END
第2章 絶望
仕方ないから村の外に行くと村人を一人見つけた。
鬼は村人に問いただす。
「女はどこだ」
村人は言う
「妖であるお前に教える事など何も無い!」
答えを聞いた鬼は村人の首を締め上げた。
「そうか。言わねばお前を喰うぞ!」
村人は恐怖で悲鳴を上げ話した。
「今日は村の外の祭壇の祠で儀式をしている。 そこに村のみんながいるんだ。」
鬼は聞く。
「その儀式とは何だ」
村人は一息置いていった。
「生贄だ。」
鬼は答えを聞いてから村人を離し祭壇へ走った。 嫌な気がする。
鬼はさらに早く走った。
しばらく走り祭壇の祠にたどり着き入った鬼に戦慄が走った。
村人たちが祭壇に集まって手を組んでいた。
そしてその祭壇の上にはあの女の髪だけおいてあった。
鬼は悟った。 この儀式は自分に向けての儀式なのではないかと。
鬼は自分に絶望した。 今までの自分の行動がこの事件を起こしたのと。
鬼は泣いた。 現実から逃げるように。
そこに村人の一人が言った。
「生贄は捧げた。もう村にくるな。」
鬼は動かない。
「…もうくるな。」
鬼は後ろに振り向いた。 そこには「鬼」の様な目をした人間だった。
どちらが悪鬼か分からない…。
鬼はもう泣いていなかった。
第2章 END
第3章 確信
女は一人崖の上で立っていた。 長く美しい髪を切り、乱れるように揺れる短髪の女は思った。
鬼は… 鬼はこのことを知ったら何というだろうか?
私は鬼のことを好きではない。 ましてや、この行動が村のためでもない。
そんなことは「生贄」になるときから分かっていた。
ならばなぜ私は、この身をこの暗く深い崖に身を落とすのか…。
鬼は走っていた。 女は生きている。 確信がもてる。
既に女の居場所も分かっている。 昔、教えてもらったあの思い出の場所だ。
鬼は走る。 走り続ける。
途中、木の幹に足を引っ掛け転ぶ。 そのとき水溜りで自分の姿を見た。
髪は乱れ、 身体は傷だらけ、 顔は泥まみれ。
必死に何かをする行動は、いつも嫌っていたあいつ等みたいだと思った。
しかし、今の自分の姿は嫌いな奴らに似ている。
「人間みたいだ」
グゥ
腹が鳴る。 そりゃそうだ。 女に会い恋したその時から、人を喰っていないのだから。
鬼は走る。
第3章 確信 END
第4章 再開
目的地が見えた。
女がいる場所は、森と森を分ける谷… 底すら見えない奈落の谷であった。
落ちれば命は無い。 それは悪鬼である鬼も同じである。
そこに「人」が落ちたらひとたまりも無い。
鬼は女を見つけ、 女の名を叫ぶ。
女は白い服を着ていた。 けれどそれは死に服ではなく、婚姻をする時の衣装だった。
短く、乱れた髪には梅のかんざし。
女は言う。
「なぜここへ?」
女は振り向かずに言った。
鬼は言う。
「儀式はもう終わった。 乙は女の死を望まない。」
声がかすれる
女が言う。
「例え貴方がこの儀式に反対しても、村人たちはどうでしょう?
私が村に帰る事を許してくれるでしょうか?」
女の声がはっきりと風に乗り 谷を巡る。
鬼はその声を愛しそうに胸に残す。 そして鬼は言う。
「ならば、ならば乙と共に生きよう。乙は鬼を捨てる
人としてお前と過ごす」
鬼は自分の頭から生えている2本の角に触る。
女は言った。
「どうやって? 貴方がどうやって人になれるというの?」
振り向いた女の顔は歪んでいた。
嬉しそうな、 悲しそうな、 涙をこらえる様に。
鬼はゆっくりと女に近づく。 おにの姿は、今は泥まみれで、傷だらけで、
その姿はあの美しいと言われていた鬼の姿ではなかった。
けれどあの時のような殺気や鋭さが微塵も無く、今ではどこにでもいそうな
ヒト
人間のようだった
鬼は女の前で止まり言った。
「どうやって人になるかわ知らない。その代わりに、人として生きる、人のように生きる」
「なぜ? どうしてそこまで私のために必死になるの?」
女は泣きそうな声で尋ねた。
「乙はお前に恋をした。だから乙は女の死を望まない。 大切な人だから」
女はその場に泣き崩れた。 鬼は静かに抱き寄せる。
女は泣きながら尋ねた。
「私は、生贄の私は生きてもいいの?」
鬼は優しく、迷わずに言った。
「生きてはいけない命などない。 お前はずっと生きてもいい」
女は安心した顔になり笑った。 つられて鬼もまた笑った。
第4章 再会 END
第5章 悲劇
女は笑いを止め、いつもの凛とした顔に戻りはなした。
「生贄である私が生きても良いなら、貴方と共に、、、!危ない!!!」
女は鬼を押した。 鬼は倒れながらも女を目で追っていた。
女の身体を刃が貫き、血を吐き出した。 ゆっくりと倒れる女の身体。
女の後ろには村人達の一人が立っていた。
鬼は素早く女の元に駆けつけた。
村人によって刺された刃は、女の心臓を貫いていて女は既に虫の息だった。
鬼の姿を見つけ血まみれの手で鬼の頬に触りかすれ声で言った。
「私を愛して・くれ・てありが・とう。 一緒にいられなくてごめ・ん・・ね」
鬼の顔から女の手がゆっくりと落ちた。
「おい。起きろ」
鬼は女の身体を揺すった。 しかし女の身体はただ揺れるだけだった。
鬼は女の名前を呼んだ。 叫んだ。 何度も 何度も。
しかし女は返事をせず、ぴくりとも動かなかった。
女は…死んだ。 最後に感謝の意を述べて。
鬼は認めたくなかった。
悲しい…悲しい。
悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい
悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい
悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい悲しい。
まるで胸の中にぽっかりと穴が開いたように。
鬼は、泣いた。 初めて、誰かのために。
第5章 悲劇 END
最終章 憤怒
鬼の泣き声は谷中に悲しく響いた。
村人たちは笑った。
鬼には村人たちの話が聞こえた。
生贄のくせに生きようなんて。 ―――生贄だから?
