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雨宿り

 俺はアルバ。バラム王国の国王であり、オリガの夫であり、そのオリガの事で悩んでいる男だ。


 何を悩んでいるかというと‥‥‥


 オリガが最近可愛いすぎるという事だ!


 ここ最近のあいつの変わりようはなんだ?


 いや、俺が見ようとしていなかっただけか。

 結婚当初、オリガから俺に向けられた微笑みも、御意見番に連れて行かれたあの時の困惑したオリガの表情にも、いつも俺は見て見ぬふりをしてきた。


 だから幼いオリガは御意見番たちの諫言(かんげん)にホイホイ乗せられてわがまま放題になって‥‥‥、国庫の金も使いたい放題で。でも今のオリガには、あの時期の狂気は感じない。むしろ‥‥‥


「変だな、今別れてきたのに」


 胸の奥に、もう会いたいという思いが芽を出す。


 手を伸ばせばすぐ届く距離なのに、妙に遠く感じるのはなぜだろう。


(そうだ、何かオリガが喜ぶような事をしよう)


 * * *


「海?」


 二人で朝食を囲んでいる時にアルバが口を開いた。


「ああ、お前が嫁いできてからずっと行ってなかっただろう?」


「わぁ……!嬉しい! アルバありがとう!」


 オリガの声が一段高くなる。頬に春先の光のような色が差し、瞳がきらきらと揺れた。


 バラムは四方を陸に囲まれた内陸の国だが、南端の岬からは海を望める。

 彼女の故郷ロミナは、その向こうに横たわる海を越えた島国。潮の匂いも波の音も、血の奥に刻まれているのだろう。


「実家では、海は見られたか?」


「見られたけど……あそこでは、海のそばに立っていても気が休まらなかったわ」


 オリガはふっと笑い、銀のフォークを皿に置く。


「外出にも付き添いがついて、立ち居振る舞いから指先の角度まで、全部“完璧”でなきゃいけないの。港の潮風で髪が乱れただけで、侍女たちが慌てて整えてくるのよ」


 その口調は軽いが、瞳の奥には、窮屈な日々の影が一瞬だけよぎった。


「だから、海は好き。でも、潮風を自由に浴びられる海は……まだ知らないの」


 アルバはその言葉を胸に留め、窓の外の曇天を見やった。


「あいにくの天気で船は出せないか‥‥‥、お前の一族は、向こうにうっすら見える島にいるのだろう。船が出せたら、すぐ行くのにな」


 外は薄曇り。灰色の空と同じ色をした海が、ゆるやかに揺れていた。港の帆柱は風に鳴き、波止場の縄が水を吸って重く垂れている。


「いいのよ! こうして眺めているだけでいいの。何より‥‥‥」


 私はアルバの方を向いた。


「アルバと一緒に海に来れた事が嬉しいから!」


「‥‥‥ッ!//あ、ああそうだな」


(よかった、オリガが喜んでくれている)


 とはいえ、天気も悪いし風も強い。


「くしょん!!」


「オリガ、平気か? これを」


 言いながらアルバが自分の上着をかけてきた。


「アルバ平気だから! ちょっと鼻がムズムズしただけだから」


「そんな事はないだろう、もう帰ろう。天気も悪くなってきた」


「う、うん」


 アルバが手を差し出してきた。やっぱり優しいなぁアルバは。どうしてこんな事も知らなかったんだろう。どうして今までこの手のぬくもりを知らなかったんだろう。


 いえ、今までずっと知ろうとしてなかったんだ。アルバはいつも手を差し伸べていてくれたのに、その手に背を向けたのはきっと私の方。


 ‥‥‥あんな予知夢を見るのも当然だ。


(私、やり直せているのかしら。うまくやれている?)


 ゴロゴロ‥‥‥、ズドーン!!


「ギャァーーーー!! アルバ!!」


 突然カミナリが鳴ってどこかに落ちた! 私は慌ててアルバにしがみついた。


「落ち着け。まだ遠くだ」


 ザァーーーー!!


 ああああ! 雨も降ってきた!!


「チッ‥‥‥、ソウタ、ここへ!」


 ヒヒィン!!


 ソウタがどこからともなく駆けてきた。


「ひとまずここから離れよう」


 * * *


 雨宿りのため、私たちは簡素な小屋に入った。


「びしょ濡れになってしまったな、オリガは?」


「わ、私は平気! アルバが覆ってくれたし、でもアルバの上着が代わりに濡れちゃった」


「よかった、風邪をひいてはいけないからな。一応見せてみろ」


「大丈夫です! でもアルバのマントが‥‥‥」


「見せてみろ」


 バッ!!


 アルバが私から上着をはいだ!そんなに心配しなくてもいいのに。


「ああ、平気なようだな」


「う、うん//」


 アルバの顔、近い//前髪が水に濡れて、いつもよりかっこよく見えて‥‥‥


「やはり少し濡れているな」


 そう言うとアルバは私の髪を触ってきた。


(ぎえーーーー!//アルバのかっこいい顔が、目の前に!)


 このままでは心臓がもたない!!!!


「何故顔を伏せる? 怪我をしたんじゃないか? 見せてみろ」


「いえ‥‥‥、いえあの‥‥‥」


 わー!!絶対今変な顔してるから見ないで見ないで!!


「ダメ!!」


 べちん、と私はアルバの顔を覆った。


「ははは、それで抵抗しているつもりなのか。まったく可愛いなオリガは」


 言いながらアルバは私の手を引き剥がす。


「愚かな。こんな小さな手で、俺に抵抗しようなどと」


(あ、アルバの顔が、近づいて‥‥‥、キスしちゃう?)


 ちゅ!


「ん!//」


「ごめん、オリガが可愛いくてつい‥‥‥」


 ぼぼぼ!という音が聞こえてきそうなほど一瞬で顔が熱くなるのがわかった!


「ははは」


「もお〜〜〜〜//アルバ!!」


 いつのまにか雨は止んでいた。


なんだこの二人は‥‥‥、一応この二人結婚してるんだぜ?


オリガの故郷の話が出てきましたね。次回、オリガは故郷について語るのか!語らないのか!?


ここまでお読みいただきありがとうございました!

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