北関東の首都?鬱の宮
作者在住の宇都宮でおかしなことが起きる、要するにパロディ調の小説です。
眼前に展開する光景といえば、「修羅場」という言葉をそっくりそのまま具現化したような有り様だった。宇都宮の市街地は被害を受けた都市の中でも殊に見るも無残な様相を呈していた。メインストリートは瓦礫の山にさえぎられ、ビルは窓ガラスが一つ残らず割られていた。走行中だったと見える車もその殆どが横倒しになっていて、歩道や中央分離帯、建物の脇などの至る所に投げ出されていた。しかもその数台が今も爆発炎上中。遠くからもビルが瓦解する破砕音が鳴り響いていた。しかし、奇妙なことにそこには生きた人どころか、死んだ人さえ一つも見当たらなかった。
「まるで破壊神が歩いた後のような有様だな相模。」
無表情ながら話の口火を切ったのは、比較的平均的で特徴の無い容貌に黒縁の眼鏡をかけ、周囲の景色などまるで無視したかのように真っ白な白衣を身に纏った1人の青年だった。
「冗談じゃないですよ津村さん。それにしても変ですよ。人間というか生体反応を示す諸々の生物や、それらの死体までもが見当たりません。」
相槌を打つのは相模と呼ばれるほっそりとした少年だった。いや、歳は津村とそれほど変わらないのだろうが、茶色のパーカーと黒のジーンズに白い柄付きのTシャツというカジュアルというか寧ろラフな格好をしているせいか、少し幼く見える。無表情な津村とは対照的に、その顔には僅かに挙動不審さがうかがえた。
「ははははははっ。お気の毒様様。どうやら相模典礼の出る幕ではないようだな。」
津村の目には心もとなさは一切無く、好奇の色だけが漂っていた。
「あのぉ、そのシャレもの凄くくだらないんで止めてくれません??」
自分の上司に呆れて言い放った相模の背後で突如、轟音が轟いた。
気になって後ろを仰ぎ見ると、手前のほうにあるビルの屋上に1つのシルエットが見える。手には銃口から硝煙が立ち上った拳銃が握られていた。
「見つけたぞパン村。」
「!!」
声の主はあの北陸最強の諜報機関兼殺し屋組織「雪月花」の筆頭こと有坂業平だった。無表情な顔がさらに淡々とした言葉を紡ぐ。
「相変わらずの腑抜け野郎だな。偽名を使って逃げてもすぐに見つかるにきまってるだろうが。第一その白衣が凄く目立つんだよ。ついでにその眼鏡もなんか似合ってないぞ。」
津村はかつての高校での同輩の言葉に愕然とした。
「誰かと思ったら貴様か。昔の渾名で呼ぶなといっただろう。しかも組織の頭が1人で追ってくるとはどういう了見だ??それからさり気無く眼鏡似合わないとか言うなハゲ。」
自分のことを棚にあげて言うのも何だが、彼の今やっていることは彼にしてはかなり無謀で、あまり現実的ではなかった。尤もそれ以前にも現実性を欠いた奇天烈な現象は既に起きているのだが・・・。念のためビルの端をもう一度よく確認してみたが、やはり他には誰も見当たらなかった。ビルの窓ガラスは全て割られていて、中にもやっぱり人気がない。絶対におかしい。これは何かの罠だろうか?
「津村さん、あの人は一体誰ですか?見た感じやたらと若いですが・・・・。」
「詳しい説明は後だ。とりあえず今は逃げることだけを考えろ。」
津村は相方の相模の手を強引に引っ張って、路地裏へ素早く駆け込もうとする。
「先刻のおまえの質問の受け答えだが、それは他ならのおまえがあまりにも軟弱すぎるから、始末するには1人で事足りるし、友人である俺がおまえの最期を見届けるのはおまえにとっても有難いんじゃないかなと思ってねぇ。」
津村は走ることに精一杯で後ろを振り返ることなどしなかったが、有坂が倒壊しかけたビルとビルの屋上を飛び越えて尾行してきているのが声だけで分かった。隣の相模はもうまさに顔面蒼白で今にも気絶してしまいそうな様子だった。助けを呼ぼうにも他に人がいなければ、この町の荒廃の度合いから推して、連絡回線も使いものにならないだろう。そんなことを考えているうちに、爆発によって崩れ堕ちたビルのコンクリの塊が狭い路地を塞いだ、いわゆる行き止まりに来てしまった。振り返らずとも有坂の冷やかな笑みが脳裏に浮かぶ。
「最早そこまでだなパン村。所詮は脳味噌を持たないどこにでもある炭水化物。調理されて然るべきだが生憎今はフライパンとか持って無いし、仮にあったとしても素材が素材だけに出来上がる料理も上等には程遠いよな。ならば、殺すしかない。」
声が降ってくる方向を見上げると有坂がちょうど目の前の建物の屋上からこちらに銃口を向け、動きを牽制していた。
「ヘタレ眼鏡の名に相応しく、哀れな徘徊せし食料よ、いざここで死ね!!」
刹那、有坂の銃とみせかけて何故かは知らないけれど、両腕からすさまじい速度の狙撃砲が飛来。
それは他でもない今は無き彼の師匠、(彼曰く自称弟子)「有坂業明」が考案したという超高速の有坂式速射矢砲を少し改良(この場合改悪??)したものだった。
「津村さん、危ないっ!!」
とはいえ十分に殺傷能力は備わっているのだろう。何故か急に呆然としている津村を案の定相模が横から反射的に突き飛ばした。
しかし時は既に遅く、不運にも銃口じゃなくて腕から放たれた玉はどうやら急所に命中したらしく、津村はそのまま事切れてしまった。
そして相方の相模は自らが冒した罪に苛まれ、
「相模典礼ーーーーーー。」
と叫びながらその場で自決した。ついでに有坂は遂に世界の覇者となりはてたが、他に生きた人間が存在しないため、全くもって無意味である。そのことを悟ってか、彼も同じように
「やはりつまらぬ・・・・・。」
と誰が聞くでもない独白を漏らしながら首をつった。遂にこの世から人類は消え失せた。
そして実は、この語り手こそが真の世界の覇者である。という訳でめでたしめでたし・・・。
なんてことはまるでない。なぜならば、割と重要な(でもないかもしれない)人物をすぐに殺してしまったらなんだか勿体ないし、物語として全く面白くない。故に to be continued・・・・.
酷い!!これは我ながら酷すぎる!!
途中までは割と真面目に書いてたんですが、途中からおかしなことになって、もうパロディ小説でいいやーってなっちゃいました・・・・。