気がおかしくなったんじゃないか? ―――なぜ生贄は生きてはいけない?
生きようとするなんて、馬鹿だな。 ―――生きようとする事が…バカだと!
笑う村人の1人が鬼に近づき、言った。 ―――女を・・貴・様等 が・殺した!!!
「生贄を殺してやったんだ。さっさとそいつを食ってどこか…」
話していた村人は最後まで言い切ることなく死んだ。
鬼が村人の首をを飛ばしたからだ。
首を無くした身体は首元から血を噴き出しゆっくり倒れた。 村人達は恐怖した。
鬼の眼がゆっくりと赤く染まりやがて紅に染まった。
その紅く染まった眼に見えるのは、狂気と溢れんばかりの悲しみしか映ってなかった。
…女を貴様等が殺した …お前等がいるせいで女が死んだ
…お前等が許せない …お前等が憎い
鬼は手に持っている首を潰し、そしてゆっくりと村人たちに近づきなが声を出す。
「やってくれるじゃないか 人間風情が。 よくも女に手を出したな。
許さんぞ。 五臓六腑を撒き散らし、無様に散れ!!!」
鬼は村人に向かって走った。 村人達は
「怯むな。 相手は一人だ。みんなで行くぞ」
武器を取り村人たちも走る。
鬼は叫ぶ。 そこで鬼の思考は止まった。
……鬼は、立ち尽くしていた。
周りには肉と化した村人達と、血の付いた武器。
そして、村人たちの血によって白から真っ赤に染まった女の死体だった。
鬼はゆっくりと女に近づき血まみれの両手で女の頬を触り女を抱き上げた。 女の顔を見る。
女の表情は幸せに満ち溢れ笑顔だった。 その表情を見た鬼の表情も和らぐ。
鬼の表情は先ほどの憎しみや悲しみはなく変わりに人間らしい笑顔だった。
鬼は死体に話しかける。
「綺麗な笑顔だな。 お前の生きてるときに見たかった。
安心しろ。 乙は女を一人にはしない」
鬼は女を抱き上げた状態でゆっくりと歩き出し暗い谷へ入っていった。
そのあと、鬼と女を見たものはいなかった。
最終章 憤怒
エピローグ
鬼と女がいなくなり既に数百年が経っていた。
「何かいい番組は無いかな~」
17~18歳の女性がテレビのチャンネルを変えながらニュースを探していた。
「あ、このチャンネルいいかも~」
とあるチャンネルで止まった。 彼女はそれを黙ってみていた。
その番組はニュースで、内容はとある山のおくで死体を見つけたというものだった。
「少しこの死体に興味があるな~。だってその死体があった山ってこの世界じゃん
少し見にいこ~っと」
すると女は急に立つと歩いて和室に声を出した。
「空く~ん。 少し山に行ってくるね」
すると道場から1人、汗だくで、お腹にサラシを捲いた男性が出てきた。
空「山!? 何でそこに行くの……あ~そうですか。早めに帰ってきてくださいね」
テレビを見て納得した彼はお風呂に向かって歩き出す。
彼女は寝巻き姿を私服に着替え山を目指し空を飛ぶ。 (なぜ飛ぶかは別の機会に)
「やっぱり、空を飛んだときの景色は綺麗ね~。 さっ、早く山へレッツゴー。」
さらに早く飛び音速を超え、山に急ぐ。
「やっと着いた~」
彼女は大きく背伸びをして山に近づく。
「ニュースの映像だと確か~この辺だった気が~ …!あった~」
目的を見つけてその場に飛ぶ。 すると、そこにはニュースどおりに死体が二つあった
・・ ・・
その死体は不思議な死体だった。 一人の死体は人間の骨で後のひとつが
人間とは思えない骨の仕組みをしていた。
「この骨ってもしかして...鬼?」
頭蓋骨に小さな突起が二つあるからだ。
「だとしたら何でこんな死に形を?」
そう疑問を持っても仕方ない骨の組み合いだったからだ。
二つの骨の手はつながっていた。
離れない。 離れたくない。
そう見ている人たちに思わせるように。 がっしり、 がっしりと。
「この骨達はきっと恋人だったのかな? 何でかな? コレを見てると悲しくなる。」
彼女はつぶやき、そしてあの男性のいる家に帰った。
エピローグ END