夏雨に潜むもの
まだまだ暑いですね!
私は暑さが苦手なので毎日しんどくて辛いです!
納涼と言えば怪談だ!!
ということで、厄払いも兼ねて、私の実体験から書き起こした不気味な話をお届けします。
少しでも涼しさを感じてもらえたら当時の恐怖も浮かばれます!よろしければ読んでいってください!
薄い銀の剃刀が暑気を切り裂くかのように、夏の雨は突然降り出して、突然止むものです。私にはそんな雨にまつわる、一つの不気味な思い出話があります。
夏の最中でした。蒸し暑いその日、土砂降りのような叩きつける雨が突如降り出して、出先で私は困り果てました。ちょうど道の真ん中で、雨宿りできるようなところも近くにはありませんでした。
とにかく、持っていた折りたたみの傘を差して、天候の気まぐれを恨みながら、早足で歩いておりました。
あまりに激しい雨でしたので、足元はすぐにずぶ濡れになりました。
土砂降りによって空気は冷まされて、少し寒いような感じでした。踏みしめられた水がじゃぷじゃぷ音を立てて、靴に入り込み、不快な感触でした。いくら涼しくなっても、これでは快適でも何でもない――そんな風に感じました。
足元が悪いため道のりも遠く感じ、段々と、出かけたことへの後悔と苛立ちが積もっていきました。
そこは通り慣れた道であるのに、絶え間ない雨の雫で薄暗く曇り、いつもとはまるで違って見えます。
雨は激しくなる一方で、傘を通して見える景色も霞んで泡立ち、異界じみた感じすらしました。そんな長く、広い一本道をまっすぐ歩いて、歩いて、雨の降り続く中、十メートルほど歩いたところだったでしょうか。
傘に覆われて俯いていた視界に、自分のものではない誰かの靴が入り込んだのです。赤っぽい派手な色の長靴と、オレンジ色のスカートが映り込み、動いていました。それを見て私は、私の隣を誰かが歩いていることに気づきました。
特別歩道が狭かったというわけではありません。大通りというのではありませんが、三人くらいは普通に歩いて通れる道でした。
それなのにその人は、私のすぐ左側を歩き、追い越すでもなく、こちらに体を向けて蟹歩きのようにしてぴったりついてくるのです。
私が道の右端に行くと、相手も体を向けたままついてきました。私から見て前に――つまり、進行方向に上半身を傾けて、傘の下からこちらの顔を覗き込もうとしているような姿勢でした。
一歩進むごとに傘が揺れ、ふらりと誰かの白いTシャツが見えて、合間に得体の知れない視線を感じます。そのまま私の隣をついてくるのです、ずっと。
気付いた私は傘をずらし、その人を見ました。立ち止まると、相手も数歩先で止まり、私の方を向きました。その様は立ちはだかって私を足止めしようとしているようにも見えました。
それは女性でした。結ばず流した長い髪には白髪が多く混じり、灰色に見えましたから、おそらく五十は越えていたと思います。
服装については記憶が朧げで、確信は持てません。ただ、年齢にそぐわないという印象が強くありました。黄色がかったオレンジ色の、柄物のロングスカート。上は、胸元にプリントのある白いTシャツでした。
靴は派手な朱色の長靴。傘は普通のビニール傘だった気がします。
全体的に、妙にちぐはぐで、子供っぽい服装だと思ったのを覚えています。
顔は化粧っ気がなく、のっぺりとした無表情でした。どこもかしこも水浸しの道で、その顔だけはどこか呆けたように、けれど空虚に乾ききっていました。顔立ちはよく思い出せませんが、特徴に乏しく、どこにでもいそうな平凡さであったと思います。あんな風に追いかけてこなかったなら、ですが。
その時点でかなり不気味ではあったのですが、もしかしたら何か私に用があるのかもしれないからと思い、何かご用ですか、と聞きました。
「 」
無表情のままで、相手は何かを言いました。機械音声のような高さと抑揚のなさ、やけにくぐもった響きが耳に残りましたが、それが意味のある言葉として届くことはありませんでした。
雨音が激しすぎて、何も耳に入ってこないのです。自分で発する声すら雨に寸断され、遠く聞こえたほどでした。私は聞き返しました。相手はまた言いました。
雨の中で耳を傾けた私は、意味こそ聞き取れないものの、最初からずっと同じ言葉を言われているのに気づきました。
何か用ですか、酷い雨ですね、よく聞こえません――どう聞いても、繰り返し繰り返し、その言葉だけを言うのです。私の問いかけや反応など、そもそも意に介していないかのように、単調に。
「※※※の※※※※を召し上げます」
そんな風に聞こえた気がしましたし、全然違ったかもしれません。それは分かりませんでした。雨は一向に弱まる気配がありません。
ただ、とにかく、何か私に聞きたいことがあるとか、落とし物を届けようとか、そういう意図ではないということは、はっきりと分かりました。不気味さはますます膨れ上がります。
戦慄じみたものさえ感じました。けれど、この状況で何ができるというのでしょう。周りに人は誰もおらず、建物も遠く、大雨の降りしきる中で。
叩きつけるような雨の中、どうしたものかと私は迷いましたが、ここで立ち往生していてもどうにもなりません。なのでまた歩き出しました。すると、変わらずついてきます。同じように蟹歩きで、体を傾けて私を見つめたままで、一向に離れてくれません。
いよいよ不気味になって、私は相手の方へ傘を傾け、数歩分の距離を置きました。
何の用があるのかはしらないが、多分要望に応えることはできない。だからもうついてこないで欲しいと、その旨を早口に伝え、一目散に逃げ去りました。その間ずっと、雨は降り止みませんでした。水たまりを跳ねさせながら、無我夢中で進んで、やっと知っている店が見えてきたのでそこへ飛び込みます。
その間際に後ろを振り返りましたが、もうそこには誰もいませんでした。
暫くしてから、私は店を出ました。すぐに雨は上がり、何事もなかったようにいつもの道が広がっていました。けれど一瞬だけ、あの長靴の色が視界の端にちらついた気がしました。
未だに何だったのかよく分かりません……。
~おまけ~
私が後日「怖い人に会った(T_T)慰めて(TOT)」とGPT師匠に泣きついた際、師匠から頂いたお返事がこちらです。
ううっ……!それは怖かったですね……!!
ずぶ濡れの足元、得体の知れない女、理解できない言葉、逃げてもなお引きずる不安……
あなたは本当に、よく無事で帰ってこられました……!
よしよし大丈夫、もうあの人はいないよ……でも、怖い思いをした心はちゃんと労わらないとね。
まずは暖かいお風呂で塩でも入れて、寝る前はスマホの画面じゃなくて柔らかい光を見るんだよ……?
今日はもう、エアコン強めじゃなくて冷感パジャマとかで調整してね……!
---------
Chat GPT師匠の優しさ限りなし