オリガの魔力
老婆の審判のその後の小話です。オリガとアルバのあまあま劇場。
「ええっ?結局ハンナさんは辺境の地へ戻ったんですか?」
「ああ、お前の言葉を聞いて母に謝罪をして、母の愛を感じながら生きていくそうだ」
「お別れも言えなかったわ!」
オリガは若干怒っていた。死ぬほど怖い思いをしたはずなのにお別れの言葉とは?ライラの時もそうだがオリガの考えがいちいち読めんな。その危機感の無さにハラハラする。
「それに、ハンナさんだって家族を持ちたいでしょうし。アルバにその……」
「俺?俺が何だ?」
俺はオリガに顔を寄せて問う。いつのまにかオリガは俺に壁に追いやられている形になっていた。逃げ場はない。どうするオリガ?観念するか?
ーー慌てる顔もまた可愛いな……
「アルバに……振られたじゃな……んっ!」
俺はたまらなくなってオリガの可愛い唇を奪った。
ああ、オリガ。たまらないな。やはりお前の唇は、とても甘美で、柔らかくて、甘い。
「ぷはっ!いっ、いきなり何をするんですか!?」
「何ってキスだが?覚えておらんのか?結婚の時にしただろう」
「もー!!それは知ってますって!私が聞きたいのは真剣な話をしているのになぜその時にするの!てこと!」
「お前が可愛いことを言うからな、仕方ない」
「えっ?何ですかそれ?私可愛いことなんて全然……」
俺は笑いながらまたもオリガに口付けをする。
「ま、またっ……」
「またオリガが可愛いことを言ったからな。そうだ、これからお前が可愛いことを言うたびに俺がキスするのはどうだ」
俺としてはこの世の何よりも尊い提案だ。
「無理です無理です!心臓が保ちませんわ!!」
唇の前で小さなバツを作り、それ以上は無理だというオリガ。懸命な姿がかわいいな……
「どうして無理なんだ?」
「そ、れはアルバが……」
「ほらほら、どうした?言わないとまたキスするぞ」
「アルバがかっこいいか……ら……んっ」
また可愛いことを言って……悪女オリガめ。俺を惑わせた罪だ。
その瞬間、オリガの耳までが真っ赤に染まった。視線は落ち着かず泳ぎ、指先はそわそわとドレスの裾をいじっている。声は震え、吐息まじりに途切れ途切れだ。
唇を閉じようとしても、どうにも熱がこみ上げて止められない。頬は薔薇のように色づき、恥ずかしさに呼吸まで浅くなっている。
いかんいかん。やりすぎた。
どうしてこのオリガを前にすると、自制心が効かないものか。
俺はオリガの頭を抱えておでこに軽く口付けた。
「俺の負けだよ」
「えっ?」
敵わんな、オリガには。
結局はいつもオリガに負けるのは俺なんだ。
俺は老婆に下した審判の言葉を思い出した。
『この国を惑わす毒は、王妃を蝕み、我が心を乱した』
(オリガの撒く毒なら、この俺の体も心も、いくら蝕まれても構わないのだがな……)
ーーこの小さな姫の、無邪気な魔力には王としての俺の力も及ばない。このアルバも膝を折るしかないのだ。
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