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04:夜の来訪者

野党に襲われて(襲って?)からは何事もなく順調に進み日が暮れようとしていた。

予定では手近な場所を見繕って野宿をすることになっている。


見た目からは想像もつかない攻撃力を誇るレティと相変わらず気配のない白い子供のヴァイスと俺。

きっとぱっと見は女子供を連れた駆け出しの冒険者、というところだろう。

野党や魔物から見ればいいカモに見えるということだ。

見張りも無しに休むのは不用心すぎるのだが・・・俺は魔術師であって肉体派ではないので小細工をしておく。


野宿をするのは街道からすこしだけ外れた場所にある大きな木の下に決まった。

そこで俺は近くにあった枝を拾いガリガリと木を中心にすこし大きめの円を描く。


「ルッツ、何してるの?」

「ん、見張りするのも面倒だから結界を張ってる」

「へ~、ルッツって盗賊なのに結界を張れるのね」


円を描いていた手を止めてレティを振り返る。

どうやら冗談を言っているような様子もなくそれが素であるとわかる。


「レティ、人に見る目がないとか天然だとか言われたことない?」

「・・・何でわかるのよ。ルッツって占い師?」

「んなわけない」


俺の服装は一般的な旅服よりはすこしかっちりしたタイプで騎士などの軍服に近いデザインだ。

確かに俺の持ち歩いている武器はショートソードのみだが一般的に盗賊といわれる職業の人間とはかけ離れた服装のはずだが。

しっかりマントも付けているのだ。身軽さが重要となる盗賊でマントをつける者はそうそういないだろう。

盗賊と一致するとすればショートソードのみ。どうやら武器だけですべてを判別しているようだ。


「俺は魔道師だ。見て分れとは言わないが武器以外も見て判別してくれ・・・」

「魔力の有無がわからないから総合的にみて盗賊だと思ったのに」


レティの呟きは聞こえなかったことにして円を完成させて魔力を込める。

魔力に反応して地面に描いた円が一瞬微かに光を帯びる。


「一瞬青白く光った!なんだかよくわかんないけどすごいねー」


これで準備は完了。

侵入者があれば結界がそれを教えてくれる。そして弱い魔物であれば結界を越えることすらできない。

この辺りであればこの程度で十分だろう。


荷物から毛布を取り出しすでにうとうとしているヴァイスにかけてやる。

もともと2人だけの予定でしかも1泊で到着する予定だったので余分に毛布を持ち合わせてはいない。


「ルッツはどうするの?」

「別に俺は毛布がなくても問題ない」

「うーん、何なら一緒に入る?」


ヴァイスを寝かせ、その隣に横になったレティがぺらっと毛布をめくって問う。


「・・・それならヴァイスと一緒に毛布を使うほうが普通だと思わないか?」

「そういえばそうかも?」

「せめて俺を男扱いしてくれ・・・」


警戒心がなさすぎる。いくら強くても女であるのに。

どうやらレティは根本的にいろいろ問題があるようだ。


・・・ルグランさん、心配するところが違ってるみたいです。





妙な気配で目が覚めた。

結界に異常があったわけではないが、妙な気配がした。


「・・・・・何か、きた」


ちらりとレティに目をやるとすでにレティも気づいていたようでいつでも剣を抜けるようにヴァイスを庇いながら構えていた。

本当に頼もしい依頼主サマだ。

ただこの気配・・・俺の思い違いでなければかなり厄介な相手だ。

急いでヴァイスの周りに強めの結界を施す。


「参ったな・・・なんでアイツが・・・」

「アイツって何?なんだかすごく嫌な感じがするんだけど」


野党が来たほうがよっぽど楽だと思える相手。

どんどんと増す重圧感。


それが俺の予想が正しかったことを意味している。


「レティは竜と戦ったことってある?」

「ドラゴンと?もちろんあるわけないじゃない」

「デスヨネ」

「ちょっとまさか・・・」


ひっじょーにマズイ。そのまさかなのだから。

俺は戦ったことはあるのだがその時とは状況が違いすぎる。

一人で戦うのと何かを守りながら戦うのでは勝手が違いすぎる。


ゆらり、とヤツが現れた。


「ちょっとルッツ!黒いんだけど!」

「そりゃ黒竜だし黒いさ」

「ブラックドラゴンって・・・ドラゴンの中でも上位の攻撃種じゃない!!」


それでも怯まず剣を構えるレティはさすが騎士のタマゴとでも言うべきか。

できれば逃げてくれるとありがたいのだが、守る対象のヴァイスがいる状態でレティが素直に逃げてくれるとは思い難い。


「レティはヴァイスのところに。強めの結界を張ったからそこでじっとしてて」

「何言ってるのよ!あたしだって・・・」

「俺は竜と戦ったことがある。それにどちらかがヴァイスを守らないといけない。」

「でもっ・・・」


レティの瞳が揺れる。もう一押しか。


「騎士は人を守る存在のはずだ。それが使命なんじゃないのか?」

「うー・・・わかったわよ。なにかあったら飛び出すからね!!」

「いや、その場合は即逃げろ」


しぶしぶだが納得したようでレティが一歩下がる。

さすがタマゴとはいえ騎士。守るだとか使命だとかという言葉に弱いらしい。


ピリリと衝撃が走る。

黒竜が結界を越えた衝撃だ。


「さてと。それじゃ仕事だし、やるしかないか」


俺は現時点での唯一の武器であるショートソードを構えて一歩前に踏み出した。

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