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わがまま王妃の奮闘記!  作者: 杉野みそら
第十一章

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老侍従ヤマトの提案

三人称です。 

重役とは、ここでは宰相や将軍など部下や末端の者に対し影響力と権利のある者らのことを指します。

 玉座に座すアルバは、ただ静かに沈黙していた。


 呼び出された重役たちは、互いに顔を見合わせ、何事かと息を潜める。

 その沈黙を破ったのは、玉座の傍らに控える老侍従ヤマトであった。


「……皆の者、耳を傾けられよ。これは、オリガ様の尊厳を守るための密議である」


 低く響いたその声に、広間のざわめきはぴたりと止んだ。


 ーーオリガ様。ただその一言だけが、重役たちを黙らせるに足りた。


「すでに城の末端にまで噂は広がっておる。ーーオリガ様が城を去られた、と。だがその真は、決して口にしてはならぬ」


 ヤマトは一歩前に出、鋭い眼光で重役たちを見渡した。


「これより、王命として箝口令を布く。オリガ様のため、陛下のため、いかなる者もこの件を外へ漏らすこと、固く禁ずる」


 重役たちに緊張が走る。


 だがただ一人、ヤマトの声は揺るがない。


諸卿(しょきょう)よ。オリガ様はこの国の誇り、陛下の御心そのもの。その御方の名誉を守ることこそ、我らの務めであろう」


 静寂が訪れた。


 やがて最年長の宰相が深々と頭を垂れた。


「ーー老侍従殿の(げん)、至極もっとも。われら、従いましょう」


 次いで、ひとり、またひとりと、重役たちが膝を折り、頭を下げる。

 重い衣擦れの音が広間に響き、ついには全員が玉座の前に伏していた。


 アルバはなお言葉を発さぬまま、ただ深く目を閉じ、静かに顔をあげる。


(ああ、オリガ……我が王妃よ。いつのまにかお前はこんなにも城の者たちに愛されていたのだな……!!)


 その横顔に灯った陰影は、静かなる安堵の表情を映していた。


 * * *


 重役たちが玉座の間を去り、広間には静けさが戻った。残されたのはアルバとヤマト、ふたりだけ。

 

 しばし沈黙ののち、アルバが口を開いた。


「……お前は、最初から全て見通していたのだな」


 ヤマトは目を丸くし、首を傾げてみせる。


「見通す、とは?いやいや、老いぼれの目は霞んでおりましてな。せいぜい足元の埃くらいしか見えませぬ」


 アルバは思わず苦笑を洩らした。


「とぼけおって......」


「しかしまあ、オリガ様には閉口いたしますな。泣いたと思えば笑い、笑ったと思えばまた泣く。まったく、我ら下々の肝の方が持ちませぬぞ」


「……それでも愛されてしまうのだからな」


 ヤマトはいかにも、と笑い、深々と頭を下げた。


「左様にございます。陛下がそれを誰よりご存じでございましょう」


 広間に、ふっと温かな笑いがこぼれた。


オリガ、この場にいなくても名前を聞いただけで皆が頭を垂れるような存在にいつのまにかなっていたのですね!最初はあんなにオロオロしていて、貴族や侍女たちにも悪い言葉で噂されていたのに。


最後までご覧いただきありがとうございました。



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