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31:世界の理

フェルが信じられないのも無理は無い話しだった。


セーゲンと呼ばれるこの世界はすべての根源に魔力が存在する。

大地や風・水・火などの四大元素は言うまでも無く、すべての生物や植物・鉱物にも当てはまる。

どんなに微量であっても、この世界に魔力のまったく無いものは存在しないのだ。

加工してあっても元となるものに魔力があり、形が変わっても魔力は残る。

もちろん人も魔力量の違いはあれど、皆無ということはありえない。

しかし呪文として発動できる魔力量を持つ人間は少なく、呪文を扱うことのできる人間は魔道師と呼ばれる。


異界の旅人は理由は解明されていないが、やはり魔力を持っていた。

その魔力量はさまざまで、魔法の存在しないという世界から来た者でも必ず魔力を有していた。

この世界へと渡った際に魔力を持つのではないかと言われているが、その真偽は定かではない。


魔力は魔力に影響を及ぼす。

その為魔力が効かない人間などこの世界には存在しない。

レティはこの世界の人間ではないのだから、前例がないだけでありえるのかもしれないが、それはとても確率の低い想像でしかない。


「・・・そろそろ戻ったほうがいいわね」

「そうですね、限界・・・でしょう」


ぱんっと手を打つ音が響き、はっとして我に返る。


「そこの呆けてるあなた達、エリクの近くに集まりなさい」


ふっと鼻で笑いつつ、母が俺達を呼ぶ。

兄の元へ集まるということは神殿へと戻るということだ。

しかし戻る前に俺には確認したいことがあった。


「ちょっと待ってください。最後に一つだけ確かめたいことが・・・」

「・・・わかったわ。ただし手短に」

「はい」


しょうがないわね、と言いつつも許可をくれたことに感謝しつつレティへと向き直る。

魔力にまったく影響されないレティだが、もしかしたら・・・


「レティ、試したいことがあるんだ」

「え・・・何?」


レティの隣に立ち、ぽんと左手に炎を出す。

詠唱も無しで出したごく小さな炎。

その炎を維持したまま右手で再び詠唱せず風を起こす。

炎ではなくその上部の空気を魔力で起こした風でレティへと向ける。


「あつっ!」


ぱっと俺との距離をとるレティ。


「・・・なるほど」

「あー・・・」


はっとして苦笑いを浮かべるレティ。


「どうして熱がったんだ?呪文は効かないんじゃなかったのか?」


考えることを放棄したフェルが尋ねる。

見た目に反して肉体派な王子様は魔法についての知識が薄い。


「直接魔力を向けたんじゃなくて、魔力で暖めた空気を向けてみたんだ」

「なるほど!さすがルッツさん。考えましたね」

「はぁ?どういうことだ、ターヴィ」

「有効かどうかわからなかったから試したんだがな」


わかっていないフェルは無視してターヴィに答える。

もしかしたらと思いついただけで、実際有効なのかどうかは半信半疑だったが・・・有効だったらしい。


「つまりですね、フェル様。魔力そのものによる影響はなくても、魔力に影響されたものは有効だということです」

「は・・・?」

「例えば今の空気ですが、ルッツさんが呪文によって暖めたものです。炎自体をぶつけてみても、レティさんはすり抜けてしまいます」

「あぁ、それはわかる」


フェルの答えに満足そうに頷き、ターヴィは続ける。


「炎は純粋な魔力の塊ですが、暖められた空気は魔力によって干渉は受けていても魔力の塊ではありません。彼女は魔力自体の干渉は受ける事がなくても、それ以外の要素を含んだ干渉は受けるんですよ」

「あー・・・わかったような、わからないような・・・」

「つまりな、フェル。呪文によってその辺の岩を割ったりして発生した石つぶてとかは当たるってことだ。わかるか?」

「ふぅん・・・じゃあ俺の攻撃も一応当たるってことか?」


埒が明かなさそうな気がしたので横槍を入れる。

この質問をしたということは、何となく理解できたようだ。


「そうですねぇ・・・フェル様がいつものようにレティさんに殴りかかったとしましょう。魔力が込められたフェル様の攻撃は岩でも砕く威力を発揮できますが、彼女にはただのパンチとしてしか威力を発揮できないということです」

「魔力部分は無効だが殴る、という部分は有効だということか?」

「そうなります」

「そうか」

「さぁ、わかったところで戻るわよ。もう待てないわ」


痺れを切らした母に急かされ、兄の周りへと集められる。

そして来たときと同じように俺達は兄の転移魔法で神殿へと戻った。



神殿に戻り兄はふぅと一息つく。

心なしかもともと白い肌の兄だが、さらに白く生気が無いように見えた。


「俺は少し疲れたので休ませてもらいますね」

「えぇ、お疲れ様エリク」

「ではお先に失礼します」


そう言って兄は神殿を後にする。

あの転移魔法、実はかなり体に負担がかかっていたようだ。

呪文の内容はしっかりと頭に残っているが使わないほうがよさそうだなと思いつつ、俺に言ってくれればライゼに使いまくった体力回復の呪文をかけたのになぁと思う。


そしてライゼの存在をすっかり忘れていた事に今更気づいた。

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