オリガの提案
アルバ視点です。
「ん……アルバ……」
隣で眠っていたオリガがゆっくりと目を開ける。柔らかな陽光が高い窓から差し込み、金色のタペストリーに反射して部屋全体を淡い光で包んでいた。
部屋の奥に置かれた大きな天蓋付きの寝台。その周囲には、真鍮の燭台と木彫りの装飾品が並び、空気には俺が趣味で集めた香料、沈香やムスクの甘く重厚な香りが漂っている。
「起きたのか。体の調子はどうだ?オリガ」
俺は布で覆われた寝台の縁からオリガを抱き寄せる。
衣擦れの柔らかな音が、広く重厚な部屋に静かに響いた。またいつか、オリガがこの寝室を飛び出してしまうのではないかという不安が、胸の奥を締め付ける。
「……アディ……」
「アディ?」
そういえば混乱状態のオリガを俺の部屋に半ば無理矢理閉じ込めた時、オリガはアディの心配をしていたな。
「オリガ、アディは大丈夫だ。今は落ち着いてカミラのそばにいる」
「ああ、そうなのね。よかった……」
こんな時でも、自分以外の者を思いやるとは……
「ねぇアルバ」
いきなりオリガの声音が変わった。低く通る、硬い決意の色が混ざった声だ。
「アルバ、アディから聞いたの。庭師のお手伝いをしている時に、黒のローブを着た怪しい女性を見たって。アディによれば、あれは巫女の装束じゃないって」
「……まさか……」
オリガの目が、いつも以上に輝く。光り輝く青の奥で、確固たる意思が炎のように燃えている。
「私、ハンナさんに会ってみる!」
俺は思わず顔を覆った。オリガーー愛しい愛しい俺の美しい妻。重役に慕われ、国民にも慕われている我が王妃。だがこの危機感のなさはどうだ!?
何度も危機にさらされても、自ら罠に飛び込もうというのか。
「絶対ダメだ。危険すぎる」
「でも……!それはハンナさんにとっても同じでしょう?爵位は剥奪されなかったけれど、バラムに入ることは禁じられているわ!それなのに、危険を承知で来たのなら、きっと私に伝えたいことがあるのよ」
「オリガ、それが危険だと言っているんだ。よく考えてみろ、入国を禁じられたハンナが、城下町をどうやって簡単に通れた?件の出来事以降、防備は強化されている。裏で誰かが手を回しているのだ。いいかオリガ、もっと危機感を持って発言し……」
その瞬間、オリガはポロポロと涙をこぼした。俺は目を見開いた。泣くようなことか??危険な目に遭うかもしれないのに!
「それなら、アルバが私とハンナさんとあわせるように手配してください。私とハンナさんを守ってください!どうか、お願いします。ハンナさんはきっといきなり環境が変わって混乱しているはずなんです。話を聞きたいのです」
俺はしばらく黙って考えた。今のオリガは記憶を失っている。ハンナにもーー何をされたかもうわずかしか記憶がないのか、あるいはもう完全に忘れてしまったのか?
だから会いたい、話したいと言うのか。オリガは……
「……ハァ、お前に泣かれては敵わんな、オリガ。よし、城の防備を固め、オリガをハンナに会わせる!ヤマト!」
「はい。すでに広間にはこの城の重役が揃っています。それに先程……衛兵がハンナ嬢を捕まえております」
「……ハンナさん!やはりハンナさんだったのだわ!アディが見たのは……」
「はいそのようで。まこと王妃様の目は澄んでおりますな」
「??私の目が……」
ヤマトと世間知らずのオリガが話し出したら長い。俺は話を断ち切るように割って入る。
「いくぞヤマト!これより会議だ。アディ、オリガを頼む!」
その瞬間そばで控えていたアディが飛び出してきた。
「アディ!!よかった!!もう泣いてはいない??」
「えーん、すみませんオリガ様〜!!私のせいで……」
オリガとアディの声を背に、俺はヤマトと共に広間へ急いだ。
久しぶりのアルバの部屋の細部が書けて楽しかったです。特に黄金のタペストリ、天蓋付きの寝台や沈香やムスクの甘い香りを想像してこちらにも甘い香りが漂ってきそうでした。
オリガはまた何を言ってるの(笑)(汗)
最後までご覧いただきありがとうございました。




