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19:王都の夜

ほぼ片が付いたと言う時、馬車の扉が開いた。


「ヴァイス、外は危ないから出ちゃだめ・・・」

「ふあぁぁー」


ヴァイスが目を擦りながら外へと出てきたのだ。

ライゼは・・・ヴァイスを止めようとはしたが、体力の限界を迎えていたらしく馬車の床に倒れていた。

その瞬間を襲撃者は見逃さずヴァイスに飛びかかる。


「ちっ!」


フェルが急いでヴァイスの元に駆け寄るが間に合いそうにない。

俺は急いで呪文を唱える。


装甲(パンツァー)・・・」

「ふぇっくしゅん!」


寝起きで夜風が冷たかったのか、ヴァイスがくしゃみをした。

その瞬間、ヴァイスの口から吐き出された輝くブレスが襲撃者を包み込む。

べちっと音をたてて襲撃者はその場に崩れ落ちた。


静寂がその場を支配する。



「・・・なんだアレは」

「あー・・・企業秘密?」


フェルの問いにそう答えるしかなかった。

馬車の中では倒れたままのライゼが呆然とヴァイスを見つめている。

ヴァイスも竜なのだから何かしらのブレスが吐けてもおかしくはないのだが、人の姿でもブレスを吐けるのは知らなかった。

しかも輝くブレスというのは見た事も聞いた事すらない。


ブレスの効果を確認する為、倒れた襲撃者を突付いてみるとどうやら麻痺しているようだった。

神経毒というやつだろうか。

ヴァイスのくしゃみには気をつけたほうがよさそうだ。


「さてと、それじゃさっさと中に入りましょう。話は中でのほうがよいでしょう?」

「そのほうがよさそうだな」


ヴァイスのブレスで麻痺した襲撃者を縛り上げたターヴィがにこやかに言い、フェルが視線をライゼに向けたまま答えた。




王宮から使者が出ていたのは事実だったようで、すでに部屋も用意されているということだった。

襲撃に合った事もあって当日の母親との面会は免れる事ができた。

襲撃者グッジョブ。


すぐにきちんと身なりを整えたフェルとターヴィに案内され客室へと通される。

王子が案内は普通しないがフェルのことなのでまたターヴィに無理やり同行したのだろう。


寝ぼけたままうとうとしていたヴァイスをベッドに寝かせると、すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。

体力の限界だったライゼもごろりとベットに横になった。


「さて、どうして使者なんて真似してたんだ?フェルディナンド第二王子様」

「あーそのことねぇ・・・」


ふふ、とやわらかく微笑むフェル。

服を着替えたフェルはすっかり王子様らしくなっていた。


「王子様って本当だったのか?」


声の主はもそもそと布団から首だけ出してこちらを見ているライゼ。

・・・何というか、でかい芋虫みたいだ。


「正真正銘王子だよ」

「ふむ。確かにルッツと違って爽やかな笑顔だな」


フェルの笑顔をみて納得するライゼ。


「何言ってんだ。こういう胡散臭い笑顔のヤツは必ず裏があるんだぞ」


そう、フェルの笑顔は兄であるエリクの笑顔とそっくりなのだ。

間違いなくコイツも黒い、兄属性の人間だ。


「どうせ別の人間が使者だったんだろうが、力ずくでその仕事を奪って自分が使者になったとかそんなとこだろ」

「さすがルッツさん。王子をよくわかってらっしゃる」


ターヴィにパチパチと手を叩いて褒められた。

もうちょっとまともな理由かと思ったがその通りだったらしい。


「フェル様ったら使者の人間に拳をちらつかせながら使者の役やりたいなーって言うんですよ」

「違うぞ。俺はヒマだから一緒に鍛錬しないか?って聞いただけだ。そうしたら使者の役を俺に譲ってくれたんだよ」


フェルの戦闘スタイルは拳に魔力を乗せて戦う武術タイプで、その魔力を乗せた拳は普通の剣などあっさり叩き折る威力を誇る。

しかも無意識に魔力の鎧に守られているような状態でその辺の騎士よりずっと強い。

魔法を扱えない人間ならば魔法剣でも持っていない限りそうそうフェルに傷をつけることはできない。

魔力を乗せて攻撃できる事やその異常な身体能力は秘密にしいるらしいが、武術の使い手である事は誰もが知っていることだ。


「立派な脅しだな」

「ですよねー。大人しく待っていてもどうせ明日にはルッツさんに会えるのに」

「・・・フェル、お前そういう趣味だったのか」

「ちがっ・・・!俺は別にっ・・・」

「ふーん。お前達は仲がいいんだな」


大人しく会話を聞いていたライゼが納得したようにうんうんと頷いていた。


「「それはナイ」」


慌てて否定すればしっかりとフェルと被ってしまった。


「ね、本当に仲良しさんなんですよ」

「そのようだな」


嬉しそうにライゼに話すターヴィ。

なんだかちょっとバカにされた気がするのは気のせいだろうか。

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