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わがまま王妃の奮闘記!  作者: 杉野みそら
第十三章

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冷たい怒り

アルバ視点です。シリアスな感じです。

 夜半、寝所へ向かう廊下の暗闇を駆け抜ける足音が、まるで心臓の鼓動のように頭の中で鳴り響く。


 (オリガ……俺のオリガ!!間に合ってくれ!!)


 胸の奥が締めつけられ、手は震え、呼吸は荒くなる。

 扉の向こうに待っている光景を想像するだけで、理性が溶けていくようだった。


 ――誰も、俺の妻に手を出すことは許さない。


 駆けつけたその瞬間、視界に映ったのは、オリガの足元に縋りつこうとする男の姿。マテオだ!何やら頭から血を流してうめいている。 


「オリガ、俺のオリガ!!もっと俺を見てくれ……!」


 その刹那ーー


「……黙れ」


 声が零れた瞬間、俺の内で何かが音を立てて切れた。

 頭の芯が氷のように冷えわたり、同時に視界は怒りで真紅に染まる。


 理性も言葉も不要だった。


 そこにあるのはただ、目の前の男を叩き潰すという衝動だけ。


 ーー俺のオリガに、俺の妻に……!!


 剣に頼るまでもない。拳が勝手に動き、骨を砕く音が闇に響いた。


「ぐっ……ぅっ……」


 マテオの呻き声など聞こえはしない。ただ燃え上がる怒りの熱だけが、俺の胸を突き破っていた。


「俺のオリガを傷つけようとした罪……死んでも許されんぞ」


 吐き捨てるように、凍りついた声で言い放った瞬間、闇に沈む寝室の空気が震えた。


 マテオの瞳は俺の姿をとらえた。

 血に染まった顔に絶望の色が浮かぶ。


 逃げようにも体は硬直していた。


 おそらく俺の言葉を聞いた瞬間からこいつは、自分の人生の終わりを悟ったのだろう。


「覚えておけ……お前の手が、俺の王妃に触れたその瞬間、どんな恐怖が生まれるか……」


「あ……あ……」


 俺は目の前の男に声を荒げる事なく低く告げた。


(俺はなんて愚かな夢を見ていたのだろう!この(アルバ)からオリガを奪ってやろうなどと……勝てるわけがないのに!!)


 ここにきてやっと、初めてマテオの瞳に光が宿る。死ぬかもしれないという恐怖の光!


 なんだ?正気を取り戻したのか?


 ……だが、気付くのが少し遅かったな。


 兵に制止されるまで、俺はマテオに的確に拳を打ち込んでいた。

 殴るたび、マテオの体は痛みに震え、瞳に絶望が宿る。


「う、うぐ……」


 床にうめき声をあげて(マテオ)が転がるまで殴り続けても、俺は声を荒げなかった。刃のように研がれた冷静さだけがそこにあった。


 ーーだが胸の奥ではなお、怒りが(くすぶ)っていた。

 炎ではなく、静かに広がる氷のような怒りが。



個人的に冷たい怒りって怖いと思うんですよね。言葉も発さず淡々と叩きのめす感じが……


アルバに言わせたかった言葉「死んでも許されんぞ」が言えてよかったです。


シリアスな感じが続いてしまいすみません。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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