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図書室の2人

「おはよう」

「おはよう」

普通の返事

「最近暑くね?まだ5月だべや」

「そうか?別にそこまで熱くないと思うけど」

普通の返答

「いいや、暑いね。触ってみろってこの汗」

「嫌だよ汚い」

普通の返答

「汚えとはなんだよ汚えとは!あ、予鈴鳴ってらぁ。急ごうぜ」

「あぁ」

今日も普通だ。

(俺は一人じゃない)

そう小声で呟くことで自分を安心させる。


【一人になりたくない】

そういう感情は誰にでもあるものだ。だが、俺はその思いが人一倍あると思っている。絶対にひとりぼっちになりたくない。そう思って日々を暮らしている。しかし最近ある一つの悩みがある。

それは、

「おはよう本郷。今日放課後の図書委員の仕事あるから忘れないでよね。」

今話しかけてきた杉野 夢子に恋しているということだ。


恋というのは難しいものだ。もし成就すればしばらくはひとりぼっちになるリスクが無くなるが告白して断られたら必ず周りから浮き、たちまちひとりぼっちになってしまう。ひとりぼっちになりたくない俺にとってこれはかなりリスキーだ。だが番になるとは言わずとも、もっとこの杉野と仲良くなりたい。恋愛漫画後半のあのイチャイチャ感を俺は体験したい。()()()()!!誰でもいいというわけでは断じてない。

しかし、やはりリスクが大きすぎる俺が図書委員に立候補したのは杉野が確定した後だ。その時は恋愛のレの字もなかったのだが今告白してみろ。入学初日から狙ってたと周りに思われかねん。そんなリスクは取りたくない。だから俺は放課後の図書室で2人っきりになれる時間を楽しんで自分の恋愛感情を押し殺すしかないのだ。

それが()()()()()だ。

今日は何を話そうかな。どんな話ができるのかな。楽しみだなぁフフフ。


―放課後 図書室―

「暇ね」

「暇だな」

会話が無ぇぇぇえ。

うそ、俺めっちゃワクワクしてたんだぜ?あのワクワク感返してよ。いや、今2人っきりのこの空間を楽しんでないというわけではない。だが、やっぱりもっと仲良くなりたい。仲良くなるにはどうすればいい?あ、そういえば同じクラスの武田が言ってたっけな「女の子とお話するにはその子が身に着けてるものに興味をしめせばいい」って、キーホルダーを付けてたらそれ何?って聞いてそこから話を引き出すというテクらしい。それを使おう!

今杉野がつけてる話題が広がりそうなアイテムはと、お、本を読んでるななんの本だ?

『週刊プロレス』

プロレスかぁ〜、確かに最近女性人気が高いと聞くがプロレスはマジで情報が何も無い。どう会話を広げればいいかマジで分からない。

そしたら他の何か良いものはなんだ?お、このバッグの犬のキーホルダー可愛いなぁ。杉野は犬好きなのかなこれだったら広げられるぞ。

「杉野って犬好きなの?」

「別に」

「え?じゃあこの犬のキーホルダーって?」

「パパがつけたの。前に外そうとして指痛めたから仕方なくつけてるのよ。」

「そうなんだ、だったら俺が外そっか?」

「今更外したら何かパパに言われそうだからいいわ」

「そっか」

弾まねぇ!!会話が弾まねぇ!!なぜ弾まない!!なぜパパは娘のバッグに勝手にキーホルダーを付けたんだ!!しかも今杉野ってパパのことあんまりよく思ってなさそうだから掘り下げるのもはばかられる。くそったれ!

だったら行くしかないのか?このプロレス話に!イバラの道に!!

「す…」

あぶねぇ!!!杉野ってプロレス好きなの?って言いかけた!!さっきと同じ構文を使って会話しようとしてた!!どうにかして会話しようと必死になってると思われるって絶対!!

「ねえ本郷」

話しかけてきてくれたぁ!!!

「ん?」

「国語のテストの作者の気持ちを答えなさいって問題あるじゃない?」

「あぁ、あるね」

「あれって実際ないわよね」

「無いな」

「あれってどこから来たのかしらね」

「あぁ、あれとか?このキャラクターの気持ちを書き抜けとか作者の意図を次から選びなさいとかとゴッチャになってそれが広まったとかじゃない?」

「あぁ~、そうかもね。実際作者の気持ちを答えろって言われても作品と何ら関係のない話になってくるものね。」

「そうそう、絶対『眠い』とか『時間足りねぇ』とかって負の感情しか出てこないよな」

「そうよね文章からそれを読み解くのなんて無理に決まってるわよね、ただでさえ人の気持ちなんてわからないのに」

「それな」

めっちゃ弾んだ!!なんで?杉野の話題提供が上手すぎる!あ、そうか。俺が会話下手なのか。もっと勉強しないと。

(もっと本郷の気持ちとか知りたいのに)

「ん?なんて言ったの?」

「なんでもないわよ。」

もっと杉野の気持ち知れるようにならなきゃ

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