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わがまま王妃の奮闘記!  作者: 杉野みそら
第十三章

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オリガの慈悲

オリガ視点です。

 もう一度渾身の力を込めて壺を当てれば、マテオの命は終わる!そうわかっていた……


 ……けれども。


 私の掌は途中で止まった。


 砕け散るはずだった壼は、私の震える指先に縋りつくように留まり、床に転がる。


「……だめ。私には……殺せない......」


 吐き出した声は(かす)れていた。


「マテオ!今なら殺さずに許してあげる!大人しく縛られなさい!そして沙汰(さた)を待つのよ!」


 それは私の必死の叫びであり願いだった!どこかで彼を救いたいという願い。マテオに正気に戻って欲しいという、どうしようもない願い……


 正気に戻ってよ!マテオ!


 確かにあなたは嫌な人だったけど、こんなにむき出しの狂気を浴びせてくる人じゃなかった……


 ……それとも、私が勘違いしていただけで、マテオは始めから狂っていたの?


「ああああ……その目だよ!その目!!オリガ!その目でもっと俺を見てくれ!」


「マテオ!あなた……」


「お願いだよオリガ!!オリガがいなくなって狂いそうだったんだよぉ!!」


 マテオの叫びは嗚咽にも似ていた。だがその瞳は血走り、常軌を逸している。


 その叫びに、私は思わず目を潤ませる。けれど、首を振るしかなかった。


「マテオ、あなたはもう……狂っているの!!」


 涙がひとすじ溢れた。きっともうマテオはどこにも戻れない……それがわかって悲しくなった。


「どうして、どうして今頃私の前に現れたの!?何が目的なの!?」


 私の一声は悲痛だったけど、マテオには届かないみたい。きっとどんな祈りの声も、叫びも、嘆きも、今のマテオには届かない。


「もし目的が私だったなら、あなたには絶対不可能よ」


 でも、これだけは伝えなきゃ。


「私はアルバを愛しているのだから!」


 慈悲と拒絶が同時に宿るその響きに、マテオの心はさらに掻き乱されていく。


「オリガ……お、オリガ……」


 私の名を呼ぶ声が聞こえる。けれどもう、まともに通じ合える相手ではない。それでも私の優しさが、マテオを憎みきれないでいる。


「……マテオ……」


 名前を呼んでも、返事は返ってこない。私の声は喉の奥で切れ、部屋に吸い込まれていった。


「オリガ、俺のオリガ!!もっと俺を見てくれ……!」


 血に塗れたマテオが、よろめきながら私へと縋りついてくる。


(マテオ……)


 私は後ずさりながら、祈るようにただ涙をこぼすしかなかったーー


マテオはオリガが結婚すると聞いた時から狂ったんだと思いますよ。オリガの護衛をしていたので、勘違いしてしまったんですね。


「私はアルバを愛しているのだから!」のセリフ、言ってるようで言ってなかったので、今回やっと言えてよかったです。


オリガ様ったらこんな時まで優しいんだから……


最後まで読んでくださりありがとうございました。



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